こんばんは
今日は暖かい一日でしたが、また明日から寒くなるみたいですね。皆さん、風邪をひかないように注意しましょう。
さて、今日はまずこの記事に目を奪われました。紹介します。
■歯科医過剰…質低下を危惧
「医師数1・5倍」を掲げた民主党政権の肝いりでスタートした文部科学省の専門家による検討会。昭和54年以来のことになる大学医学部の新設を認めるのか-。1年間、議論が尽くされたが、「門戸開放」にかじを切ることは現時点ではなかった。医師不足の現状への共通認識はあるものの、医学部新設へのハードルは高い。
◆各地で高まる誘致要望
医師不足は地方だけでなく、首都圏にも広がっている。欧米では、医学部は人口100万~120万人に1校とされている。これをあてはめると、人口720万人の埼玉県には6~7校必要になるが、1校しかない。620万人の千葉県も同様に1校だけだ。
こうした現状を踏まえ各地では医学部誘致の要望が高まっている。昨年10月には千葉県成田市が医学部誘致を表明。同11月には茨城・新潟・静岡の3県が医学部新設などに関する規制緩和を求める共同要望を発表した。埼玉県では今年9月、県立大学への医学部新設を目指し、県議会に推進議員連盟が発足した。
医学部設置に向けて動き出した大学もある。東日本大震災以前から深刻な医師不足が指摘されていた東北地方では、地域医療の充実を図るため、東北福祉大(仙台市)が今年3月、仙台厚生病院(同)と連携して医学部を設置する構想を発表。国際医療福祉大(栃木県大田原市)や聖隷クリストファー大(浜松市)などでも医学部新設の検討を始めている。
◆慎重論「医療界の総意」
だが実際には、大学医学部は昭和54年に琉球大学(沖縄県西原町)に設置されて以来、新設されていない。将来の人口減による医師過剰を考慮して国が抑制策を取ってきたためだ。
深刻となった医師不足対策で平成20年度からは増員策に転じ約1300人分の枠が増えたが、既存大学の「定員増」によってまかなってきた。
これには、日本医師会や全国の国公私立大と付属病院からなる全国医学部長病院長会議が医学部新設に反対するなど、「新設慎重論が医療界の総意」(都内の大学病院関係者)となっていることがある。新設に反対する根拠は、(1)将来的に医師過剰になる(2)新設からでは時間がかかりすぎる(3)一度新設すると廃止が困難-などだ。
さらに、新設に反対する意見を後押ししているのが、各大学の「歯学部」の現状だ。
歯科医師は20年ほど前から供給過剰が指摘されている。私立歯科大・歯学部では今春の入試で全国17校のうち10校で定員割れを起こし、受験者全員が合格した大学もあった。文科省ではこうした大学に定員を満たすか、満たせないならば削減するよう求めており、質の低下が懸念されている。医学部でも同様な事態が起きないか危惧する声が強い。
30年にわたって新規参入がないのは閉鎖的なのか。それとも質の低下を招かないように守ってきた宝なのか。文科省の報告書案では「国民的議論が必要」と結んでいる。
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個人的にはいくつか思うことがあります。
まず、新設に反対…というのに関しては、一部は同感です。過剰に作るのはよくないと思っています。
しかし、ここに書いている理由ではありません。
間違いなく、僕は将来医師不足でTriageすることになると思っています。はっきり言えば、埼玉の血液内科なんかは過剰に受け入れて頑張っているから維持でいているのだと思っています。
先週、大学に行きましたが血液内科の『元アンフェタミン外来』に関しては毎週50名以上になっていました。専門外来の数ではないですね。
入院患者は少し抑えようとしているようでした(といっても満床ですw)が、入院予定を見ると…いつもの130%前後の稼働率になると思います。
今までも書きましたが1日16~18時間くらいを、まず1年(休みは2日)続けました。そのあと1年で合計2週間くらい休みを取ったけどその勢いで続けました。予定では2年で大学から離れるという話でしたが、特例(というか血液内科が大変なことになる・・ということで)で3年大学におり・・・。
この時、さすがに疲れていて熱海に温泉に行き、そこで体重が62kg→53kgになっていることに気づきました(今は筋力アップもしていて64kgまで上昇)。
周りからも「フルマラソンを走ってゴールと思ったらウルトラマラソンだったようなものだ」と言われていましたが、さすがに過労死一歩手前だな~ということで3年目はできるだけ休むようにしておりました。
そのくらいでバックアップしていなければ、昔はともかく今の医療(特に医療レベルも上がっていて、できることが増えてきた世の中で)を少人数ではできません。
では、医師数は減っているのになぜ医学部新設に反対かというと、教官数が足りないから。
僕は今の大学病院は「臨床」「教育」「研究」の3つのうち、まず研究を犠牲にして、教育も犠牲にしつつあると思っています。ぎりぎり臨床は「医師としての使命感」もあり、粘っているのだと。
大学教授になってもすぐやめる方がいるのをご存知でしょうか?
教育にしても、もし大学が素晴らしい教育システムを持っていれば医師は自然と集まります。大学でなければ見れないような患者さんもいると思いますが、教育システム(特に臨床)という意味ではある程度の総合病院のほうが良い教育をしているから人気があると思います。
すなわち「大学にすでに余力はない(まったく)」という状況です。
そこに・・・・医学部を新設するとそれだけ「教授」以下のスタッフが必要になります。どこからそれを取ってくるのか・・・・。
今の大学病院に派遣する力、もしくは関連施設が増えるといっても(例えば・・・○○大学の内科は慶応閥だ・・・とかですね。今でもありますよ。笑いごとですが、うちが今そんな感じで争っているようですしw)余力はないでしょう。
じゃぁ、地方の病院から・・・といっても、よほど余裕のあるところでなければ(仙台厚生病院とかw)さらに医師が不足して、地域医療は壊滅するかもしれない。だから急には医師は増やせない…というのが僕の考えです。
これは本当に2008年の1月の全医連の準備委員会のころにも言っていたし、僕の持論です。僕はあくまで「まずは大学の医局の改革と待遇の改善」が最初だと思っています。そして少しずつ医師数が増えてきたころに、少し医学部の新設ができるだろうと・・・。
まぁ、準備するのはいいですけど…
医療業界はまさに「ブルーオーシャン」だと思うのですが、あまりに医師数は少なくて…医師数に関しては「パイの取り合い」になっている。
あと、歯学部の現状と書かれますが・・・・僕には幅が狭いと思うのですけど。
もちろん専門家というのはいるのでしょうけど、虫歯の治療・歯周病の治療・インプラント・・・開業されている歯科の先生の看板は似たようなものだと思います。
内科医が外科ができないように(少なくとも訴えられないような外科手術は無理でしょうね)、麻酔科が少なくて麻酔をかけて失敗したら訴えられたりするように・・・。
さらに昔は外科の先生が抗癌剤治療をしていたが、スペシャリティという形で腫瘍内科ができてきたように・・・・。
もちろん、開業という意味では「総合内科」「家庭医」というポジションが望ましいとはいえ、専門性が高まり続けている「勤務医」はもしかするとさらに細分化されるかもしれない。
そうすれば、ますます医師の必要数は増えます。
また、歯科との違いで「死ぬ患者」が多い。いや、より重症の患者と言いなおすべきですね。
今後、高齢の患者が増えてくるでしょう。
70代、80代でも元気であれば治療を受けたいと望む人も多いです。
僕の外来での最高齢は93歳、その次は91歳・・・。80後半でも治療できるならしてほしい…というのが人間です。
もし、
「年齢で80歳以上は治療のメリットが少ないので病院は受診してはいけません」
と言われたらどうでしょうか。
ちょっと細かいのは忘れましたが、アメリカだと大腸癌の検診とかでも「高齢者はルーチンにスクリーニング検査を行わないこと」みたいな勧告が出ていました。確か50歳以上から検診を初めて、75歳か80歳くらいで「がんをみつけてもメリット(延命や死亡リスクの低下)が少ない」とか。当たり前ですけどね。高齢なんだから、治っても寿命があるし。
僕は高齢の患者が増えて、今の日本と同じように医療を継続するのであれば絶対に医療は破たんすると思います。
合併症は高齢者のほうが多いのです。治療をするのに患者さんもそうですが、医師や看護師も労力はかなり必要になります。
イメージしてみてください
30歳、40歳の患者さんが多い病棟と、70歳、80歳の患者さんが多い病棟で看護師さんの負担はどうでしょうか。何かが起きた時の(起こる確率もそうですが)医師の負担(診察、検査、診断、治療)はどれだけ増えるか・・・。
そういう話です。
昨日も書きましたが、基本的にこのままでは高齢化社会を迎えて、患者さん1人1人の「必要医療従事者数」が増えます。患者さんをTriageして、診なくてよいのではないか…というのでなければ、おそらく医師は不足します。
医師が不足すれば「医療の需要≫医療の供給」となり、自然とTriageが始まります。
昨日と同じ質問をします。
いかが思われますでしょうか。