時間無かったので4つだけ。
1事件
過失犯である。実際問題事故原因がなんだったのかという事実認定と注意義務の内容が完全に連動しているので要チェックである。あくまでも「強度不足による事故」という前提で立論されている点に注意。「(仮に)不適切な使用方法がハブを磨耗させて事故が起きたとしても,このことはリコールをすれば結果を回避しえたのではないか」,という原審で採られたロジックは退けられている部分に注意して欲しい。多数意見の判断の前提を考えると,田原裁判官の反対意見はごもっともである。
2事件
これまた過失犯事例。どのようなリスクが想定され,そこからどのような注意義務が導かれるのかと言う意味で,過失の中身をどう構成するか解説部分は大変参考になる。更に本件は組織的な過失事例であり,誰がどのような注意義務を負うのか,という問題も本試験で出れば避けられない(監督過失,信頼の原則等も出てこよう)。A社の負うべく責務の存在が被告人(部長である)の予見可能性を緩和しないという判断をしつつ,結果回避義務の内容や,注意能力の基準については,「大規模な鉄道事業者の安全対策の責任者の立場にあったもの」,という「業界平均人」基準を採用している点にも注目。
3事件
過失犯3連発である。過失犯に正当防衛が認められたレアケースである。解説部分の,「論点指摘→あてはめ→結論」部分は,この判例の答案構成のようになっており大変便利。しかしどっかで聞いたことあるような事例である(第6回本試験まんまですね)。
4事件
でた幇助の故意。中立的行為による幇助については「論文突破」でも扱いましたが,「6時間で分かるシリーズ」の「刑法共犯総論編」でもウイニー事件については,地裁,高裁判断を両方扱いました。そして最高裁が高裁のロジックを批判し退けている(高裁の判断にどういう問題があるのかは解説第2段落参照のこと)ので超重要判例です。何をどこまで認識認容すれば良いのか,という「故意とは何ぞや」を真正面から問題にしています。この問題は,あてはめ能力も試すことができます。 構成要件レベルついては第5回本試験で,違法性レベルでは第6回本試験でドカンと出ましたが,構成要件レベルでは,「故意論」部分については未出題です。本番で幇助犯を絡めての出題は十分ありえます。個人的には去年からずっと要注意だと思っています。