この匂い……たまらない。
今、部屋中に充満。
ああ、なんの匂い?
そう、お煮しめを煮ている匂い。
ふるさとの指宿のお煮しめの匂い。
ついでこん(つるして干した大根)の匂い…
今日は父の命日。
1980年の朝の10時だった。80歳。
思い出す。
「周りを見回したい」
体を起こして病院の窓から山々を見た。
青空に緑の山々。
父もきれいな景色が好きだった。私も似たかな。
今日は、だから、父ちゃんの好きなお煮しめを作っています。
ついでこん、サトイモは宮崎産、ごぼうは鹿児島のだよ。ニンジンは北海道。昆布は利尻昆布(朝、水につけて出勤した)ジャガイモ、こんにゃく、厚揚げ、かぼちゃ…を大きなおなべで煮ている。
父ちゃんの大好きだったお煮しめ。
父ちゃんも作ってくれた。おいしかった。
昼休みに主婦に戻って買い物。故郷のものがあって、ヤッター嬉しい~。
そして、今年、初物のみかんも買ってきた。
鹿児島の青いみかん。
いいにおい。
運動会の匂い。
父ちゃんと一緒に食べた運動会のお弁当。
巻き寿司にお煮しめに…みかんもあった。柿も(そう、柿は昨日夫がお供えしてあった)梨も。
みかんは、さっき、お供えした。
実は、もうひとつ、匂いがあって、帰宅してすぐ和室に行けば、朝、父の写真に飾ったおしろいばなの匂い。
和室がおしろいばなの匂いでいっぱい。
朝、父に手を合わせて出勤した。
指宿の家から持ってきたおしろいばな。
帰宅したら、見事に咲いて、香っていた。
「父ちゃん、いいにおいでしょ」
いつも父が見守ってくれていると思う。ありがとう。
今年は要所要所でトンボにあった。
妹にも「父ちゃんの命日だね」とメール。
父の命日。
おしろいばな。
みかん。
そして、お煮しめの匂い。
懐かしき故郷の父とともにある匂い、香り。
まもなく、お煮しめもできあがるかな。