人は、「見たいものしか見えない」ものですが、唯一人、ユリウス・カエサルは共和制の限界を見抜き、帝政の必要性を見抜き、ルビコン川を渡ったのでした。
ユリウス・カエサルは人類史上屈指の天才ですから完全に別格として、普通の人には見えないものが見えるすごい人たちというのは日本にもたくさんおられ、私も若い駆け出しのころにはそれらの方々に強く憧れていたことは、このブログでも何度も記してきた通りです。
このブログでも、「つながった状態」というのを何度か書いていますが、その状態では、以前は見えなかったものが見えるようになってきます。今後、同志たちと研鑽を重ねることで、次々といろんなことが見えるようになってくるのだろうと思います。
この記事では、コンクリートのひび割れ、という一般の人にとってはどうでも良さそうなものについて、見える、ということで簡単にまとめます。
私も、学生のころからコンクリートのひび割れに関する研究をやってきました。何となく大事だとは思っていましたが、本当に人生をかけて研究をするような対象なのか、と若干の?疑念?を抱きながら研究をしていたことは申し訳ありませんが否定できません。
その後、コンクリートのひび割れていない部分(専門用語でかぶり、と言います)の品質、すなわち表層品質の研究を、学会で組織的に議論しながら行ってきましたが、私も多くを学びました。
そして、H21年3月から関与することになった山口県のひび割れ抑制システム(現在は、より上位の品質確保システムに移行中) で徹底的に鍛えられました。ひび割れ、の本質的な意味についてかなり深く議論してきましたし、学会でも勉強を重ねてきた表層品質の意義についても理解を重ねてきました。
多くを書くことはしませんが、ひび割れとは、結局人間関係の間の亀裂であり、また我々に多くのことを教えてくれる「目に見える」先生でもあります。すべてのことを教えてくれる先生ではありませんが、意欲のある我々を適切に導いてくれるので、 結果的に構造物全体の品質も良くなり、人間関係の亀裂も修復してくれます。もちろん、我々人間を鍛えてくれます。コンクリートのひび割れも自然であり、やはり自然は偉大であると痛感します。そして、ひび割れとは、「金(money)」の問題でもあるのです。絵空事ではなく、現実社会での優秀な先生です。
4/1に復興支援道路のあるトンネルを初めて訪問しました。東北地方整備局の前道路課長にぜひ行ってみてほしい、と言われて行きました。このトンネルの覆工コンクリートと、以前から関わっている田老第六トンネルの覆工コンクリートを比較して、おそらく誰にも見えてないのでしょうが、私には本質が見えました。私に見えた本質は、周囲の皆様に伝えておきました。詰まらない本質が見えても仕方ないのですが、カエサルの見た帝政とは比べ物にならないにしても、皆が幸せになる道筋が見えた、ということです。
トンネル覆工コンクリートのひび割れ、またはひび割れを抑制することに何の本質的な意味があるのか、多くの方々には分からないと思いますが、私には分かりました。
ひび割れ、というものは世の中では嫌われ者ですが、かなり賢い先生です。ひび割れとうまく付き合っていくことが、我々技術者、研究者や、実務の方々の技術力を大いに鍛えてくれることになると思います。早速、トンネルのひび割れを対象にした研究も組織的に開始しましたので、楽しみです。
僭越ですけれど、コンクリートのひび割れに関しては、人に見えない本質が、私には見えるようになってきたというのは事実であり、そのような人間にはひび割れに関する動きを、正しい方向に誘導する責務があると感じています。
コンクリートのひび割れ以外にも、見えないものが見える方はたくさんおられると思うので、それらの方々が良心に基づいて、世の中を良い方向に導いていただければと思います。
これまで、学会の研究委員会で幹事長職を三回ほど務めました。それぞれ簡単でない仕事でしたし、委員会を立ち上げた当初は大きなプレッシャーを感じたことも多々ありました。ですが、それらの活動を通じて、とても鍛えていただいたと感謝しております。
田村隆弘委員長と私の幹事長でやらせていただいたJCIデータベース委員会(H23~24、報告会はH25.9.10に終了)は、私自身も大変に楽しく運営できた、当時では理想的な委員会でした。「自律分散的」に活動していただき、当初の目的を大きく超えて将来への展開も種々開けた委員会であったと思います。
よくありがちな、ミッションが最初から決まっていて、 呼ばれて集まった委員たちが仕事を割り振られ、宿題に追われながら委員会報告書を作成する、というタイプの委員会ではありませんでした。そのような委員会の中にもとても重要なものもあるし、否定はしません。ですが、私が主体的に運営する委員会ではそのような形にはしたくないと思っています。
まだ準備段階ですが、すでに設立に向けて具体的に動き出した研究委員会があります。いろいろと周囲とご相談した結果、私は副委員長という立場で運営、舵取りをすることになりました。
その委員会では(仮に設立がNGとなっても、実質的な活動はやります)、東北の復興道路・復興支援道路等の品質確保、山口県の品質確保システムの高度化、を二つの核に、中央の建設マネジメントへ等へのフィードバックを検討します。
東北、山口ではすでにほぼ全速力で走っている状況ですので、委員会は正式に発足していないものの、すでに実質的な活動は加速期に入っていると言っても過言ではありません。
前回の日本出張でも、この委員会でご一緒するであろう方々と、多くの議論を重ねて、研究を前進させました。
次回の5月末からの日本出張でも、 まず山口に入り、6月上旬には東北地方で集中的に現場調査を行いますので、この委員会の活動を発足前から強力に推進することになります。
そして、委員会には、これから交渉を始めますが、建設マネジメントの分野の研究者、技術者に加わっていただき、先進的な、実践的な議論を重ねたいと思っています。私もその過程でたくさん勉強させていただきたいし、「分野」という垣根が崩されていくことを楽しみにしています。
JCIデータベース委員会は「自律分散的」というキーワードが適切でしたが、次の委員会は「生き物のような委員会」になるであろうと思います。それぞれの本分をはっきりと認識したメンバーが、有機的につながって、当初の目的を達成することはもちろん、とめどなく展開していく流れができていくと思います。
そのような委員会の運営は私が最も得意とするところですので、とても楽しみです。
新設構造物の品質確保の先には、既設構造物の維持管理の真のPDCAの構築を当然に視野に入れています。そして、国際展開、国際貢献も視野に入れており、その適任者に幹事長をお願いしております。