「本質を見据えて」というのは、
脳脊髄液減少症データ集2の冒頭に出てくる
脳脊髄液減少症専門医の言葉だ。
本当に、あの患者さんは、
慢性疲労症候群+線維筋痛症という病名に、
新たに脳脊髄液減少症という病名が「加わった」と思いこんでいるんだろうか?
それとも、
今更「脳脊髄液減少症」とわかったからといって、
今までの慢性疲労症候群や線維筋痛症の患者さんたちにささえられてきたから、
そういう病名をいまさら否定できないのだろうか?
あのサイエンスライターのYさんも、
何十年もの原因不明の症状にさまざまな病名がつけられたあげく、
脳脊髄液漏れに気づかれても、
あえて、
前医の周期性嘔吐症などの病名を否定しなかった。
今までの病名に「加えて」
新たに「脳脊髄液減少症」という病名がついた、というようなことが
著書に書かれていた気がする。
みな、
そういう説明をするのはなぜか?考えてみた。
脳脊髄液減少症という病名がつく前、
すくなくとも自分になんらかの病名をつけ、患者として相手にしてくれたお世話になった医師に対して、
今までのあなたの診断は間違っていました。と患者が公式に認めることになる言動は、患者としてもし難いのではないだろうか?
お世話になっていた前医の診断を否定しないためにも、
今までの病名に「加えて」、脳脊髄液減少症と新たに診断された、という言い方をするのかなと、
このYさんの時も、私はなんだかすっきりしないものを感じた。
脳脊髄液漏れが見逃され続けた30年で、
そうした症状や状態になってしまったと考える方が自然であったとしても、
それを、患者自ら公式に認めないのは、
前医に対する配慮のようにも、
私は感じた。
だから、今回も、そうなのかなとも思う。
脳脊髄液減少症と慢性疲労症候群と線維筋痛症は
症状が似ているだけの、原因が全く別の病態なのか?
それとも、髄液漏れによって出ていた痛みや激しい疲労感の症状に、
ただ、それぞれ別の病名がついていたのか?
線維筋痛症も、慢性疲労症候群も
実は、
脳脊髄液減少症の脳が感じさせた痛みや疲労感ではないのか?
いずれにせよ、
真相は近い未来に、医学が進めば解明されるだろう。
ただ、
はっきり言えることは、
脳脊髄液減少症は、
痛みも倦怠感も頭痛も嘔吐も、それはそれは身体にも精神にも症状は何でも起こりうるということ。
だって、
脳が正常の状態におかれなくなるんだもの、症状は何でもありだと思う。
24時間テレビに出てくださったあの方は
ブラッドパッチで、一時的でも症状がやわらいだがすぐもどったという。
それは、なにより、今までの症状が、
脳脊髄液漏れによる症状であった証ではないか?
慢性疲労症候群でも、
線維筋痛症でもなく、
事故当時、自分でも気づけないなんらかの原因で起こりはじめた、
脳脊髄液漏れが起こした脳が感じた症状ではないのか?
ブラッドパッチで一時的にでも改善する=脳脊髄液減少症の症状だった可能性ということにさえ、
あの患者さんは、まだ気づいていない様子だ。
だけど、今の段階で私は想像できる。
脳脊髄液減少症なのに、それらの病名がつき、
脳脊髄液減少症の可能性にも気づかず、
検査も治療も受けておらず、治る機会を失っている患者の存在があることを。
病名とは、今の苦しい病の現状から脱出するための、出口の方向にすぎない。
だから、病名は、増やせばいいってもんじゃないと私は思う。
だって、出口の方向があっちこっちになってかえって迷ってしまいそうだから。
がん患者が、
全身の痛みや、食欲不振や、抑うつ症状があったとき、
それぞれの症状ごとに病名をつけたりはしない。
それは、それらががんが引き起こしていることをみなが理解しているから。
脳脊髄液減少症には、そういった共通理解が、医師にもマスコミにも、患者にもまだ充分にない。
だから、
いまだに症状ごとに病名がつけられている可能性の方が高いと想像する。
どちらかというと、脳脊髄液減少症よりは支援の受けやすい、
慢性疲労症候群や、線維筋痛症の病名のほうが、
何かと有利な患者もいるのかもしれない。
でも、だからと言って、
脳脊髄液減少症との関連性を否定しないでほしいと思う。
今の自分の症状が引き起こしている張本人はなにか?
患者も、ひらめきと気づきと、情報収集での学びと
過去や利害にこだわらない勇気を持って、
しっかりと
「本質を見据えて」ほしいと思う。
時には、
今までの病名は誤診だと思われるというようなことをはっきりという患者も
ひとりぐらい出てほしい。
それには、
脳脊髄液減少症の治療で、いままでの症状がすっかり治った患者なら、
そう、言えると思う。