「過去問題の出題傾向に基づくメリハリ」というのは一般論としては正当である。しかし,この「準則」がまともに機能するためには,ある前提が必要だ。それは,「一定量の過去問題の蓄積がある」,という大前提である。
旧司法試験のように何十年分もの問題が蓄積している場合,テキスト作成にしろ問題作成にしろ,これが一定基準になることに異論は無い。講義のメリハリもこのような「出題傾向」に基づいて的確に行うことが可能である。
しかし,新司法試験はどうか。たかだか7年分である。各科目140問しかない(民法・商法除く)。「これさえやれば大丈夫」なんて発想がどこから出てくるのか分からない。どう見ても「網羅性0」である。
もちろん,「頻出分野」というのはある程度特定できる。同じ分野の問題でも,内容的な変遷が見て取れる分野もある。しかし,逆を言えばその程度のことしか言えない。「過去問題では出ていないからCランク」という言葉の重みは,旧司法試験の場合のそれとはまるで違うということである。
現状,過去問題は修得範囲としては「必要条件」ではあるが,「十分条件」ではない。このことを肝に銘じて欲しい。短答式試験で200点程度しか取れていない人には(しかも2度も3度もである),根本的に共通の誤りが見てとれる。「過去問題を潰した」+「肢別本1冊潰した」=短答対策終わり,である。この共通傾向は,「100%そうだ」といっても過言ではないほどだ。毎年毎年,新規分野からの出題が多いことを忘れないようにしたい。あくまでも,過去問題の傾向は,現状「ある程度の目安」にしかなっていない。
結論は一度は網羅的なインプットをしないと駄目であるといういことである。「効率性」とか言う言葉で真実を隠蔽してはならない。