消滅時効が完成したのを知らずに、「債務の承認」をしてしまったあと、消滅時効を援用することは「信義則」に反し許されない、と言う有名な判例があります。本試験民法でありがちな、いつもと違う判断をしてみろ、と言う判例射程問題の軽い練習をしましょう。
時効の完成を知らずに承認してしまったのが、保証人だったらどうでしょうか。判例の事案は、債務者本人が承認した事例です。この事実の違いから、結論が変わる可能性はあるでしょうか。
判例が、援用を認めない理由は「信義則」です。主債務者と保証人では、この「信義則」の内容が変わることはありうる話です。「自分で金を借りたら返すのが当たり前」という、当然の大前提があります。主債務者はまさに自分で借りたわけですから、「原則返すべき」という規律が働きます。これに対して、保証人は、あくまでも他人の債務を保証しているだけで、しかも「なるべく自己の負担は小さくしたい」と考えるのが、普通です。
このように両者の立ち位置が違うので、この点を強調すれば、保証人の場合は、援用することが許される、という判断は事例によってはありうる話です。
こんな話を入門講義でもしています。「本試験合格を見据えた」講義なので。
ちなみに講義では、「債務の承認」と評価されうる、「具体的な事実」も具体例を複数指摘しています。