新司法試験においては、判例の重要性は絶対的です。絶対王者と言っても良いでしょう。
試験委員の多くは実務家である、そもそも実務家登用試験である、など色々な理由があります。
受験生的な視点で見ると次のようなことも言えます。
そもそも論文試験には、ベースとなっている判例があることが多いわけですが、仮にそうでなくても一定の事例なり最高裁判例を意識しながら問題を作成しているはずです。
そして、新司法試験では、事実を規範に当てはめることが極めて重要なわけですが、受験生は、試験委員が問題文に埋め込んだ「お宝」を探し出し、書き写し、評価を加えていくわけです。
となればですよ、判例の規範を持ち出した方が、その規範に当てはめる事実を問題文からスムーズに抜きだせると言えます。なぜなら判例の規範を意識しながら、試験委員は問題文を作成し、当てはめ要素を埋め込んでるはずだからです。下手に判例と違う規範をおったてると、自分が定立した規範要素に対応する事実が問題文中に上がっていない危険性を否定できません。
本番で規範として複数の要素を立てた以上、その規範要素全てを満たさないとまずい事になります。規範だけ立てて、当てはめないものがあるようではお話にならんとです。規範として①~④まで要素を挙げておきながら、④要素については当てはめをしない、なんてまるでお話になりません。有力説を規範にするとそういう危険性が皆無ではないということです。この点注意です。
また有力説を規範にするのは構いませんが、その場合、判例批判が必須となります。最高裁判例があるのにそれに触れず有力説だけとうとうと述べても心証悪いだけでしょう。要するにただでさえ時間がないのに規範定立部分と言う新司法試験ではあまり配点比重の高くない部分に時間と答案用紙のスペースを割かれるというデメリットがあるということです。
直前期の「試験対策」としては、政策的に「判例マンセー」になるが良いということです。判例実務が抱える問題点等は、基本段階で頭に叩き込んでおくべきことです(塾では基礎マスター、論文マスター段階です)。そういう問題点があることを意識しつつ、「政策的に」本試験では判例にひよる、という感じです。
なお、だからと言って、地裁判例等を知識として身に着けようという勉強は絶対駄目です。本試験では、「みんなが知っている判例」か「みんなが知らない判例」しか出ません。これは「お約束」と言っても良いでしょう。
そして「みんなが知らない判例」をベースにした問題においては、試験委員は「現場思考力」を問うているのであり、事前の知識量を試そうというわけではないのです(ちなみに今年の民訴の学説4つについて判旨で述べている判例があります。それは損保判例百選に載っているものです(有斐閣判例六法にもその部分は載っていますが))。損保百選読んでいる人は極めてまれでしょうし、ヒアリングでも指摘されていますが、事前に知識のあることを問うているわけではないのです。だからそんなものは知らなくて良いのです。従って最後は百選・重判掲載判例、特に最高裁判例をじっくり勉強するべきなのです。
ついでに択一も判例が正解ですからそいう意味でも混乱しなくて良いと言う訳です。
これもひとつの「スキル」ですね。