新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

内科救急ただいま診断中:ちょっとだけ宣伝(笑

2019-06-22 06:39:32 | 医学系

こんばんは

 

昨日の研究会や飲み会に参加した際に何人かの後輩から「3冊目の本も買いましたよ」と言っていただきました。それ以外に緊急入院で他の病棟に患者さんを入院させた際においてあったのでびっくりしました(笑

看護師さんが買ってくれたそうです。

 

外勤先の看護師さんも「使えそうだったので買った」と言っておりました。

 

ということで、ちょっとだけ3冊目の本の宣伝です。

 

疫学情報からは「ぐるぐる回るめまい」と患者さんが言っていたら「回転性めまい」です。めまいの55%は回転性めまいですが、命に関わる中枢性のめまいかが重要になります。脳神経系の症状があるか、めまいの発症の仕方や期間、めまいの持続時間などを確認します。これもほぼ問診です。

 

最後に診察になりますが、ここは看護師さんは飛ばしてもいいわけです。めまいの状況を医師に報告する際に、ポイントをつかんで報告できれば良いわけですから。

原則としての部分は救急搬送に色をつけても仕方がないということで、完成版には「回転性めまいで中枢神経症状がある」というようなところに色がついてますね。

あとは他の兆候もそうですが、基本的に日本と欧米の頻度、救急外来と一般外来での頻度などを論文から拾ってまとめてあります。頻度がわかっているだけでもかなり診断には役立ちます。この症状で、この状況(一般外来の胸痛ならば・・・とか)ならこの疾患が一番可能性が高い・・・など。

 

ベイズの定理の最初の段階ですね。その情報(状況、国別の頻度)が書かれている本があまりないので作ったというのが本音です。そのためこの本は全ての医療従事者に役立つと思っております。

で、フローチャートでどんな病気が考えられて、どういう対応をすべきかということが書いてあります。内科救急ですので外傷は書いていませんし、診断中ですから治療に関しては適切な診療科に紹介するところまでを書いています。・・・後半に専門医に紹介する必要はないだろうと僕が思っているレベルの処方例は書いてありますが、それは別項目でまとめています。

 

これはあくまで初校の時にこんなデザインでどうか・・・という確認で送られて来たPDFなので、完成品はもう少し良い状況になっていると思います。そこから見直しているので。

 

この本の宣伝ポイントは「ほぼ問診でどの可能性が高いか症候ごとに判断できる」ことです。しっかりと話を聞くことができれば良いので、看護師さんや救命士さんにも使っていただけると思いますし、むしろ使って欲しいなぁと思っているところです。

 

診断のステップは基本的に患者さんの症状がどうかですので、ここが間違っていると話が変わって来ます。患者さんの問診がきちんと行われれば診断確率は見えてくるはずです。

 

そういうことで、ちょっと宣伝をさせていただきました(笑

 

内科救急 ただいま診断中! mini
渡邉 純一
中外医学社

 

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MMR後のCML治療:ISがどんどん下がらなくても焦らずに

2019-05-31 05:50:55 | 医学系

おはようございます。

 

先日も講演会の話をいただき、来月もweb講演会のお話をいただき、その準備でパタパタしております。

それが終わったら7月の話がきているので、その合間に4冊目の本の準備や論文をまず一本書こうと思っていますが、なかなか準備ができず。

 

主治医になっている患者さんの数も増え・・・(汗

先日2人退院したと思ったら2人入ってきて〜。さらに今日、明日とまた入院があるので、入院患者さんの人数もだいぶ増えました。

 

さて、先ほどコメントでIS 0.01%が0.02になったことの不安の話がありましたので、少しだけこの辺りのことを書いてみようかと思います。

時間の関係でさらっと。

 

これはCML治療でのαスロープ、βスロープというやつです。最初の腫瘍量が多くてよく増えているときは、チロシンキナーゼ阻害薬を入れることで良く腫瘍は死んで行きます。最初の急激な低下αスロープです。

 

ただ、MMRを達成するとこれが緩やかになります。CML-Ampの時代も「Ampが50未満からなかなか下がらなくなった」と思っていたことがありますが、ゆっくりじわじわと下がってくることが多いです。

 

このゆっくり下がる段階がβスロープと言われています。僕の感覚だとIS 0.02あたりからはゆっくりです。一気に下がっていく人もいますが、昨日たまたま見ていた昨年初診できたCMLの方のカーブを見ているとIS 100%前後から3ヶ月で4名とも1%前後でしたが、そこからは次の3ヶ月で0.01-0.06%の間です。

 

このまま下がりトレンドで行く人もいますし、フラフラする方もいます。ただ、上昇傾向になった(僕の場合は3point確認します。明らかに増えたかもと思ったら翌月もIS測ります)場合は注意が必要です。

 

ということで、MMR未満になると0.01前後でフラフラすることはありますので、明らかに上昇傾向にならなければ焦る必要はないと思っています。IS 0.01%って昔でいうCML-Ampの5前後(検出感度ギリギリ)です。昔だったら「すごくいい状態ですね。このまま頑張りましょう」と言われるレベルです。

 

参考になれば幸いです。

 

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ノーベル医学・生理学賞受賞、おめでとうございます

2018-10-01 22:50:24 | 医学系

こんばんは

 

今日も気がついたら20時過ぎておりました。

 

「お腹が空いた・・・」

 

と、最近よく呟きます(笑

 

さて、帰宅してニュースを見たら、ノーベル医学・生理学賞のニュースが入っておりました。素晴らしいですよね。

 

ただ、この記事を読んで・・・ふと「STAP細胞・・・」と思ってしまいました。

「ネイチャー誌、サイエンス誌の9割は嘘」 ノーベル賞の本庶佑氏は説く、常識を疑う大切さを

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181001-00010009-bfj-sctch

10/1(月) 20:40配信

 

 

ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑・京大名誉教授が10月1日夜、記者会見で受賞の喜びを語った。本庶氏は自らの研究に対する姿勢を問われると、好奇心と「簡単に信じないこと」の重要性を強調。「(科学誌の)ネイチャーやサイエンスに出ているものの9割は嘘で、10年経ったら残って1割」と語り、自分の目で確かめることの大切さを説いた。【BuzzFeed Japan / 吉川慧】

(以下略)


本庶先生、受賞おめでとうございます。

心からお慶び申し上げます

 

記事にある文章で・・・本当に9割も嘘だったら困るのですが(Natureとかに出ているのを参考に色々考えますし)、実際にはうまく論文のする書き方とかがあるのでしょうね。また、残らないのだとすれば証明することが難しいのだろうなと思います。

 

さて、僕も研究など色々やっていきたいとは思っておりますが、どちらかというと現場の医師になっております(笑

 

基礎研究も嫌いではないのですが、臨床と両立させにくい状況になってきたかなと思っています。

現場から少しでも患者さんの役に立てるように頑張りたいと思います。

 

 

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壊死性リンパ節炎の話:簡単な紹介用です

2018-09-12 05:28:03 | 医学系

おはようございます。

 

月曜日は当直でした。当直の日にいくつかの仕事をするようにしておりますが、患者さんの対応などもあり思うようには進みませんでした。あと、外来の予習など(代診する関係で)。

 

患者さんの顔と名前が一致し始める、3〜4回目からはいらなくなると思うのですが、まだどんな患者さんが来るのか確認しないと・・・という感じです。特に委員会や会議などに外来後に出席する場合は。

 

壊死性リンパ節炎の話がコメントでありましたので、少し書きたいと思ったのですが、昨日は眠さに負けました。少し紹介程度に書いてみたいと思います。

 

 

壊死性リンパ節炎は若い女性に多い病気で首のリンパ節が腫れてくる病気です。意外と硬めのリンパ節が数珠繋ぎになってくるので、悪性リンパ腫が疑われることはよくあります。

 

ただ、一般的には痛みを伴うこと、右か左の一方であることが多いことなどから専門医がみるとある程度推測可能だと思います(僕は診断確定のために生検したことは多分ないです。予測通りの臨床経過で改善されています)

 

壊死性リンパ節炎の9割は頸部のみのリンパ節腫脹ですが、1割ほどの方が全身のリンパ節が腫れるとも言われています。

 

こんな感じの経過になります。

 

紹介程度ですが、少しお役に立てればと思い記事にしました。

 

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血栓症の話:エコノミークラス症候群などに気をつけて欲しい人たち

2018-01-05 07:16:55 | 医学系

おはようございます。

 

昨日は大学同期と新年会をしておりました。短い時間でしたが、楽しく過ごせました。

 

今日は3冊目の本の打ち合わせがあります。この本は「僕がこんな教科書があったら良い」と思っている本を自分で作ろうと考えています。

 

僕が欲しい本であれば、多くの方の役に立つだろうと思っております。それを3月末くらいまでに形だけでも仕上げられれば、上々かなと思います。

 

さて、今日はとりあえずこの記事を紹介します。ダイアモンドオンラインです。

 

健康なのに急死も!「血栓症」は予防に勝る手立てなし

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180104-00154339-diamond-soci&p=1

1/4(木) 6:00配信

 

● 心筋梗塞や脳梗塞になる前に 「血栓症」が決め手になる

 「血栓症」とは何か? と尋ねられて即答できる方はそれほど多くはないでしょう。血栓という言葉はよく耳にするものの、それに関わる病気に関しては知っているようで知らないという方が少なくないと思います。

 一方で、加齢と共に発症する血管の病気としての「動脈硬化」は、生活習慣病の一つとしてよく知られています。そして動脈硬化は、高血圧、糖尿病や脂質異常症など他の生活習慣病が絡むとますます悪化して、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる怖い病気につながることも広く認識されています。

(中略)

血栓症は、AさんやBさんの(1)誰にでも発症し得るもの、Cさんの(2)生活習慣病が原因となるもの、そしてDさんの(3)加齢と共に発症しやすくなるもの、の3つのタイプに大別され、それぞれ予防法が異なります。

 (1)のタイプ:肺血栓性塞栓症の予防

 これは、下肢の深部静脈にできた血栓が飛んで肺動脈を詰まらせることによって生じる
ものなので、下肢に血栓が発生しないようにしなければいけません

 脱水になったり血液の流れが滞ると血栓ができやすくなるので、予防法としては水分の補充をしっかりと行う、下肢の筋肉を適宜動かす、座りっぱなしや立ちっぱなしを余儀なくされる際には足に適度な圧力のかかる弾性ストッキングを着用するなどが肝要です。

 罹患人口が多い下肢静脈瘤も血流の鬱滞(うったい)を促しますので、下肢静脈瘤は早期に治療をしておくことが大切です。

 (2)のタイプ:アテローム性血栓症(心筋梗塞、脳梗塞)の予防

 言うまでもなく、動脈硬化につながる生活習慣病の管理、すなわち高血圧、糖尿病、脂質異常症にならないようにすることが大切です。これら生活習慣病が改善されないと、動脈の内側にアテローム性プラークがどんどん汚くこびりついていくことが分かっています。

 内臓脂肪が生活習慣病の主原因とも言えますので、アテローム性プラークによる血栓症を予防するには、体重管理すなわち食事運動療法が極めて大切になります。過食、塩分摂取過多、喫煙、運動不足、野菜の摂取不足、ストレスなどを避けることが肝要です。

 (3)のタイプ:心房細動による血栓症(広範囲の脳梗塞)の予防

 年齢を重ねると一定以上の方に心房細動が発症することがわかっています。心房細動は大きな血栓を作ることが多いので、それが飛んでしまうと広範囲の脳血管が閉塞して高度の脳梗塞を来すリスクがあります。

 心房細動が発症しても自覚症状は殆どないので、定期検診などで心電図検査を毎年受けて心房細動が発生していないか確認することが大切です。もし、心房細動が発生していたら、抗凝固薬を適切に使用することで脳梗塞を来す血栓の発症をほとんど抑えることができます。

(以下略)


文章の書き出しから「何を書いているのか?」と一瞬思いました(笑

症状が出たから「血栓症」です。症状がない状況ならば「動脈血栓」「静脈血栓」がある・・・という書き方になりますので、最初の書き出しは「血栓」が決め手になる・・・でしょうか。

 

ということで、血栓症の話題ですが、少しだけ記事におまけを加えてみようかと思っております。

 

記載している血栓症。血栓というのは止血の最終段階です。それが起きなくて良いときに起これば、病気として「血栓症」と呼ばれます。

 

血栓症は動脈の血栓症(心臓から血液を送り届ける動脈が詰まれば、血液や酸素が来なくなり臓器が死んでしまう=脳梗塞、心筋梗塞、その他)と静脈の血栓症(有名なものは下肢静脈血栓症からの肺動脈塞栓症=エコノミークラス症候群など)に大きく分けます。

 

大きく分ける理由は起きるメカニズムが異なるからです。

動脈血栓は流速が早い乱流によって起きるため「血小板」が中心的な働きをします。そしてアテローム血栓が生じます。動脈硬化などによる動脈血栓の予防は「抗血小板薬」です。脳梗塞では低容量アスピリンなどで予防をします。血液疾患で脳梗塞が起こりやすい「真性多血症:僕の真性多血症の説明(患者さん向け、2017年版)」「本態性血小板血症:僕の本態性血小板血症に関する説明(患者さん向け、2017年版)」の血栓予防はアスピリンです。

 

動脈血栓が起きる原因としては記事の中にもありますが、動脈がダメージを受け、デコボコが生じると乱流が起きるようになります。その結果、血栓がじわじわできてきて最終的に詰まります。あるタイミングで一気に詰まることもあるので、注意が必要です。

 

だって、血管内皮が「血の詰まり(血栓)」が起きないようにコントロールしているのに、血管にダメージが起きてコントロールする能力は低下し、血栓の起きやすさは高くなるわけですから当たり前の話です。敵の攻撃力上昇、味方の防御力低下という「最悪パターン」です。

 

これに関しては「生活習慣病」が主因ですので、生活習慣の予防が重要です。ただし、先ほど書いた血液疾患や抗リン脂質抗体症候群(血管内皮細胞がダメージを受けるので、動脈や静脈の血栓症が起きやすくなります)など病気で起きるものもあります。

 

一方、静脈血栓症や心房細動による脳梗塞の予防は抗凝固薬が使用されます。静脈は流速が遅く、血流うっ滞と凝固系活性化が原因と考えられているからです。血流うっ滞が原因ですので、ずっと寝ている(長期臥床)やエコノミークラス症候群のように下肢をうごかせない状態、慢性炎症やがん患者さん(がんの患者さんも凝固が高まります)などリスクがいくつかあります

 

心房細動や下肢静脈などで血栓ができ、それが血流に乗って飛んだ先で悪さをするものを「塞栓症」と言います。塞栓症は血栓ができた場所と症状が起きた場所が違うものです。これは血栓ができても気がつかずに、大きなイベントが生じてから気が付かれるので怖いです。

 

この凝固系を抑えるものの中にプロテインSというものがあります。実はこの異常は日本人に比較的多く、1~2%(ある論文だと1.8%など)で凝固を押さえる力が弱い日本人がいます。

生まれた時から弱く、小児科領域で治療を受けている比較的重症の患者さんもいらっしゃいますが、全く気が付かれない「SNP(一塩基多型:病的な異常ではないけど、質の異常が起きてしまうマイナーグループだと思ってください)」の方が多いです。それを含めると1~2%になります。

 

下肢静脈血栓症の2割くらいの患者さんでこのSNPは見つかるとされ、要するに静脈血栓症が起きやすい人です。そんな方々が日本人には100人に1人くらいいるわけです。

 

そんなことを言われても困ると思いますので、僕が言いたいことはただ一つ。

 

明らかなリスクがないのに家族や兄弟で静脈血栓症(下肢静脈血栓症とか肺動脈塞栓症など)が起きた方(特に30〜40代とか若くして)がいましたら、私も少し他の人より静脈血栓のリスクが高いかもしれないと思って、

飛行機(足を長時間動かさない乗り物など)に乗った時は

「アルコールを避ける」

「水分を少し多めにとる(病気で数日寝込んだ時なども)」

「脱水などに気をつける(夏場も)」

「ふくらはぎなどを少し動かす」

など気をつけて欲しいというだけです。

 

おまけで・・・当たり前ですが心房細動の方はきちんと薬を飲んでくださいね。

 

と、この記事を見て少し加えたくなったので記事にしました。

 

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抗がん剤治療後の妊孕性(子供を産む能力)について

2017-12-20 20:23:17 | 医学系

こんばんは

 

今日は午前中、午後と出張医療教育に精を出しておりました。いつも「聴く人にとって意味がある話を」とは思っておりますが、最近話をしている内容は結構うなづいたり、メモを取る人が多くいるので嬉しい限りです。

 

将来、聞いてくださった方の役に立つのではないかと期待しています。

 

さて、最初に先ほど中外医学社のホームページに行ったのですが、先日の血液学会で売れた本のランキングに僕の本が入っていました。

http://www.chugaiigaku.jp

1位、2位は木崎先生の編集している本ですし、4位は金倉先生の編集している本ですので、その間に入っているのは嬉しい限りだと思っております。また、現場で立ち読みした先生が買ってくださっているということですので、僕は本当に嬉しいです(中外医学社の売上情報は知らなかったので)。

 

次にこのブログに来る方の中に「抗がん剤」「化学療法」+「子供」、「妊娠」で検索している方がいるのに気がつきました。色々ご不安があって調べられているのだろうと思いまして、軽く書いてみようと思います。ただ、他に良い記事がいっぱいありますので、そこへのリンクを貼らせていただきますが・・・。

 

まず、血液疾患には様々な治療がありますが、リンパ腫の標準治療や通常のAMLやALLの治療ではリスクは低いとされています。

しかし、一般的な話ですが、年齢が高くなればなるほど性線機能障害が出る確率は高くなると言われています。

 

僕は血液疾患では探しきれませんでしたが、乳がんでは「30歳未満では大きな影響は受けない」とされている抗がん剤治療が「40歳以上で治療を受けると90%以上で性線機能不全(閉経)する」という記載があるものもあります。

 

ですので、確かにいくつかの論文にあるように上記のような治療(骨髄移植を除く)では、若年者での妊孕性の危険は少ないかもしれません。ただ、若くても0にはなりませんし、年齢が上がれば上がるほどリスクは上がると思います。

 

僕の担当した患者さんでは20代の女性は抗がん剤治療中に妊娠してしまい、堕ろすかどうかの相談をされたことがあります。「一般的に抗がん剤治療中は胎児異常の可能性があるので、妊娠を回避すべきというものがあります」と、お伝えしたところ諦められたということがありました。

(国立がんセンターの一般向け情報ページにも記載があります)

https://ganjoho.jp/public/dia_tre/attention/chemotherapy/side_effect/sexual_dysfunction.html


もちろん、妊娠後半に見つかる場合は胎児への影響は少ないと思うのですけど(やりようはある)、器官形成期などに抗がん剤に暴露されているのは、胎児のリスクが低いとは言えないのです。


逆にリスクが少ないとも言われているAMLの治療でも、40歳くらいの女性では「性線機能障害になる可能性が高く、半分以上と思ってほしい」旨をご説明して治療に入ったことがあります。

 

ですので、一概には言えないのですが、20代であればリスクは比較的低いかもしれませんし、自然に閉経のリスクが出て来る40歳に近づけば性線機能障害で妊孕性が落ちる危険は高くなると言えると思います。

 

時間があって(白血病はあまり時間がないですが、リンパ腫などですぐに治療に入らなくても少しタイミングがずらせるタイプ)、妊孕性の相談などをするのであれば、主治医の先生と婦人科の先生によく相談する必要があると思います。

 

参考資料として

国立がんセンター がん専門相談員向け手引き

http://www.j-sfp.org/ped/dl/teaching_material_20170127.pdf

 

「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究班」のPDF 

http://www.j-sfp.org/ped/dl/Cancer_treatment_brochure_F.pdf

 
などもご確認いただければと思います。参考になれば幸いです。
 
 

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血液内科 ただいま診断中!クリエーター情報なし中外医学社
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梅毒の話:症状がなくて感染力が高い期間が長いのが問題

2017-12-10 12:38:19 | 医学系

こんにちは

 

風邪が治りきらずに、今日はおとなしく家に閉じこもっている状況です。

ということで、朝からブログの記事を書いたり(予約投稿分)、たまたまgooの医療系の相談のところを見たので、コメントを残したりしておりました。

あまりyahooの知恵袋やGooの「教えてGoo」とかは見ていなかったのですが、色々と不安なことを相談している方もいるのだなと思い、わかる範囲でアドバイスを書いて見ました。少し役に立てば良いのですが。

 

で、昼ごはんを食べて今に至ります。

 

昼食後にコーヒーを片手にYahooを見ていたら梅毒の話が書いてありました。僕も職場とかで注意喚起はするのですが(明日医療ニュースを出す予定)、ブログにも簡単に記事を書いてみようかなと思いました。

 

まずは記事の紹介です。

梅毒、20歳代女性で急増…潰瘍や発疹が消えても菌増殖

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171208-00010002-yomidr-sctch&p=1

12/8(金) 13:10配信

 

 性感染症の梅毒の患者が急増しています。近年は患者数が年間1000人未満で推移していましたが、この数年で急増しており、今年は既に5000人を超えました。早期に診断をつけ、薬で治療し、病気を広げないことが大切です。(佐々木栄)

なぜ起きる?

 「梅毒トレポネーマ」という細菌に感染して、発症します。主に性的接触を通じて菌が粘膜や皮膚の傷から入ります。口や肛門からも感染します。

 国内では終戦直後、患者が年間20万人を超えていましたが、1990年代前半には1000人を切りました。でも、2013年に再び1000人を超え、今年は11月19日時点で5053人。5000人を超えたのは44年ぶりです。

 患者は20~40歳代の男性に多く、以前は男性の同性間での感染が目立ちましたが、今は異性間での感染が増えました。20歳代の女性の増加も顕著です。専門家の間では、性産業に従事する女性と客の男性に広がっていると推測されています。大都市に集中していますが、地方でも増えています。

(以下略)


ということで、簡単に書いてみます。

 

梅毒は記事の中にもありますが、トレポネーマという菌が原因です。

梅毒の菌に感染すると3週間後くらいに「初期硬結」と呼ばれるしこりができ、硬性下疳と呼ばれる潰瘍ができたりします。問題は痛みがないため、放置する人がいることです。

 

ほっとくとせっかくのチャンスなのに診断されなくなります

 

で、この初期硬結とか硬性下疳というのはしばらくすると勝手に消えます。しかし、梅毒は治っていなくて、症状が消失しただけになります。

 

多くの人は多分、「あー、治った、治った。よかった、よかった」と安心しているかもしれません。ところがこの時期は梅毒の菌は増えている最中で、感染力も高い時期です。

 

次に3ヶ月くらいするとバラ疹と呼ばれたりするかゆみや痛みのない皮疹が出てきます。これまた症状がないので放置する人がいますが、これは梅毒のトレポネーマが全身に血液に乗ってばらまかれた合図になります。

 

初めは感染した局部などを中心に症状があった(I期梅毒)わけですが、血液に乗って全身病になってしまった。これがII期梅毒です。バラ疹が出ている部分には梅毒の菌がいるとされていますし、他にもいくつかの症状が出たりするわけですが、これまた自然に症状が目立たなくなります

 

目立たなくなると「あ〜、治った、治った。よかった、よかった」と思うわけですが、これまた難しいところです。

 

この辺で血液検査をすると梅毒が感染している検査結果がある人が6~7割です。逆に3割は本当に治っているかもしれませんが(治療が必要ない)、他は潜伏しているだけです。感染力もII期梅毒までは高いと言いますし、油断はできません。そんな潜伏梅毒(無症候性梅毒)があります。その人に症状がないからといって、梅毒があるかないかはわかりません。で、潜伏期間が長い人もいれば、そのまま進行する人もいて・・・という感じだと思います。

 

そういう理由で、おそらくですけど・・・「もっと多いのだろうな」と思っています。

 

読売新聞の記事の2枚目にコンドームのことが書いてありますが、何かの論文で梅毒のリスクを半分に減少というのがあったはずですが、結構高い確率で感染するのを半分にしただけということで、効果は限定的と言われています。ですので、うつさないようにするにはしっかり治療をして、治療終了までは性交渉などは避けること・・・になるわけですね。

 

梅毒の面倒なところは「無症候性」の期間が長くて、その期間の感染力が実は高いということだと思います。気がつかないうちにパートナーに感染させてしまっている。自分は治ったつもりでも、治っていなかった・・・とかで。

 

ですので、梅毒の記事を紹介する一番の理由は、「みんなで気をつけてさっさと鎮圧するに限る」ということでしょうか。気づかない人が多いと、それだけ広めてしまう可能性が高いので。

 

と思ったので、僕もこの記事を作成しました。

 

簡単ですが、終わります。

 

 

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ホジキンリンパ腫についての質問より:ついでに生存曲線の見方

2017-10-03 05:03:25 | 医学系

おはようございます。

 

先程、コメントでホジキンリンパ腫に関してのコメントをいただきました。僕の本のデータがありますので、データをアップさせていただきました。

 

使用した論文は画像の中に記載されていますので省略します(JCO 2012)。ホジキンリンパ腫の国際予後スコアが古いデータ(NEJM 1998)だったため、最近の患者さんではどのような成績になるのかを示した論文になります。

 

 

上の表はそれぞれの論文で示されている生存率(国際予後スコア:IPSごと)、下の図はJCO 2012で示されている生存曲線になります。今、画像をアップして間違いに気がつきましたがPFSではなく、EFSですから「無イベント生存率」なんですが、PFSが多かったからか無病生存になっていますね(汗

 

これ3校だから・・・直しているかな?帯広に帰ったら確認しよう・・・(汗

 

話を戻しますと・・・イベントフリーなので、イベント(多分死亡や合併症、その他のイベント)がない生存期間を示しています。

右は全生存期間(生きている患者さん、再発してもOK。逆に再発以外で無くなるのもカウントされる) 

 

下に下がるほど患者さんの数が減っている(再発や死亡)ことを示し、それは100%(1.0)から0.0(0%)までで示しています。

 

最初のあたりで左のグラフで下がっている患者さんがおりますが、これは再発(というよりは合併症や難治:寛解に至らない、治療抵抗性)や死亡が初期に生じているものを示しています。

 

治療が終わってからも初期(2年くらいまで)は下がっていますが、これは再発していることを示しています。しかし、2年以降はかなりなだらかになり、再発率が低下していることを示しています。

2年以降の再発は少なく、5年以降の再発(イベントなので、合併症か何かかもしれません。論文を再確認はしませんので、すいません)はほとんどなく、質問にあった7年目の再発はまず考えにくいです(妊娠OKだと思います)

 

一方、右のグラフ(と表)からわかることもあります。再発した患者さんがどの程度治療でレスキューできているかということです。全生存率はどういう状態(再発、治療中)でも生存していればグラフは下がりません。一方で、再発以外に心筋梗塞などで亡くなっても、グラフは下がっていきます

 

わかりやすいのでIPS 4点や5点以上の生存曲線を比較してみます。EFSは4点では70%前後、5点以上では60%前後ですが、OS(全生存率)は4点では85%、5点以上では67%前後となっています。5点以上の人は再発後の生存率に改善が少ないため、再発した後の改善がこの時点では乏しいことを示しています。もちろん、背景因子(ホジキンリンパ腫は若年者は限局期が多いため、IPSが高い=45歳以上の可能性が高い・・というのもあります)があり、サルベージの治療がしにくいということもあるかもしれません。

逆に4点の方はOSは15%上昇しています。基本的に再発しても半分の方は完治に近い状態に持ち込める(治療が有効)ということを示しています(まだ、再発してからは5年以上は経過していませんのでなんとも言えないですが、多分大丈夫と思います・・・2年は経過してると思うので)。

 

このように再発後の治療反応性などの推測も可能で、それを見ながら次の手をどうするか、再発しないように手を打つべきか・・・などを個人個人に合わせて対策を決めます。なお、これは統計学的な資料でしかありません。もし、IPS5点以上の方が再発したとしても、全体と個人は違います。全てのデータで言えることですが、全体のデータがどうであっても患者さん個人がうまくいくかどうかが重要です。

 

昔、ある予後不良因子を複数持っている患者さんのOSがかなり低いことがわかっていました(論文上まとまったデータがなく、個別の報告を見ても誰もうまくいっていない)が、どうにか治療法を変えることで寛解に持ち込み、そのまま移植に突入しました。もう7〜8年経過しますが、無再発です。このようにデータはデータ、個人は個人と思っていただければと存じます(都合よく考え、前向きに治療は行う方が結果もついてくるように思います)。

 

この記事はいただいたコメントを見て作成したものですが、少しでも多くの方の参考になれば幸いです。

 

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個々の患者さんに治療を合わせるために:話さないとわからないですよね

2017-09-04 18:58:14 | 医学系

こんばんは

 

今日は土曜日の仕事の代休です。朝から教科書を書いたり、走ったりしております。

 

今書いているのは医学生向けなのですが、1ページに1項目を基本として作成しています。過去に書いたものを見直したらこんなことものが出てきました。

 


さて、MDSの治療の基本ですが、第一に知っておくべきことがあります。それは完治させる方法が「同種移植」しか現在は存在しないことです。薬で簡単に治る、副作用はほとんどなく延命可能であれば治療はあまり困りません。完治させるには「致死率」が高い危険を伴う治療しかないこと。それがMDS治療の難しさでもあり、やりがいでもあります。

 

高リスクMDSであり、同種移植が可能であれば、移植を検討するはずですから治療選択肢は困りません。同種移植(完治)ができない高齢者に多い疾患ということもそういう意味では難しいところです。

 

完治できないのであれば治療を開始するかどうか・・・ということも検討材料になります。症状がなく、本人が困っていないのに副作用の強い治療を行えば、病気を見て患者さんを診ていないということになります。高リスクMDSであれば普通は血球減少がある(症状もある)はずですが、低リスクMDSと診断したものの好中球は1000/µl以上あり、貧血の症状もなく、血小板も8万/µlくらいあるので出血リスクも低い。ここで何らかの治療を開始して、患者さんに副作用が出たら信頼関係を失うことになるかもしれません。患者さんの症状はどうか、予後はどうか、それを含めて標準治療はどうなるのかを示しながら、患者さんと治療をどう行なっていくか決定すること(個々の患者さんに合わせる)が重要です。

 

このページは概念的なもので、国家試験には出ません(おそらく)。ただ、臨床医としての考え方の基本的なものだと思っています。


自分で言うのも何ですが、こう言う話を学生のころは聞いたことはなかったです。経過観察も選択肢に入ることは教科書にも書いていますが、軽症のうちに治療したらリスクが少なく治る病気であれば治療しますものね。

考えてみたら当たり前だけど、さっさと治療をしないのか・・・。他のがんであれば症状が出る前に治療するのが当たり前ですから(もう少しすると前立腺癌とかは変わるかもしれませんが)、こういうことを教えるのは血液内科でなくてはと思います。

 

医者をしていて「患者さんを診ている」と思うのは、全ての知識を動員して統計学的なことだけではなく、患者さんに合わせた治療を行うために、患者さんや家族と協議している時だと思います。あとは患者さんが困っている時に話を聞く、何か予測と違う変化があれば対応する(予測通りならば、予定通り実行する)と言うレベルです。大きな方針を決定する場所でいかにきちんと話し合うかは医師としてのやりがいでもあり、患者さんや家族との信頼関係を構築するためにも重要です。

 

僕はやはり医師が全てを決めるのではなく、患者さんや家族と治療方針を決める場が重要だと思っています。医師は今の時点で最も良いと思う治療、多くは標準治療を提示します。その理由も説明しますし、他の選択肢も簡単には言いますが、ある程度はベストと思われる選択肢を選べるようにします。

 

しかし、きちんと話をしていたら「患者さん、もしくは家族が難色を示している」ことがわかる時もあります。受診頻度のこともありますし、お金のこともあります。治療の副作用に対する不安であることもあります。話せばそれを解決することができる時もありますし、標準治療以外の方法、もしくは近くの病院への紹介などという方法もあるかもしれません。

 

話し合いましょうという姿勢は患者さんや家族にもわかると思います。そうすれば色々なことを患者さんや家族が話をしてくれます。それがなくては実は患者さんに対する対応が医者もできません。知識があっても、その知識を役立たせる情報を引き出すためには患者さんと話さないといけないからです(他の診療科でも診ている患者さんがそちらの主治医が怖くて相談できず、僕に相談することもよくありました・・・。で、僕が処方(対応)して、向こうの治療に関連する症状であれば僕からそちらの医師にさりげなく連絡など)。

 

そういうことを学生さんに少しでも知ってほしい・・・という1ページになっております。伝わるかはわかりませんが(笑

 

 

医学生が手に取ってくれるほんになれば良いなぁと思います。

 

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抗菌薬の話

2017-08-18 08:36:13 | 医学系

おはようございます。

 

今は2冊目の本の執筆中です。昨日、血液学会奨励賞の落選がわかりましたので、改めて自分のできることに集中します。

 

一冊目の本はamazonの「血液・輸血学 欲しい本」の1位を今もkeepしております。何名かの先生から「買いました」とか「わかりやすかった」と言っていただきました。ありがとうございます。

血液内科 ただいま診断中!クリエーター情報なし中外医学社

 

さて、先ほどコメントで「抗菌薬の話」を書いてもらいたいといただきましたので、早速書いてみたいと思います。と言っても専門書ではありませんので、すごく簡単です。

 

抗菌薬には多くの種類があります。それを一つ一つ説明するのは大変ですので、ポイントとなる考え方だけ書いていきます。

 

まず、最初に考えることは次の4つです。

1、ターゲットの臓器にいる細菌はどのような種類か

2、その抗菌薬はどんな「細菌」に効きやすいか?

3、飲んだ(もしくは点滴した)薬は血液という道に乗った後、どこに集まりやすいか(効果の発揮しやすい臓器)

4、排泄経路は腎臓か肝胆道系か(加水分解なんてものもありますが)

 

次に患者さんの背景因子を考えて、どの薬を選択するかを考えます。

簡単に書けば腎臓が悪ければ容量調整、もしくは肝代謝、胆道への排泄経路を持つ薬を考えますし、透析するレベルならば「透析で抜ける薬」を考えます。内服している薬の飲み合わせや、使いたい薬との併用効果なども考えます。もし、僕たちのように「急性白血病」などの「抵抗力がない人」をターゲットにする場合は「殺菌的」な薬を選択しますし、十分に戦える能力がある場合は「静菌的」な薬でもOKです。

 

先ほどコメントでいただきました「歯の感染」であれば、口の中にいるのは緑色レンサ球菌とか嫌気性菌が多いですので、これらに効く薬でなくてはいけないわけです。

 

そうすると嫌気性菌に効かない薬は「アウト〜」になります。

ここでクラリスロマイシンは脱落です。飲みあわせでも脱落でしたが・・・。

 

 

クラリスロマイシンなどの「マクロライド系」の特徴は呼吸器系などへの移行性の良さ、気道の炎症を鎮める作用、白血球の中にも入っていくことができるということでしょうか。

 

 

で、残された薬の検討に入ったわけですが、2つの薬は「第3世代セフェム」と言われている同型のものでした。ですので、どっちでもいいと言えばいいのですが、うちの口腔外科ではフロモックスを多用しているのでフロモックスを薦めてしまいました。

 

 

あとはメカニズムとして「菌に直接作用できるかどうか」という要素を考えたりします。

マクロライドやアミノグリコシド系抗菌薬は細胞のリボソームに作用する薬ですので、白血球の中などにも入っていきます。ニューキノロン系と言われる薬剤はDNAジャイレースを阻害しますので、細胞内にこれも入ります。つまり、結核などにも効きます(ニューキノロンは日本国内では結核に使用できませんが、外国は認可されていたりします。セフェム系で効かなかった頸部リンパ節炎が、ニューキノロンに変えたら改善したのですが、また悪化してきました。悪性リンパ腫でしょうか?という紹介がありましたが、そんなわかりやすい病歴は結核などのセフェムが効かない菌だろうと思ったりするわけです。実際に結核でしたが)。細胞壁がないマイコプラズマなどにも効きます。

 

 

以前・・学生さんから「膀胱炎の治療をするのになんの薬を使用しますか?」

と聞かれて、

「腎排泄の薬だったら有効濃度は達成すると思うので、あまり細かく考えません」

と答えました。正しい答えならば大腸菌などの腸内細菌が多いので、第2〜3世代セフェムなど。ただし、肝臓から胆道に半分流れるような薬はセンスがないと思いますが・・・。

 

肺炎ならば肺にいきやすい薬を考えますし、同じ菌でも感染部位によって使用する薬剤は変わったりします。

 

ちなみにクリニックでなくて病院での入院診療ならば「必要な検査(菌の検索)」を行なって、当たる可能性の高い薬を投与(上の考え方)し、ターゲットがわかればそれに合わせて薬を変えるか、継続するかを判断します。

 

個々の抗菌薬の説明ではありませんが、簡単に書いてみました。 

 

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