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The boss is back

2009-02-03 02:26:44 | 雑感
第43回スーパーボウルのハーフタイムショーにBruce Springsteen & E.Street bandが登場した。

ブルースは文字通りのアメリカを代表する国民的シンガーだが、ここにきてまた活動が活発化している。2007年にリリースしたアルバム「Magic」に伴う、「Magic」ツアーはなんと2億3500万ドルのチケットセールスを記録し、2008年度の「最多観客動員賞」を受賞した。しかもツアー中に、オバマ支持を表明し、支援集会にも積極的に参加。現にオバマの集会では必ずブルースの「The Rising」がかかっていて、大統領選挙直後の勝利演説でもこの曲が大々的に流された(この曲は、同時多発テロの直後にリリースされた同タイトルのアルバムに収録されている。救出活動中に命を落としたNYシティの消防隊員について歌い上げた家族賛歌。彼らは「リアル・アメリカン・ヒーロー」と呼ばれている)。1月の大統領就任式でもDCに招待され生演奏している。

そしてアメリカ最大の国家的イベント、スーパーボウルでのハーフタイムショー出演だ。しかも直前にニューアルバム「Working on a dream」をリリースしている。更に、映画主題歌として提供した「The Wrestler」は、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞にノミネートされ、前作「Magic」からは2年連続でグラミー賞にノミネートされている。

で、当年とって59歳と言うのだから驚きだ。

ブルースの歌は何よりも歌詞が重要だ。どういう曲をセレクトするか見物だったが、「Tenth Avenue Freeze-out」「Born to Run」「Working on a Dream」「Glory days」だった。各曲のテーマを紡ぐと、ブルースのメッセージが見事に伝わってくる。

最初の曲「凍てついた十番街」は絶望に打ちひしがれたブルーカラーの歌だ。「みんな向こうへ行ったほうがいい。ただそれだけさ。僕は、間違った方向を走っていて、袋のネズミになってしまっているのだから。この凍てついた十番街で・・・」。
2曲目の第2のアメリカ国家とも言われる「明日なき暴走」では、一転して「魂の狂気全てでお前を愛そう、あそこに辿りつくんだ 俺たちの本当に行きたい所へ そして太陽の中を歩くんだ。だがそれまでは俺たちのような放浪者はベイビー、走るために生まれてきたんだ」。パワードライブ最後のチャンスにかける若者たちのエネルギーが弾けている青春賛歌だ。
3曲目は新曲だが、「俺の引いたカードは酷かった・・でも俺は背筋を伸ばし夢を追いかけている 夢を叶えようと努力している。2人の愛がいつの日か夢を叶えてくれるはず」と希望に満ち溢れている。
そして最後の「グローリー・ディズ」では、高校時代の話ばかりする、花形野球選手だった男の話。彼が話し続けたことは昔のこと・・・。学生時代彼女が歩けばすべての男が振り返った。今彼女はボビーと別れ、子供の世話に追われている。彼女は言う、泣きたくなると、昔を思い出して笑い出すと・・・。栄光の日々、栄光の日々、昔の栄光を少しばかり取戻そうとしても時は知らぬ間に過ぎ去り、残っているのは栄光の日々の退屈な話ばかり・・・。

正にこれは「今のアメリカ」であろう。ブルースは、反ブッシュであることを公言してはばからないが、U2のボノのように積極的に政治活動をしたりはしていない。あくまでもアーティストとして、アルバム制作とツアーを行うことで、現代アメリカの現状を恐ろしいほどに的確に抉り出し表現してきた(だからこそ大統領選の時期になると各陣営がブルースの動向を気にし始めるのである)。昔も今もブルーカラーの生活を題材に現代アメリカ小説のような詩を書き続けている。ブルースはアメリカを愛し、そこに生活する人々を愛し続けているが、今現在のアメリカが間違った方向に動き続けていることを憂えている。そんなブルースが、オバマ支持に回ったのは自然の流れと言える(ヒラリーと激突していた時期から支持を表明していたが、黒人候補を支持する政治的リスクは相当高かったはずである)。

そしてハーフタイムショーで選ばれた曲たち。「俺たちは今最悪だ(凍てついていいる)。もう以前のようなアメリカではない(栄光の日々の話はもう沢山だ)、でも俺たちは苦難を乗り越え、愛する者たちと一緒に約束の地にたどり着けるはずだ(努力して夢を叶えるんだ、最後まで俺たちは諦めないで走り続けるんだ)。」そういうメッセージが強烈に伝わってくる。正に生まれ変わるアメリカ、生まれ変わらなければいけないアメリカ。

まぁ、考えすぎだろうと言われそうだが、ブルースはこういう楽しみ方をするアーチストなのだ。ハーフタイムショーで曲が次々と演奏されるなか、歌詞そのものを聞き取れはしないが、各曲の世界観は頭に入っているのでそんなことを考えていた。ショーは見事としかいいようがなかったです。面白かったのは、最後のほうでブルースが掛け合いで「予定時間をすぎちまったようだ!」なんて時計を指差しながら何度も叫ぶ。そうするとアメフトの主審が入っていて、プレー中の反則の印であるイエローフラッグを放り投げるという演出が最高だったな!その後、「マイアミ」スティーブが、「ボス、タ~イム!」と絶叫し、怒涛のクライマックスになだれ込んでいった。いやぁ、最高だ!

ちなみに2日遅れで購入したボスのニューアルバムですが超お気に入りです!買った日に3回聴き直しました!今も聞きながらこれを書いています。ボスのジャパンツアーは東京ドームのアリーナ最前列の10列目くらいで見たことがありますが、また見たいな!

「千夜一夜のロックンロール」を「ロックンロールの未来」と共に。

*「ロックンロールの未来」
 売れる前のブルースのショーを見たジョン・ランドゥのあまりに有名なコラム。 「僕は昨日、ロックンロールの未来を見た。その名をブルース・スプリングスティーンと言う・・・」
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