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●光市母子殺害事件最高裁判決: 神保哲生さんらの〝目〟

2012年03月12日 00時04分33秒 | Weblog


神保哲生さんのvideonews.comの記事(http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/002316.php)。三つの問題点を指摘。

 安田好弘弁護士へのバッシング、検察や裁判所の〝安田憎し〟〝安田抹殺〟の視点は、やはり一連の光市母子殺害事件の判決では無視できないと思う。マスコミはバカ騒ぎするだけで、一連の裁判の過程の背後で何が起っていたのか、に目を向けようとしていない。死刑存置派としての視点で、安田さんらに、この裁判とは関係のない死刑廃止派弁護士とのレッテル貼りに終始、バッシングに夢中。「死刑のスイッチ」を押すことへの自覚がなく、「吊るせ、吊るせ」と大合唱しているに等しいことに気づいてもいない。

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http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/002316.php

ニュース・コメンタリー (20120225日)
光市母子殺害事件の最高裁判決をどう評価するか

 1999年の山口県光市母子殺害事件の差し戻し審で最高裁が被告の上告を棄却したことで、犯行当時181カ月の元少年の死刑が事実上確定した。この判決については、メディア上でも多くの議論が交わされているが、何点か指摘しておくべき問題があるように思う。

 まず、最高裁は上告を却下せざるを得ない理由として、被告が殺意について途中から自分の主張を変えたことが、誠意や反省の欠如と判断される点を、主たる理由の一つとしてあげているが、これについては一定の懸念を持たざるを得ない理由がある。最高裁上告の直前に被告の代理人となった安田好弘弁護士によると、少年は取り調べ段階で、殺意を認めれば極刑は回避してやるとの警察・検察の裏取引に応じ、殺意を認めていたという経緯があったのだという。しかし、検察は一審、二審ともに死刑を求刑していた。(一審、二審は求刑は死刑だったが、判決はともに無期懲役だった。)これが本当だとすれば、少年やその代理人が裏取引が守られていないと判断し、途中から殺意の否定に主張を変えることは十分あり得ることだ。しかし、そもそもそのような裏取引があったという証拠は、取り調べが録音も録画もされていない上、弁護士の立ち会いも認められていないため、何一つ証拠は存在せず、これが単に不誠実な態度と受け止められてしまっている
 そもそもそのような裏取引はあるべきものではないが、実際にそのようなことが密室の取り調べで横行していることは、昨今の検察不祥事でもたびたび指摘されている。先般も陸山会事件で、そのようなやりとりの下で行われたの石川知裕衆院議員に対する取り調べの調書の採用が却下されたばかりだ。あの時はたまたま石川氏が取り調べを密かに録音していたために、供述の強要や誘導が白日の下に晒されたわけだが、これだけ検察の取り調べに対する社会の不信感が高まる中にあって、このような衝撃的かつ悲劇的な事件では、その疑問が丸ごとどこかに吹き飛んでしまうのは残念でならない

 また、最高裁は上告棄却の理由として、遺族の処罰感情の峻烈さを挙げている。殺人事件に限らず、事件や事故の際の遺族や関係者の辛苦には、部外者の想像を超えたものがあることは言うまでもない。しかし司法のあり方として、遺族の処罰感情を判決の主たる理由に据えることの妥当性については、議論の余地があると同時に、注意が必要ではないか。今回の最高裁判決ではそれを判決の理由とすることが、あたかも当然かつ自明のことであるかのように語られているが、被害者の感情的回復を優先するあまり、司法のその他の機能が蔑ろにならないよう監視をしていくことも、市民の重要な務めとして受け止めていきたい。


 そして、最後にこれはメディアでも多くが指摘している点だが、死刑が全会一致ではなく多数決の決定だったことも、やはり疑問が残る。
5人の最高裁小法廷判事のうち1人は下級審の審理に関わっていたとの理由から最高裁での審理からは外れ、4人の判事が判断を示したが、3人が上告棄却としたのに対し、弁護士出身の宮川光治判事は、「当時の被告の精神的成熟度が18歳より相当低ければ、死刑を回避する事情に当たる」として、死刑判決を破棄してさらに審理すべとする、反対意見を表明している。
 現行の制度では最高裁小法廷では5人の判事の合議制によって多数決で判決が決まることになっているので、制度上は一人の反対意見は少数意見に過ぎない。しかし、一旦執行されてしまえば、後戻りができない死刑の不可逆性を考えると、今後、死刑判決については全会一致を条件とすることも検討に値するのではないか。ましてや、裁判員制度が導入された今、裁判員裁判で死刑が確定することもあり得る。多数決によって死刑が決まることになると、たった一人の裁判員の評決が判決を左右してしまうかもしれない。これは一般市民から選ばれた裁判員にとっては、あまりにも過重な負担と言えるのではないか。

 光市母子殺人事件の最高裁判決をジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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