細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

いい人たち

2014-04-30 18:42:45 | 人生論

「この人はどうしてこんなことをするんだろう?」と思うことはよくありますが、どんな人も悪いことをしようと思ってしているわけではない、ようです。

以前、D.カーネギーの本で読んだことがありますが、どんな極悪犯罪者であっても、自分が悪いことをしている、という認識はないそうです。

数日前に、長女とそのような話をしました。

例えば、パリの街中でタバコをポイ捨てする人は無数にいますが、彼ら・彼女らはどのように考えているか。「だって建物の中で吸えなくなったんだから仕方ないじゃない。私一人が捨ててるんじゃない。みんな捨ててる。何が悪いの?パリ市の職員が掃除してくれるじゃない。彼らの仕事にもなってちょうどいいんじゃない?」とでも考えていることでしょう、きっと。

なるほど、と長女も納得していました。

その他のもっと悪いことについても、頭の中でシミュレーションしてみましたが、すべて上記のような理屈を作ることができます。武田鉄矢の今朝の三枚おろしでも、無差別殺人の犯人の思考回路が説明されていましたが、ご本人は悪いとは思っていないのです。自分が不遇なのが社会のせいだと思っておられる。

そのような世の中でどうしていけばよいかですが、価値観の似た人たちと仕事をするのが一番楽しい。回りくどい説明をしなくても分かってもらえるし、足の引っ張り合いでなく、常にポジティブな議論ができる。

悪いことをする人は、その人の哲学が正しくないからだと思いますが、私たちに価値観の近い人たちや、見込みのある(僭越ですみません)方々に対しては、正しいと思う哲学を示して、共鳴してもらうように努力を続けたいと思います。その哲学は独りよがりのものではなく、しっかりと勉強して、またしっかりと議論してブラッシュアップさせていきたいと思います。

そして、価値観のあまりに違う方々に対しては近づかないようにします。労力も無駄だし、おそらくこちらの哲学を示しても、共鳴していただくことは無いだろうからです。

ですが、それらの方々も、ご自身の哲学に基づいて正しいと思うことをやっておられるのだ、ということだけはよく認識しておきたいと思います。否定は、結局何も生み出さない。


教育の目的

2014-04-30 01:15:53 | 教育のこと

内田樹先生の教育に対する哲学がふんだんに詰まったブログの記事を読みました。大変長い文章ですが、教育に携わる方は、賛同するしないは別として、一度は読まれることをお薦めします。

考えてみると不思議なもので、私は大学の教員ですが、「教育の目的」についてしっかりと教わったことがありません。多くの師匠たちから学んだことや、自分で経験して身に付けたことなどから、自分自身の教育観を創り上げてはきたつもりですが、内田先生の文章を読んで大変に勉強になりました。

「金」のために、大学も多くの改革を強要され、もちろん、すべてが悪い方向に行っているとは決して思いませんが、多大な違和感を覚えつつ、教員生活を送っていました。その私の違和感の理由も、内田先生の文章に見事に説明されているように思います。

自分自身にできることは限られていますが、正しい見識を持つよう努力を重ね、自分の持ち場を守るために死力を尽くし、周囲に適切に影響していくしかないのだと思います。