ただひたすらに、祈る心を持っている人が羨ましいと思うことがある。
人の目を気にせず手を合わせ、何かのために、誰かのために、
真摯に信じて祈る姿は美しいなぁ・・。
以前、縁あってだるま市のお手伝いをさせて頂いたことがあった。
縁起物のだるまを買うと、魂を入れる儀式として火打ち石でお清めしながら
威勢良く「よよよいっ よよよいっ よよよいよいっ」と声をかけてくれる。
師走のある日、その日もだるまを求める人でにぎわっていた。
一人の年配の男性が小さなだるまを買って、代金を渡してすぐに
おつりをお財布に入れる間もなく、その儀式が始まった。
すると男性は大慌てで被っていた帽子を脱ぎ、おつりを持ったまま
大事そうにだるまを抱え、頭を下げてじっと何かを祈っていた。
人々の喧騒の中、ふと目にしたその光景に、思わず涙が出ちゃった。
人間がいとおしいと思った瞬間だった。
それまで私は、真摯に手を合わせる姿を見られるのが、どこか照れくさかった。
それはたぶん、心がざわついていて自分から離れていたからだと思った。
一念通天。
なんて美しいことば。
そしてなんて清々しい心なんだろう。
十月も中旬、今頃だるま屋さんは年末年始に向けて大忙しの季節に突入だ。
誰かの祈りや願いを見守るだるまさんにも感謝をしつつ、
それぞれに一念通天を信じませう。