新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

学生さん向け:再生不良性貧血と骨髄異形成症候群の話(病態編)

2014-12-14 14:41:37 | 研修医、医学生さん向け

こんにちは

 

いよいよ忘年会シーズンに入ってきました。先週から今週にかけて飲み会が続くので大変です。

ただ、飲み会だけではなく臨床や研究も大変なわけですが。

 

今日は病棟のバックアップということで午前中は仕事に、帰ってくる際に投票所に行きましたが・・・・

「誰に入れても変わらない気がするのは・・・なんでだろう・・・」

 

と、非常に投票に迷いました。はじめ無記入で出そうかと思ったくらいです。

 

で、今帰ってきたところです。本当は娘のところに行きたいのですが、実家の車でみんなで遠出しているらしく(おいていかれておりますw)・・・

 

ということで、久々の更新です

 

さて、骨髄不全といわれる疾患があります。再生不良性貧血と骨髄異形成症候群が有名どころです。どちらかの疾患が出てくるとだいたい学生に話を振ります。

 

--------------------------------------

アン:「さて、いま骨髄異形成症候群(MDS)の話が出たけど、あれってどんな病気?」

学生A:「どんなといわれると貧血になったりします」

学生B:「芽球が出ることがあります」

アン:「芽球が出るってどの程度?」

学生B:「白血病よりは多くないですが、普通より多いくらいです

アン:「理解しているんだろうけど、数値聞かれるから覚えてね。他に」

学生C:「無効造血になります」

アン:「無効造血、いいねぇ。キーワードが出たね。それって何?」

学生C:「汎血球減少になります」

アン:「・・・おまえ、単語だけ覚えているだろう・・・・(笑い話ですが、汎血球減少という言葉の意味を知らない学生グループがありました)」

アン:「まず、骨髄の所見のところに顆粒減少とか、分離多核巨核球とかいろいろ書いているよね。あれは形態学的に…つまり見た感じが普通の血液ではない『不良品』の血液なんだ。そういう見た感じ変な不良品・・・。もしここが市場で、見た目が悪い野菜や果物、傷がある魚や肉が並んだらどうする」

学生B:「僕は気にせず食べます」

アン:「・・・質問が悪かった。もし、君らが農家で市場に出品する際にそういうのがあったら出品するかい?安く買いたたかれるぞ~、評判落ちるぞ~

学生A:「出品しません」

アン:「そう。骨髄の中ではたくさんの不良品血液が作られています。しかし、それはうまく血液中に出てきません。骨髄中で壊れていく、もしくは壊してしまいます。そうすると血液作っているのに、有効な造血になっていないことになるので・・・

学生C:「無効造血と」

アン:「そう、無効造血になる。つまりMDSの一つの要素は『無効造血による汎血球減少』ということになる」

学生:「なるほど。1つの要素ということは別の要素は?」

アン:「さっき、芽球がどうのこうのって言っていたけど、もう一つは『前白血病段階』ということだね。ほっておくと白血病に進行してしまう。さっき、誰かが急性転化と言ったけど、急性転化するのは慢性骨髄性白血病から急性転化するとは言うけど、骨髄異形成症候群から急性転化とは言わないから

学生A:「なんでですか?」

アン:「だって、慢性疾患が急性になるというかもしれないけど、別の疾患から別の疾患に急性転化するとは言わないでしょう?じゃぁ、本当はそういうことはないけど、風邪の人が肺炎になったら急性転化というか?」

学生C:「そもそも、その例えはおかしくないですか?」

アン:「・・・やるなぁ・・・。じゃあ、慢性腎不全が急性腎不全に…いやこれはちょっと意味合いが・・・。もう、この話早めて話を進めよう。病態としてもう一つ有名な『骨髄不全症』と言われる血液の作れなくなる疾患があるのだけど?」

学生ら:「・・・・」

アン:「聞いたら思い出すと思うけど、再生不良性貧血だね。再生不良性貧血ってどんな病気?」

学生A:「骨髄の中が脂肪化します」

学生B:「血液が作れなくなります」

アン:「まぁ、いいか。なんで血液が作れなくなるの?」

学生A:「だから、骨髄が脂肪に・・・」

アン:「脂肪髄になるといいたいのだろうけど、なんで脂肪髄になるの?」

学生C:「自己免疫ですか?」

アン:「そうだね。すべてがそれで説明できるわけではないけど、学生のうちはそれだけで十分だと思う。さっき、再生不良性貧血の患者さんの話が出たけど、免疫抑制剤を使用していたでしょう?免疫抑制剤が効くということは自己免疫を考えたいよね。使うのは抗胸腺細胞グロブリン(ATG)やシクロスポリンなんだけど、これってどっち系の免疫を抑えるんだっけ?」

学生C:「どっち系っていうと」

アン:「リンパ球のサブセット」

学生:「B細胞ですか?

アン:「自己抗体を作るやつはそうだろうなぁ、ついでに言うとそういうタイプは多分ステロイドやリツキシマブが効きそうだけどね・・・

学生:「T細胞です」

アン:「そうだね。あの薬はT細胞をどちらも抑える薬ですね。そうするとT細胞が関連していることになる。T細胞が造血幹細胞を攻撃して、造血幹細胞の量が減ってしまったのでそのスペースに脂肪細胞が膨らんでくるというのが実態だろうね(脂肪細胞は増えないです。脂肪を蓄えるとしても)」

学生:「なるほど」

アン:「なので、骨髄不全と言われる、血液が上手く作れなくなる2台巨頭。骨髄異形成症候群と再生不良性貧血は、骨髄異形成症候群は造血幹細胞の質が悪くなって血液が作れなくなったり、芽球が増えて白血病に進行したりする。再生不良性貧血は造血幹細胞の量が減って作れなくなる。とりあえず、簡単にこの程度のことを覚えておくといいのではないかな」

----------------------------------------------

だいたい3週間のカンファレンスで、病態の話をして検査や治療の話をしてと少しずつ進めています。ちなみに骨髄不全の中には「発作性夜間血色素尿症(PNH)」とかもあります。これは造血幹細胞のPIG-Aという遺伝子の異常で血液中にある「補体」という組み立て式爆弾みたいなものを抑える物質が血液の表面にできなくなるから起きます。他にも言いだしたらいろいろありますが、とりあえず学生向けということでこの辺で。

 

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緩和ケアに関して:治療方針選択の基準はどこ?

2014-11-24 15:44:46 | 研修医、医学生さん向け

こんにちは

 

先程まで病棟でバックアップしておりました。今日は夜勤の看護師さんが14時過ぎまでいて(というか、僕が先に帰りました)、日勤看護師も昼食とらずにやっているという・・・

 

もちろん研修医も食べていませんし、僕も・・先程食べました(笑

 

思わず、「労働基準法はどこに行ったのやら(笑」と思いました。医師はともかく看護師さんの数が増えて、こんな勤務状況でなければよいのだがと思います。

 

さて、今日はちょっと「緩和ケア」に関して、書けるほどの経験値もないのですが少し書きたいと思います。あくまでどういうときに緩和ケアを考えて、どういった医療を提供するのかを「研修医」の先生たちの参考になればと思い書いてみたいと思います。

 

あくまで血液内科ですので、血液内科を例にして書いていきたいと思います。

 

恐らくどの疾患の患者さんでも診断直後というのがあると思います。

診断して年齢とか合併症とか、様々な情報がを加味して「積極的な治療を行えるかどうか」を普通は考えると思います。手術でも同様だと思いますが、手術に耐えられるのかどうか。血液内科領域では「抗癌剤治療に耐えられるのか」「抗癌剤治療のデメリットを超えるメリットがこの患者さんにあるかどうか」などを考えます。

 

積極的な治療ができないとなるとBSC (Best suppotive Care)が主体になります。

 

積極的な治療を行っていて病気が治ればよいですよね。標準的な治療を行ったものの治らなかった場合、「治しに行く」のか「共存」を主眼とした治療を行うのか、それともBSCかというところではないかと思います。

 

完治を狙う・・・急性白血病などでは移植は治療選択肢になります。急性白血病なら再発した患者さんでも再寛解導入療法を行い、移植を目指すのが普通です。仮に再発ではなくて難治(寛解に入らない)であっても移植はオプションになります。On disease(白血病が寛解に入っていない状況)で移植を行っても、完治する可能性は10%程度です。まぁ、最近の報告は多少上がっていますが、それでもそういう確率です。移植後の早期再発となれば、さらに確率は低くなります。移植しても生き残ってすぐ再発してくる腫瘍細胞が敵ということですから。

 

それでも患者さん本人がそれを目標にすると決めた場合、血液内科医が緩和ケアをしましょうとは言わないと思います。0%ではないからです。実際、うちの患者さんも移植後1年以内の再発ですが2回目の移植で5年以上無病生存している患者さんがいます。統計的に確率が低いとは言えますが、個人個人では神様ではないので可能性が0というのはありませんので。

 

また、悪性リンパ腫や骨髄腫ならば、寛解に入ればいい状況ですが、抗癌剤抵抗性の患者さんの場合、方針は非常に難しくなります。高齢者が増えるのもありますが抗癌剤抵抗性だと標準治療の自家移植が行えない。そうすると移植をするのか、共存を目標に治療に行くのか…という話になります。

 

共存を狙う治療…と言っても、治しに行かないから積極的な緩和治療と言ってよいかもしれません。僕も外来で内服抗癌剤で頑張ってひっぱりながら日常生活を送っていただいている患者さんたちがいます。悪性リンパ腫であれば輸血が要らなければ月1回程度でなんとか行けますが、白血病の患者さんだと輸血が必要になります。外来で引っ張るのも無理ではないですが、結構大変です。ある一定の効果があればそれでも引っ張れることがあります。

 

実際奇跡的な話としては急性骨髄性白血病の緩和ケアでしたが、1年くらい生きた人と1年半生きた患者さんがいらっしゃいます。二人とも一時的に内服抗癌剤なのに輸血フリーになるという奇跡的なことが起きた(一人は調べてないので知りませんが、1年もった患者さんは完全寛解に入ってました)ので、一時的ではありましたがよい状況を作れました。それ以外の患者さんだと数か月(2~8か月くらい)が急性白血病では限界かもしれません。抗癌剤は多少は効いても副作用が大きいので(というか骨髄抑制はきつくて、途中で感染症や出血で致命的になってしまいます)、長期のというと難しくなります。そうすると緩和ケアとして内服抗癌剤を使用した方が良いのか、本当のBSCの方が良いのか(輸血や抗菌薬の支持療法だけ)どうするか迷ったりします。

基本的には腫瘍細胞の増殖がどうかというところで、普通はとんでもない速度で増えてきて臓器浸潤とかもするので、使用できるたらした方が良いのかもしれません。ただ、どちらが良いか(BSC vs Palliative chemotherapy)というRCTは組まれてないのではっきりとは言えません。(僕が後方視的な解析をしようかと思いましたが、BSCの患者さんは元の病院に戻られているのでデータがなくてあきらめました)

確か北欧の方のデータで80代のAMLに積極的な治療科か緩和的抗癌剤治療かBSCかで比較したものもありましたが、早期死亡の数が多いが効果があれば積極的な治療が良いみたいな(当たり前ですがw)論文が出ていたはずです。

 

血液疾患では全く抗癌剤が効かなくなって…というところまでというのは少ないかもしれません。例えば急性白血病では、抗癌剤を使えば白血病細胞は死ぬけど、体の方が次の治療ができるようになるまでに同じような状況になってしまう。だから効果がないと判断される。ですので、同じ効果があって副作用が少なければ道は開けるのかもしれません。そういう意味ではvolasertib(2014年8月のBloodにのっていました。日本でもそのうち出るんでしょう)をはじめとした分子標的療法に緩和的な意味でも期待したいところです。

ただ、悪性リンパ腫や骨髄腫は本当に全然効かない…というようなこともあります。そうすると本当に使う薬もないというのが実情になります。メリットがデメリットを超えることができないので、治療選択肢として提示できないという状況です。抗癌剤治療は「体に有益な薬」ではありませんので、引き際が重要になります。どこまで使用するのか、それは患者さんごとに違います

 

この場合は患者さん本人もまじえてどういう方針で行くか相談する必要があります。と言っても、BSC以外の提示ができないということになります。抗癌剤のメリットがないのにダメージだけ蓄積させるわけにはいきませんので。意識がはっきりしている患者さんにはつらいかもしれませんが、自分の残された時間を使っていただくためにはきちんとその旨を言う必要があると思っています。逆にそれを聞いても「受け入れる時間」がない患者さんもいます(死の受容:エリザベス・ロスの「死ぬ瞬間について」というのがありますが、血液疾患の患者さんでは進行が速すぎて、受容できずにうつ状態のまま亡くなることもあります。その場合、僕もしまった・・・と思うことはありました。それでも告知しないと次のステップに進めないので告知はしたほうが良いと思っているのですが・・・・、告知をしない場合は本当に告知を聞いても退院も外泊もできないだろうという段階まで追い込まれている患者さんでしょうか・・・)。

 

緩和的な抗癌剤治療ができないとなればBSCとなるわけですが、BSCというのも症状がなくて元気だけどともかく輸血が必要・・・とか、今は抗菌薬を入れて感染症が改善できれば一時的にでも家に帰れそうだという話になれば積極的に行います。仮に家に帰れなくても。病院で今しばらく家族と話す時間ができるのであればそういう選択肢はありだと思っています。

 

輸血や抗菌薬治療など、やっても毒にはならないのではないかと思う治療をやらないほうが良いのではないかと判断することもあります。これは家族が判断するのは無理です。理由は患者さんに悪いとは思えないので。

 

ただ、僕は次の場合はやらないほうが良いのではないかという判断をしたりします。

1、まず原疾患のコントロールがついていないこと(要するに、抗癌剤の適応に乏しい)

2、本人の状態が著しく悪い(呼吸不全、腎不全などにより早晩苦痛を伴った死が来る可能性がある)、もしくは本人の意識レベルが悪い(患者さんの延命を図ったとしても患者さんのメリットに乏しい、医師と患者家族の満足で終わってしまう)

単純化すると多分これだけです。

 

1の条件は頑張ったらどうにかなる可能性のある人は、そもそも緩和ではなくて・・・そもそもどうにかクリアするべき人です。ですので絶対条件です。もちろん合併症でもうにっちもさっちもいかないならば、それで緩和ケアになりますが…その場合は次の項目を満たします。

2つ目の患者さんの容体が著しく悪い状況だと、ある程度の積極的な治療介入が患者さんの苦痛を伸ばすだけになるかもしれません。麻薬などを用いて苦痛の緩和をはかっているといっても、つらいのは患者さん本人です。苦しそうにはぁはぁ・・・いっている。確かにモルヒネで呼吸緩和はしているけど、苦しそうだ・・・。腫瘍熱と思われるが熱が出ている。解熱剤を使用しているけど、うまくコントロールできない。肝不全や腎不全が原疾患(白血病やリンパ腫、骨髄腫など)のために起きている。これでどれだけ対症療法を頑張っても、原疾患の治療ができなければ改善の余地がない。

 

その患者さんに「治る可能性は0ですけど、この状況でどれくらい生きたいですか?」などと聞く馬鹿な医師はいないと思います。ですから、できることを積極的にやるか、その旨を患者さんの家族に説明して積極的な治療を控えるかという話になります。もっというと最後まで頑張ろうとする輸液量などが増えてきて、患者さんの体がむくんできます。個人的にはそれもどうかと思っています(ですので、僕の場合…というよりおそらく多くの医師の場合は最終的な輸液量は少なくなっていると思います)。ついでに言うと輸液量を絞ったほうが・・・おそらく呼吸不全などでなくなったりするのが遅くなると思っているのですけど、経験上でしかありませんが。

 

意識が悪いとかそういう状況だと論外です。患者さんに何のメリットもなく、あるのは『患者さん家族の「その状態でもいいから生きていてほしい」という思い』だと思います。それは当然の事であり、否定はできません。早く死んでほしいとは家族は誰も思っていないはずです(たぶん)。しかし、苦痛が長引いてほしいとも思っていないと思います(たぶん)。それ故に意識がなくて患者さん本人にメリットがないのであれば、ただただ生かされるというのは望まないのではないかという話になると思います。

これらの場合は・・・患者さん本人にメリットが乏しい以上、患者さん本人の苦痛を伸ばしているだけかもしれない。ということで、僕が良く言うのは「患者さんが最後にご本人が頑張れる範囲内で頑張ってもらって、そこに苦しみがないように医療はサポートしていきます。ただ、苦しみが長引くような処置はもうしないようにしたいと思います」という話をすると思います。

 

これは僕が言っていることであり、私見でしかありません。参考になるかはわかりませんが、将来研修医の先生や学生さんが迷った時の参考になるとうれしく思います。

 

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学生さん向け:抗菌薬の話

2014-11-09 12:45:19 | 研修医、医学生さん向け

追加で簡単な記事を少し。

 

学生さん相手にカンファ中に喋っていることを書いてみておりますが、今日は簡単な抗菌薬話。

 

まぁ、こないだは教授が不在だったのと学生が1名除いて全員体調不良で休みということもあり、カンファでいろいろしゃべる羽目になりましたが・・・(いらっとさせられたような、いらっとしたような・・・)

 

-------------------------------------

アン:「さて、今抗菌薬に関して質問されていましたけど、抗菌薬ってどんな薬があるんだっけ?種類別に思いついたものをどうぞ」

学生A:「ペニシリン系、セフェム系・・」

学生B:「ニューキノロン系、カルバペネム系」

学生C:「バンコマイシン」

アン:「ようするにグリコペプチドね。他は?」

学生A:「えーと、ペネム系とか」

アン:「ほほぅ。面白いところ来たね。他・・・」

学生C:「アミノグリコシドとかでしょうか?」

アン:「いいねぇ。他に思いつくのは?」

学生ら:「・・・・・」

アン:「言われれば思い出すだろうけど、マクロライドとかテトラサイクリンとか…いろいろあるよね。では、それらを大別してみるとどういう分け方があるかな?」

学生B:「静菌的と殺菌的

アン:「いいね。じゃぁ、静菌的な薬と殺菌的な薬を分けてみてよ」

学生ら:「ペニシリンやセフェム、カルバペネムは殺菌的です。マクロライドとかは静菌的だと思います」

アン:「他の薬はニューキノロンとか」

学生:「殺菌的です。DNAジャイレースに作用します」

アン:「お~。分子的な機序が来たか。じゃぁ、他の薬」

学生ら:「グリコペプチドは・・・・・」

アン:「殺菌か静菌か・・・・」

学生:「…殺菌」

アン:「ファイナルアンサー?」

学生:「…ファイナルアンサーです」

アン:「正解。うちで使用している薬剤は基本的に殺菌的です静菌的な薬剤は菌が増えないように押さえている間に、自分の免疫にやっつけてもらいたいわけでしょう?血液内科領域ではありえない(好中球減少時は・・。好中球があるなら普通に使用します)選択肢かもね。ちなみにペプチドグリカン合成阻害がペニシリンとかセフェムとかですけど、架橋形成を阻害します。ホスミシンという薬剤だけペプチドグリカンの合成の初期を阻害するんですけど、2004年ころはスーパー療法とか言って組み合わせていたりしていましたね。今はしないでしょうけど・・・。DNAジャイレースはこれらを阻害してタンパク合成阻害に行くんですが、効果が強いため殺菌的になるといわれています」

学生:「はい」

アン:「静菌的な薬の機序は?」

学生:「タンパク合成阻害です」

アン:「いいね。リボソームを阻害する薬ですね。これらは細胞内への移行性が良いわけだ。菌の中にも入っていかないといけないし・・・。ということは抗結核薬みたいに食細胞内にも移行性が良いやつが含まれるわけですね。抗結核薬の多くはこの機序ですよね。アミノグリコシドとかマクロライドは抗結核作用あるでしょう?ちなみに細胞内に入るからニューキノロンも当然効く。けど、これは覚えちゃだめだよ。国家試験でははずれになるから(ニューキノロンは基本的に抗結核薬に入っていないので)。他はRNA合成にかかわるやつとか、イソニアジドみたいに結核菌の細胞壁(ミコール酸ですね)を阻害するやつとかになります」

学生:「なるほど」

アン:「アミノグリコシドは静菌的なだけだと、うちの現場では使いにくいのですが、他に機序を知っていますか?」

学生:「わかりません」

アン:「細胞膜を阻害する作用もあり、これが殺菌的に働くといわれています。ではアミノグリコシドが効きにくい状況と使うとまずい病気(国試的)」

学生:「・・・・わかりません」

アン:「アミノグリコシドは酸素を利用して菌の中に入っていくので、嫌気性菌や嫌気性環境では効きません。また、pHにも影響されるので膿瘍には効きにくいです。使っちゃいけないのは重症筋無力症、これは国試レベルです。国試レベルでついでに副作用で有名なもの2つ」

学生:「腎障害と第8神経障害です」

アン:「時間の都合で、簡単に行くけどでは抗菌薬の使い方、PK/PD理論で分けるとどうなるかな?」

学生:「ピークが大事なのと時間が大事な薬です」

アン:「多分わかっていると思うので、次の患者さんが始まったので簡単に。アミノグリコシドやニューキノロンはピークが大事なので、1日一回投与が多い。セフェムやカルバペネム、ペニシリン系はTime Above MIC(TAM)が重要なので頻回投与の方が有効になる。ちなみにAUCもニューキノロンは重要だし、バンコマイシンもAUCなんですけどね。じゃぁ、次の患者さんが始まっているので、次に集中~」

-------------------------------------

ちなみに国家試験的にはニューキノロンとNSAIDsとかも併用が駄目になっているのかな?

現場でも注意して使いますが、NSAIDsも一部の薬剤以外の併用ではほとんど痙攣が起きていないと言われているので、その一部を覚えていればよいような気もしますがね。けど、現場の薬剤師さんには言われるのでしょう。

ここには書き忘れましたが、ST合剤なんかもありますね。STは葉酸合成阻害ですね。

 

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学生さん向け:骨髄腫の話

2014-11-04 12:00:00 | 研修医、医学生さん向け

さて、時間があるので11月4日分という感じで記事を作っておきます。コメントの返信がないことに関してはご容赦をお願いします。

 

さて、先日から作り始めました学生、研修医向けという記事です。

 

メジャーな疾患群の中ですべてまとめてではなくて、疾患を理解するきっかけになればという感じで書いていきます。ちなみにここで出てくる学生は、今までの数年間にこんな答えを返してきた学生がいたなぁというところをミックスしておりますので、こんな答えをするのが普通の医大生と思わないでください(笑

 

ということで、骨髄腫のさわりのところです。ではでは・・・

当院、血液カンファの端っこで来る広げられている漫才(?)の始まり始まり・・・

---------------------------

アン:「さて、今の患者さんは多発性骨髄腫の患者さんです。骨髄腫ってどんな疾患」

学生A:「どんなといわれても、いろいろありますので」

アン:「ほうほう。確かにいろいろあるので、一つ一つ聞いていくけど、何の腫瘍ですか?」

学生A:「骨髄球の腫瘍です(と、最近いった学生さんがいました。久々に衝撃を受けました)」

アン:「・・・えと、さっき白血病の話をした時に芽球とか前骨髄球とか出てきたよな。骨髄球は前骨髄球の後の分化段階なんだが、それが増えると?」

学生B:「あの、形質細胞の腫瘍です」

アン:「そうだね。形質細胞の腫瘍だ。形質細胞はどこで増えるんだっけ?」

学生A:「リンパ節です」

アン:「もしかすると、すごい頭がいいのかも知れないが(plasmablastic lymphomaという疾患もあります。形質細胞はB細胞の最終分化段階で、Bリンパ球はリンパ節から骨髄に来ているので・・・・どこで増えるかと言われると・・・です)、さっきの答えを聞く限りではたぶん見当はずれなことを言っている気がする(汗」

学生ら:「・・・・」

アン:「いや、この病気を診断するときどうするんだっけ?」

学生B:「骨髄穿刺をします。そこで形質細胞が増えていたり、単一性(monoclonality)をチェックしたりします

アン:「そうすると、増えている場所は?」

学生B:「骨髄です」

アン:「そう。骨髄腫は骨髄球ではなくて(まだ引っ張る)、形質細胞が腫瘍化して骨髄中で増える病気です。もちろん、髄外増殖というのもあるけど、それは学生が覚える必要性ない。それを覚えるなら、今から言うことを覚えてくれ。で、骨の中にある骨髄で増えた形質細胞によってどんな症状が出てくるんだっけ?」

学生C:「CRABです」

アン:「CRABってなに?」

学生A:「貧血と高カルシウム血症と・・・・」

学生B:「腎障害と骨病変です」

アン:「そう。骨髄は骨の中にありますが、この中で形質細胞は腫瘤形成しながら増えてきます。そのため、場所によっては形質細胞100%なんてところもある。ちなみに、骨の中で腫瘤形成しながら増えてくる形質細胞の腫瘍ですが、骨を溶かしながら増えてきます。そうすると骨がもろくなって、骨折しやすくなります骨を溶かしながら増えてくると、骨の中に合ったカルシウムが血中に溶けだして、高カルシウム血症になる。」

学生ら:「なるほど」

アン:「腎機能障害だけど、起こしやすいのはなんだっけ?」

学生C:「BJP型です」

アン:「正しいけど、正確ではないな。BJP型といわれるとIgGやIgAなどを出していなくてBJPだけ分泌していることになる。正確にはIgG型でもBJPを出していれば起こる可能性がある(もっと正確に言うと、国際医療センターの三○先生たちは、剖検例で直接浸潤もしていると報告していたと思いますが、学生が知る必要はないです)。BJPって何?」

学生C:「軽鎖です。ライトチェーン

アン:「そうね。軽鎖のmonoclonalなやつ。軽鎖って小さいでしょう?一般にはIgGとかは糸球体を通過しないじゃない。糸球体の選択指数とかで分子はIgGが来るじゃない。IgGは通過しなくても軽鎖は分子量が少ないから通過しうるのよ。そうすると障害起きそうじゃない?(正確にはこんな話だけではないのですが、学生さんにはこれで十分です)」

学生ら:「なるほど・・・」

アン:「貧血に関しては白血病と違って、ニッチをすべて押さえているわけではないので、血小板減少は来ないわけ。だから正確には骨髄抑制というべきかはわからないけど、貧血が来るというのは覚えておいてね(推測というか、個人的には造血障害ならば先に血小板が低下するはずです。赤血球だけが障害されるとすれば、赤血球の文化に影響を与える因子が出ているのか、グロビン(ヘモグロビンのうちのヘムではないほう)産生を抑えているのかと思っていますが、これまた学生さんには不必要。というか、研究している人いるのかなぁ?)」

学生ら:「は~い」

アン:「ちなみに骨髄腫は今の現状では完治させることができない病気です。そうすると早期発見、早期治療しても…治らない。むしろ症状もなかったのに治療して障害だけ残ったりしたら、患者さんのメリット少ないでしょう?だから、症状が出たとき・・・すなわちDurie and Salmon分類でⅠ期には手を出さないわけだ。(ちなみに、先月新しい基準が論文に出てきたようなので、しばらくすると治療適応に変更が加わると思います)」

アン:「ちなみに他の症状は?」

学生ら:「えと、アミロイドーシスとか抵抗力が低下するとか?」

アン:「アミロイドーシスを調べるための染色法は?」

学生A:「Congo red染色です」

アン:「国家試験的にはそれでOK。ちなみに症状はどんなのがあるんだっけ?」

学生B:「いろいろありますが、心機能障害とか不整脈とか・・・・」

アン:「いろいろって、今心臓しか出ていないぞ?」

学生C:「神経障害とかもあります。」

アン:「そうね。ちなみに皮膚とか、直腸とか、胃や十二指腸から生検することが多いのですが、腸管で障害が起きると便秘や下痢になったりします。腎臓にも障害が来ることが良くあります。国家試験にはせめて臓器くらい覚えておくといいよ」

学生:「・・・・」

アン:「ちなみに、抵抗力が下がるといったけど、どんな感染が増えるの?」

学生:「細菌とか、ウイルスとか・・・」

アン:「漠然としているな(汗。治療に伴って帯状疱疹とか起きている患者さんいるよね。そういうのもあるけど…・。国家試験的にはあまり出さないと思うので、思いつくまま答えてみなよ」

学生ら:「敗血症、肺炎、脳炎、腹膜炎・・・・」

アン:「本当に思いつくまま答えているな(汗。そうね~小児科領域で原発性免疫不全の患者さんとか習わなかった?」

学生:「病気は習いました(習ったっけ…という人間あり)」

アン:「原発性免疫不全で液性免疫不全の患者さんには一般にIgGを700mg/dlくらいまで上げるはずです。その為の治験もやっていると思うよ。それで増えるのは気管支炎や肺炎です。骨髄腫も正常な免疫グロブリンは作れないからね。けど、骨髄腫ではそういう臨床研究はされていないので、免疫不全みたいに正常なグロブリンをいくつまで上げましょうなどということは言われていない。ちなみに免疫グロブリンがかかわりそうな菌は?

学生:「緑膿菌」

アン:「はずれではないが、それどこから出てきた?」

学生:「発熱性好中球減少症の菌だから・・・」

アン:「そうか・・・。答えは莢膜を持っている菌。莢膜はちなみに持っている菌の方が病原性が一般的には高い(肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、髄膜炎菌など)。緑膿菌は普通は日和見感染の菌だから外してほしいのだが・・・。もっと簡単に言うとワクチンのある菌

学生C:「ワクチンですか?」

アン:「だって、ワクチンをうって、抗体を作って体を守らせようとしているんでしょう。そう考えれば、それができなくなったら大変でしょう。もう次の患者始まっているからここまで」

--------------------------------------

だいたい、時間の関係でまずはここまで、次に治療とかになりますね。

 

こんなのを25~30名程度の患者さんでやっております。

 

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学生、研修医さん向け:急性白血病と慢性骨髄性白血病の話

2014-10-26 11:41:05 | 研修医、医学生さん向け

こんにちは

 

昨日は病棟バックアップでした。多分、カンファレンスに注意を100%注いでいるのであれば気付くような内容も、昨日バクアップしていて「これなんなの?」というようなところがあり、いくつか変更していました。

 

さて、100%カンファレンスに注意を注いでいないとはどういうことかというと、うちの診療科のカンファレンスはおおむね3時間半~4時間かけてやっております(7時から夜11時まで)。学生さんには何がなんやらわからないけど、4時間座っていなくてはいけない苦痛の時間・・・(笑)ということで、以前いらっしゃった助教の先生の仕事を引き継ぎ僕が学生に解釈・説明などをしております。

一応、うわさでは「血液なんかよくわからない、難しい診療科」と思っていたのが、かなり理解してもらえているということです

 

あくまで学生さん向けの話なので簡単にわかりやすくするべく話をしているのですが(難しいところは聞かれたら答える)、毎週やっている会話の一部(もしくはいろいろな学生さんがいるので、ごちゃ混ぜになっていると思いますが・・概ねこんな内容の話をしています)を書いてみたいと思います。

 

学生さんが血液内科を理解する助けになればいいのですけど

 

 

---------------------------

アン:「ねぇねえ、今の患者さんは急性骨髄性白血病なんだけど、急性白血病ってなに?

学生A:「・・・・」

アン:「テストではないので、適当に」

学生B:「白血球が増える病気で・・・・」

アン:「白血球が増えるとって、感染でも増えるけどどんな白血球が増えるの?」

学生B:「骨髄球…(と言った学生がいましたw)」

アン:「骨髄球って、正常な分化段階の一つでしかないんだけど…骨髄球が増えるんだっけ?」

学生C:「芽球です。芽球が血液中や骨髄中で20%を超えると急性白血病と診断します

アン:「あたり。WHO分類では20%、FAB分類では30%だけど、じゃあ国家試験的にはどういうのが増えると急性骨髄性白血病(AML)で、どういうのが増えると急性リンパ性白血病(ALL)なんだっけ?

学生B:「骨髄系の芽球が増えると急性骨髄性白血病です」

アン:「・・・あたりなんだけど、それを判断する方法は国家試験的には何で判断するの?」

…沈黙

アン:「なんちゃら染色とか」

学生C:「あぁ、ミエロペルオキシダーゼ染色(MPO染色)です

アン:「あたり。WHO分類だと遺伝子異常が重要になるんだけど、今回はそれはいったんおいておいて、FAB分類ではMいくつから~Mいくつまであるんだっけ?」

学生A:「M1からM6くらいまで」

学生C:「M0からM7です」

アン:「あたり。さっきのMPO染色は国家試験的にはAMLとALLを見分ける染色だけど、染まらなかったらすべてALLなんだっけ?

学生D:「そういういいかたされているので、違うと思います」

アン:「するどい。その感覚は試験では大事なんで。じゃぁ、さっきのM0からM7までのどれが染まらないの?」

学生B;「M0は染まりません。M7とか・・・ 」

アン:「OK。それだけでいい。今の事がわかっていれば、ひっかけ問題にひっかけられないですむから。さて、ここから大事ですが国家試験に必ず出る急性骨髄性白血病があります。M3, 急性前骨髄急性白血病(APL)です。これってどんな病気?知ってることを上げてみて?」

学生ら:「faggot細胞、DIC・・・

アン:「何番と何番の転座?」

学生:「15番と17番です

アン:「OK。PML-RARAというやつね。RARA(レチノイン酸受容体α)と転座しているから、ある薬が特効薬になりました。それって何?」

学生C:「ATRAです。」

アン:「あたり。いいねぇ。このAPLというやつはATRAが出るまではDICがすごくてね。一番治療が難しい白血病だったんだ。抗癌剤で壊すとDICを起こす物質が白血病細胞から出てくる。実際、うちでこの5年間で15~20人くらいAPLきている(今年もすでに3名治療しています)みたいだけど、亡くなった患者さんはここに搬送されてくる途中で脳出血起こした患者さんとか、前医で2週間くらい入院していてうちについた(夕方過ぎ)その夜に脳出血とかね。ただ、治療を始めることができればATRAが出てきてからは70%の患者さんが抗癌剤だけで治るようになってきた。ATRAは前骨髄急で分化がストップしているのを乗り越えさせ、成長した異常な白血病細胞は老化して(正しい表現ではないです。apoptosisが正しい)、DICを起こさないまま死んでいきます。ただ、このATRAの副作用で有名なものは何?」

学生B:「分化症候群、レチノイン酸症候群です」

アン:「そう。白血球が増えていくとレチノイン酸症候群のリスクが上がる。論文によるけど、重症のやつを発症すると死亡率は5%にもなる。だからAPLの初回治療(寛解導入療法)はDICと分化症候群のリスクの分散をしながら行うわけ。あと、もう発売されて6年になるから試験にも出ると思うけど、別の薬があるよね?何かわかる?」

学生:「・・・」

アン:「亜ヒ酸です。ヒ素ですね。これはATRA以上に有効なようだとわかってきて、再発難治にしか適応がなかったのが、JALSGの治験では地固め療法から使用を始めている。教科書にも書いてあるでしょう?」

学生:「ありません。少なくとも僕の教科書にはないです」

学生の教科書を探す・・・・(先週の話です)

アン:「ないね(汗」

しばらくして・・・

アン:「あそこにbcr-ablというのが出てきたけど、あれって一般には何の病気の遺伝子異常ですっけ?」

学生C「慢性骨髄性白血病(CML)です」

アン:「どんな病気?」

学生:「白血病細胞が増えて、急性転化する病気です」

アン;「間違いではないけど、白血球は増えて、赤血球や血小板はどうなると思う?」

学生B:「減ります」

学生C:「血小板は増えるか変わらない、貧血は起きない」

アン:「すごいね。じゃぁ、bcr-ablは何しているの?」

学生:「・・・・・」

アン:「じゃぁ、さっきの急性白血病に関して書いたところを出してみて。こいつらは芽球が増えます。APLだと前骨髄球までがふえます。さっきも白血球が増える、つまり芽球が増えるから増殖が亢進しているのは間違いないよね?」

学生:「はい」

アン:「白血球は芽球(赤ちゃん)→前骨髄球(幼稚園)→骨髄球(小学校)→後骨髄球(中学)→・・・・(略)と分化(成長)しているわけだけど、急性白血病では赤ちゃんである芽球ばかり増えるわけ。APLだと幼稚園児までが増える。そのため、白血病裂孔と言われるものができるわけ。CMLでは?」

学生:「慢性骨髄性白血病の場合は白血病裂孔はありません

アン:「そう。それはすなわちどういうこと?」

学生:「・・・」

アン:「質問を変えるか。bcr-ablは増殖促進に働いているのか、分化を阻害する方向に働いているのか?」

学生:「分化を阻害する・・・」

アン:「そこでそう来るか、お前(汗。増殖促進です。だから、白血球も赤血球も血小板も増えるわけです。白血球の分化に影響は出ていないので、いろいろな奴が増えます。普通はあまり出てこない好塩基球や好酸球とかが増えていたら、疑いますね。ただ、放っておくと増殖シグナルは出っ放しでしょう?他の遺伝子異常が入りやすいじゃない。だって、本来は増殖をストップして異常な遺伝子を修復しなくてはいけないのだから」

学生:「なるほど・・・」

アン:「そうすると、分化を阻害するような異常が加わって急性転化、急性白血病になってしまうわけ。わかった?」

 

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だいたい、こんな話を毎週しています。珍しい患者さんが入院すると話もまた別の方向で盛り上がりますが、基本的には国家試験を見据えた10人いたら8人が解けるようになるはずの知識をカンファレンスの合間に教えています

 

他の疾患領域も説明していますが。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また

 

 

コメント (6)
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