新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

今週は東京都現代美術館(その5)

2010-02-11 06:48:01 | 美術館・博物館・アート

今週は東京都現代美術館(その4)」のつづき、このシリーズの最終回です。


かなりイマイチ感を抱えて、この日最後の企画展「MOTアニュアル2010:装飾」に向かいました。

100211_1_1この企画展について、MOTはこのように紹介しています。


東京都現代美術館では、時代と結びついたテーマによる同時代の若手アーティストを紹介する展覧会「MOTアニュアル」を1999年より開催しています。10回目を迎えた今年は「装飾」をテーマとしました。装飾という造形形式が本来持っているエモーショナルな訴求力を探求する10名の精鋭たちが、繊細、あるいはダイナミックに1200㎡の空間を満たします。


正直、あまり期待せずに会場に入ったのですが、それがどうして、むちゃくちゃ楽しかった

刺激興奮感嘆にあふれた企画展でした。次から次へと現れる作品(私が移動しているのですが)を前にして、うわぁひゃぁほぇっの連発ですよ

やはり、現代美術はこうでなくっちゃです。

   

「MOTマニュアル2010:装飾」に出展したアーティスト(敬称略)は、黒田潔森淳一野老朝雄(ところ・あさお)、青木克世山本基小川敦生水田寛松本尚塩保朋子横内賢太郎の各氏。

どの方の作品も心ときめく作品でしたが、その中でも特に印象的だったモノを私自身のための備忘録を兼ねて紹介しましょう。


100211_1_2 まず、森淳一さんの木彫りの作品。左の作品のように、ぱっと見、いや、じっくり観ても木彫りとは思えないモノが出展されていました。古代生物(植物? 動物?)の化石か、あるいは他の星からやってきた何かか?


一方、青木克世さんの陶磁製の作品は、額縁だったり置物(例えばこちら)だったりと、「判りやすい」のですが、その装飾の度がハンパじゃない
そこまでやるか の過剰さが楽しい
上に載せたこの展覧会のチラシに使われているのが青木さんの「Predicted Dream IX」です。


ハンパじゃない点では山本基さんのインスタレーションも負けていません。学校のプールほどのスペースに、塩で描かれた迷路…。こんな説明では理解不能だと思いますので、下に載せた過去の展覧会での作品(チラシから拝借)からお察しくださいませ。
山本さんの作品は、「公開制作」。私が行ったとき、山本さんは、ちょうど休憩中で、観客の方と歓談していらっしゃいました。漏れ聞こえたところによれば、山本さんは床に下絵を描くわけでもなく、ほとんど即興で描いていらっしゃるのだとか。私がこの近辺をうろうろしているうちに作業を再開 山本さんは床に座り込んで、ホットドッグ用のケチャップ容器のような入れ物に詰めた塩で「線」を描いていらっしゃいました。

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塩で描かれる迷路が、脳のシワシワに見えるのは私だけでしょうか?

100211_1_3


   

これだけで終わらないところが、「MOTアニュアル2010:装飾」の楽しいところ、すごいところです。小川敦生さんの作品「cutter kinife skating I ~ IV」は、え? はぁ? ええっ? あわわ…でした。
小川さんのコーナー、テーブルの上に並んでいたのは、巨大なこんにゃくのような乳白色の直方体4個。なんだろ、これ? と近寄ってみると、こんにゃく状の物体の上に何やら模様があるような…。

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実はこれ、巨大な石けん(企画展の「協力」に、玉の肌石鹸株式会社のクレジットあり)に微細な彫刻が施されたものでした。何かの結晶のようでもあり、フラクタルのようでもあり、、、。あくまでも人工のものでありながら、あくまでも自然。
いやはや、畏れいりました。m(_ _)m

   

そして極め付きは塩保朋子さんの「cutting insights」でした。
100211_1_5 遮光カーテンに閉ざされたコーナーに入ると、目の前にあったのは、コントラストがくっきりした巨大なモノと、その後ろに二つの大きな影…。

またもや、なんだろ、これ? と巨大なモノに近寄ってみますと、これが、あんた、巨大な紙を切り刻んだモノだったのですよ

そして、その後ろに見えたのは2方向から投射された光がつくりだした「巨大なモノ」の…(右の写真では一つの光源しかありません)。

なんと精緻で巨大なカッティングなのでしょうか。
これを一人の女性が創り出した…。

ふと、改めて気づきました。紙がくりぬかれて黒く見える部分は、壁に白く投射され、紙が白く残る部分は、壁では影になって黒く見えるということ。

至極当たり前のことが、とてつもなく新鮮に感じられました。

   

こうして、それまでかかえていたイマイチ感はすっかり解消されて、私は良い気持ちで「MOTアニュアル2010:装飾」の会場をあとにしたのでありました。

最後に、ちょっとしたぼやきを。

超久しぶりにやってきたMOT、かつてはエントランスの開放スペースでちんまりと営業していた(いったいいつのことだ?)ミュージアムショップが、ちゃんとした場所を確保していました。ところが、書籍・図録類の品揃えはそれ相応のものながら、そのほかの小物(とくに気軽に衝動買いできる価格帯のもの)が寂しい。ちんまりしていた昔の方がもっと魅力的なものを売っていたような気がします。
特に、ミュージアムショップ定番のポストカードがほとんど販売されていないのはどうしたことなんでしょうか? 収蔵品のポストカードは、美術館のオリジナリティを出せる「おいしい商品」だと思うのですが…。

   

ふ~~、やっとMOTの探訪記が終わったぁ。

第1回から読み返そうという奇特な方用にリンクを貼っておきます。


第1回:2010/02/07 今週は東京都現代美術館(その1)


忘れた頃に「つづき」:2010/02/17 「MOTアニュアル2010:装飾」プレイバック

コメント
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