今年も難敵だった刑法。久しぶりに丙が抜け、甲乙2人の罪責なのだが検討すべき行為がとにかく多い。そういう意味では第4回的な難しさである。第4回も第7回も各論主体なので、各論主体の時は、4回か7回をモデルケースとすべきであろう。
もっとも今回は、総論と各論が上手くミックスされており、そういう意味では第3回に似ているわけだが難易度は比較にならない。共犯関係は、相互に影響し合うので、結論の整合性に気をつけたい。背任か業務上横領かでその後の構成にも影響が出る。横領後の横領の問題は判例の事案は1行為しか起訴していない事案であるので、今回は2罪にする場合の罪数処理は必須である(出題意図は間違いなくそこにある)。そういう意味で横領で書いて欲しかったのでないかとも予想します。まぁ、抵当権事例なので背任にした人も多いかも。その場合は、背任の共同正犯と言う近時頻出の判例のケースになりますね。
文書偽造に気がつかなかった人は、「まず生の事実を個別に検討する」、という意識がまだ弱いと思います。
乙の罪責は、共同正犯か教唆犯か、ということになりますが、「共同正犯ではないので、よって教唆犯と解する」という書き方は拙い。教唆犯である事の認定は必ず挟まないと駄目である(共同正犯じゃなければ必ず教唆犯になるわけではないからである)。教唆犯にすると盗品等罪が出てくるので忘れずに。今回は罪数処理が一つのポイントになっている。身分犯と共犯は大展開するような話ではない。
詐欺、背任、横領、文書偽造、盗品等罪と知能犯系でしたね。