生命哲学/生物哲学/生活哲学ブログ

《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

福島原発事故122:世論と輿論/放射能リスク(危険性)

2011年05月05日 13時29分24秒 | 生命生物生活哲学
2011年5月5日-4
福島原発事故122:世論と輿論/放射能リスク(危険性)

 大辞泉によれば、

  「せろん【世論】ある公共の問題について社会の大多数の賛同を得ている意見。よろん。」
  「よろん【輿論・世論】世間一般の人の考え。ある社会的問題について、多数の人々が共有する意見。せろん。」

とある。(「輿」はunicodeのみにある文字で、JIS系への変換ができないようだ。)

 『輿論研究と世論調査』の13頁によれば、宮武実知子「世論(せろん/よろん)概念の生成」(『叢書・現代のメディアとジャーナリズム』第6巻、72頁)は、

  「政治に対する理性的批判も、娯楽として消費される非合理的衝動も、ともに「世論の支持」で正当化されうる。政治的正当性の根拠として要請されてきた「輿論」と、興味本位に煽られた同調圧力としての「世論」。双方が渾然一体となった世論(せろん/よろん)は、その理念が語られることも、非合理性が粗飯されることも、ともに困難になってしまったのではないか」

と書いているとのこと。

 大辞泉によれば、

 「せんでん【宣伝】
  1 商品の効能や主義?主張などに対する理解・賛同を求めて、広く伝え知らせること。
  2 事実以上に、また、事実を曲げて言いふらすこと。」(大辞泉)。

である。
 『輿論研究と世論調査』で、対談が記録されている226頁では、宣伝、プロパガンダ、といった言葉に触れている。(ところで、1頁程度以内で、端的に言葉の定義や各人の知見や主張の要約を、箇条書き的に明瞭に書いてほしい。)

  民主主義には宣伝が必要

かもしれないが、
 
  「情報操作や世論誘導という面である種の危険性を伴うかもしれず、一歩間違うと民主主義を破壊する。」(『輿論研究と世論調査』226頁)。

だろうから、まずは、確証の種類と程度とともに主張の共有をはかるべきだろう。「事実を曲げて言いふらす」ことや隠蔽はしないことである。

 文部科学省が根拠とした20ミリシーベルト(mSv)という基準にしても、それは国際放射線防護委員会(ICRP)のしかじかの基準であり、他の研究では、もっと厳しい基準を設けているとか、説明すべきである。

  ICRPによる一般の人が1年間に浴びて問題ない放射線量
   緊急時          20~100mSv
   緊急事故後の復旧時    1~20mSv
   平常時          1mSv 未満
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E9%98%B2%E8%AD%B7%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A

 矢ヶ崎克馬氏によれば、ICRPの基準を、

  「ヒロシマ・ナガサキでは内部被曝で、多くの人が原爆投下から数十年後に、がんに罹って苦しみました。しかし、ICRPはこれらの人を被曝した人から除外しています。」(週刊現代2011年4月23日号、39頁)。

と批判している。
 また、矢ヶ崎克馬氏によれば、1945年から1989年までに核実験や原発からの放射線でがんなどで死亡したと推計した数値は、

  国際放射線防護委員会(ICRP)      117万人
  ヨーロッパ放射線リスク委員会(ECRR) 6,500万人

とのこと(週刊現代2011年4月23日号、39頁)。大幅に異なる。
 そして、矢ヶ崎克馬氏は、

  「〔ICRP基準は〕内部被曝を無視し、実態を過小評価した基準で、福島第一原発の事故処理を続けていれば、中長期的な健康被害は拡大するばかりです」(週刊現代2011年4月23日号、39頁)。

と述べている。

 
[O]
岡田直之・佐藤卓己・西平重喜・宮武実知子.2007.9.輿論研究と世論調査.240pp.新曜社.[y3,200+] [B20071203]


福島原発事故121:原発とエネルギー供給問題

2011年05月05日 12時26分07秒 | 生命生物生活哲学
2011年5月5日-3
福島原発事故121:原発とエネルギー供給問題


 2011年5月5日の朝日新聞4頁によれば、電気事業連合会は、80年代前半からの11年間に自民党機関紙の広告費として65億円を支払ったとのこと。

 朝日新聞4頁に、自民党内に発足した「エネルギー政策合同会議」の記事がある。その会議の委員長である甘利明氏の発言が掲載されている。

  「会議は大型連休後、中長期のエネルギー戦略の議論を始める。甘利氏は「我々は市民活動家ではない。膨大なコストや不安定性を覆い隠し「自然エネルギーで何とかなる」と言うのは無責任だ。現実問題として原子力を無くすわけにはいかない」と言っている。」(朝日新聞2011年5月5日、4頁)。

 自然エネルギーは放射性廃棄物を出さないが、核分裂型の原発は放射性廃棄物を処理するために膨大な費用がかかる。エネルギー供給の不安定性は福島第一原発事故で誰の目にも明らかになったと思う。

 朝日新聞4頁に、自民党内に発足した「エネルギー合同会議」の「参与」で東京電力顧問である、加納時男氏は取材に答えた記事が掲載されている。
 加納時男氏は、河野太郎氏について、

  「反原発の集会に出ている人の意見だ。自民党の意見になったことはない。反原発の政党で活躍すればいい。」(朝日新聞2011年5月5日、4頁)。

と述べている。そして、

  1. (太陽光や風力による発電に対して、)原発の新増設無しにエネルギーの安定的確保ができるか?
  2. 二酸化炭素排出抑制の対策ができるか?
  3. 天然ガスや石油を海外から購入するする際も、原発があることで有利に交渉できる。
  4. 原子力の選択肢を放棄すべきではない。
  5. 福島第一原発第5、6号機も捨てずに生かす選択肢はある。

と主張している。

 対して河野太郎氏は、「「安全神話」もとから「おとぎ話」」という記事で、

  「最大の疑問点は使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物、いわゆる『核のゴミ』を捨てる場所が日本にはないのに、原発を増やそうとしたことだ」(朝日新聞2011年5月5日、4頁)。

と、放射性廃棄物の問題を重視している。
 また、以下のように答えている。
 
  「??自民党内で東電と原発を守る動きがあります。
   「甘利明氏の会議がそうだ。推進派がズラリと並び、引退した加納時男氏まで座る。次の選挙でそういう議員を落とすしかない。国民の目が必要だ。」(朝日新聞2011年5月5日、4頁)。

  「??世論調査では半数が「原発現状維持」です。
   「正しい情報が伝わっていないからだ。時間をかけて原子力を止めていけば国民の暮らしへの影響は少ない。原子力は環境にやさしくない。海外では再生可能エネルギーが伸びているが、日本では加納氏らが『原子力の邪魔』とつぶしてきた。経産省が出そうとしない情報をきちっと出せば、世論は変わる」(朝日新聞2011年5月5日、4頁)。

 明快である。

http://d.hatena.ne.jp/ogawa-s/20110319
によれば、2011年3月16日と17日に行なった、有権者がいた1719世帯から1027人の回答(回答率59.7%)を得たという東京新聞2011年3月19日朝刊の世論調査結果によると

  「問5 福島第一原子力発電所の事故についてどう思いますか。

   不安ではない              2.5
   それほど不安ではない          8.9
   ある程度は不安だ           32.8
   非常に不安だ             55.3
   分からない・無回答           0.5

   問6 国内の原子力発電所は今後、どうすべきだと思いますか。

   これまで通りで運転すべき         1.7
   運転しながら安全対策を強化していくべき 56.2
   いったん運転を止め、対応を検討すべき  25.2
   やめて、別の発電方法をとるべき     14.1
   分からない・無回答            2.8」

だったという。
 また、
http://www.j-cast.com/2011/04/04092123.html
によれば、読売新聞が2011年4月4日付朝刊で報じた世論調査結果(電話方式)によると、国内の原子力発電所の今後のあり方について、

  現状を維持すべきだ    46%
  減らすべきだ       29%
  すべてなくすべきだ    12%

とのこと。
 
http://ik8160.blog.ocn.ne.jp/wieblo/2011/04/220_9683.html
によれば、4月7日のフジテレビの世論調査では、

  増設・現状維持      57.8%
  廃止・減らす       38.4%

とのこと。
 4月16、17日の朝日新聞では、

  増設・現状程度      56%
  廃止・減らす       41%

 3月26、27日の共同通信では、

  増設・現状維持      46.5%
  廃止・減らす       46.7%

とのこと。
 半数前後が原発維持または増設に賛成らしいが、そのような世論を変えよう。


福島原発事故120:原発推進派へ転向理由は気候変化予測

2011年05月05日 02時12分09秒 | 生命生物生活哲学
2011年5月5日-2
福島原発事故120:原発推進派へ転向理由は気候変化予測

 反原発の活動家だった、

  「グリーンピースUKの前代表スティーブン・ティンデール(Stephen Tindale)は、〔略〕原発推進派へ転向した」
(2011-04-02 原発マネーの誘惑)
http://d.hatena.ne.jp/pantheran-onca/20110402

とのことだが、(この「原発マネーの誘惑」で知った)『The Independent』紙の23 February 2009の「Nuclear power? Yes please...」という記事で、

  "It was kind of like a religious conversion. Being anti-nuclear was an essential part of being an environmentalist for a long time but now that I’m talking to a number of environmentalists about this, it’s actually quite widespread this view that nuclear power is not ideal but it’s better than climate change,”
http://www.independent.co.uk/environment/green-living/nuclear-power-yes-please-1629327.html

とある。訳すと、

  「宗教的転向のような類いのものでした。反核であることは長らく環境主義者であることの本質的部分でしたが、今では、多くの環境主義者にこのことについて話かけていまして、原子力は理想的ではないけれども気候変化〔気候変動〕よりもましだというこの見解は、実際にかなり広まっています。」

 また、

  「None of the four was in favour of nuclear power a decade ago, but recent scientific evidence of just how severe climate change may become as a result of the burning of oil, gas and coal in conventional power stations has transformed their views.」
http://www.independent.co.uk/environment/green-living/nuclear-power-yes-please-1629327.html

と、彼らが反原発から原発推進へと見解を変えたのは、化石燃料を燃やすことの結果として、きびしい気候変化をもたらすという科学的根拠によると言う。

 彼らとは、
  「このインディペンデント紙の記事では、原発を支持する四人の有力な環境主義者が紹介されており、そのうち、スティーブン・ティンデールとマーク・ライナス(Mark Lynas)が原発推進派に転向したときの気持ちを述べている。ちなみに、マーク・ライナスは、『+6℃ 地球温暖化最悪のシナリオ』(寺門和夫 監修, 翻訳)の著書でも知られている環境コメンテーター。残りの二人は、「英国版グリーン・ニューディール」を推進している英国の環境庁長官クリス・スミス(Christopher Robert Smith)と緑の党の活動家で作家のクリス・グドール(Chris Goodall)。」
http://d.hatena.ne.jp/pantheran-onca/20110402

とある通りで、その一人である、スミス男爵 Lord Chris Smith of Finsbury(the chairman of the Environment Agency)は、

  "Renewable sources of energy, such as wind, wave and solar power, are still necessary in the fight against global warming, but achieving low-carbon electricity generation is far more difficult without nuclear power, Lord Smith said."
http://www.independent.co.uk/environment/green-living/nuclear-power-yes-please-1629327.html

と、原子力無しには、低炭素で発電するのはきわめて難しい、と言う。

 放射性廃棄物のことは考えなかったのだろうか? また、原発の危険性はたいしたことは無いと思ったのだろうが、それはなぜだろうか。

  「小宮山宏も「原子力はつなぎだ」と同じ理屈をほざいているようだが、この男はいつも人のパクリばかりで、知の構造化(Knowledge structuring of issues)だとか、サステイナビリティ学だとかもそうだ。」
http://d.hatena.ne.jp/pantheran-onca/20110402

とある、小宮山宏氏は、東京電力の外部監査役だそうである。『サステイナビリティ学』シリーズの編者でもある。
 『サステイナビリティ学〈2〉気候変動と低炭素社会』の終章 「明日に向かって」は、住明正氏の執筆だったと思うが、IPCCゲート事件に触れていたと記憶する。

[K]
小宮山宏 ・住明正 ・花木啓祐 ・武内和彦 ・三村信男(編).2010.9.サステイナビリティ学〈2〉気候変動と低炭素社会.東京大学出版会.




福島原発事故119:放射能汚染についての提言書

2011年05月05日 00時08分58秒 | 生命生物生活哲学
2011年5月5日-1
福島原発事故119:放射能汚染についての提言書
 
 原発事故と今後を憂うるサイエンティスト有志による、菅直人内閣総理大臣への提言書(2011年4月18日付け)が提出されたとのこと。下記に、全文を掲載させていただく。

 
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                 提 言 書

内閣総理大臣
菅 直人殿

 東北沖に起こった巨大な地震と津波の激甚災害、その対策に尽力されていることに敬意を表し
ます。その上、福島原発に空前の放射能拡散の巨大惨事が発生し、日夜、苦慮、対策に奔走され
ておられるご苦労とご心痛を拝察申し上げます。
 私どもは多年、原発の技術的危険性と事故発生による放射能の恐怖を指摘し、原発に依存しな
い社会をと願ってきました。今回の惨事には言葉も出ません。「安全神話」にすべてをゆだね、
疑問と批判を無視して原発推進してきたことに対しては機会をあらためて論ずることとして、当
面の緊急対策について私たちの危惧と提言をさせて頂きます。
 すでに信じがたいほどの放射能が拡散しています。その上、事故原発の状況も不透明、収束の
見通しも立っておらず、今後も異常事態の重なる危険はいまだ消えていないようです。この状況
の中で、近隣住民への放射線被曝の不安解消への真剣で具体的対策を強める必要があります。と
くに子供と妊婦には慎重な配慮と施策が求められています。

(1)現在、公表されている大気中の放射線量や甲状腺の内部被曝量は恐るべき高水準にある。
   30km圏外飯舘村や川俣町、いわき市などでも、その現状は危惧ですますことのできない
   高レベルの汚染である。まず緊急対策として幼児・妊婦の疎開に政府は責任をとり、その
   ために経済的支援を用意すべきである。

(2)学校敷地、通学路、公園など子供の生活空間・敷地については、早急なる除染の作業を行〔な〕
   い、被害軽減の対策を進めることが必要である。

以上提言するに当って、現状の放射能汚染の深刻さに注意を重ねて喚起しておきたいと思いま
す。従来より、放射能の危険から従業員と公衆を守るため、法令によって、「管理区域」を定め、
事業者に業務遂行上の必要のある者以外の立ち入りを禁止させています。管理区域は「3ヶ月に
つき1.3mSvを超えるおそれのある区域」と定められていますが、時間当たりにすると0.6μSvと
なります。公表されている大気中の放射線量だけに限っても広範囲の地域が長期にわたって、高
濃度の汚染です。たとえば浪江町(赤宇木)では25.3μSv/h(4月16日現在)ですから、規制レベ
ルの実に40倍を超えています。遠く福島(1.87μSv/h)、郡山(1.82μSv/h)でも約3倍の高水
準の汚染です。妊婦や幼児がその地域に生活し続けている事実に注目し、深く憂慮いたします。
 現実的政策には多くの困難のあることは承知しておりますが、妊婦と幼児への対策として、高
濃度汚染地域から可及的速やかに実施されることを、重ね重ね強く提言したいと思います。
                                 
                                2011年 4月 18日


    
   原発事故と今後を憂うるサイエンティスト有志
     石田 紀郎、今中 哲二、荻野 晃也、海老沢 徹、川合 仁、川野 眞治、小出 裕章
     小林 圭二、柴田 俊忍、高月 紘、槌田 劭、中地 重晴、原田 正純、松久 寛
  
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連署者紹介

石田 紀郎   元京都大学教授 現市民環境研究所代表理事
今中 哲二   京都大学原子炉実験所助教
荻野 晃也   元京都大学講師 現電磁波環境研究所主宰
海老沢 徹   元京都大学原子炉実験所助教授
川合 仁    現代医学研究所代表 医師
川野 眞治   元京都大学原子炉実験所助教授
小出 裕章   京都大学原子炉実験所助教
小林 圭二   元京都大学原子炉実験所講師
柴田 俊忍   京都大学名誉教授(機械工学)
高月 紘    京都大学名誉教授(環境保全学)
槌田 劭    元京都精華大学教授 使い捨て時代を考える会
中地 重晴   熊本学園大学教授 環境監視研究所代表
原田 正純   元熊本学園大学教授(水俣学)医師
松久 寛    京都大学教授(機械理工学)

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表記上の注記:
 1. 「km」と「μSv」は、共通的なものまたはShift-JISコードのものに変換したものである。
 2. 「行〔な〕い」で、「〔な〕」を挿入した。