さて、新大久保のクロサワ楽器にある、すべてのマーチンギターを弾きつくす勢いの店長でありましたが(笑)
おいらの観察したところによると、店長は心底楽しんでいるように見えて、実は、ちゃんと、すべてのギターをチェックしているんだということが、わかったのですよ。
というのは、一応、おいらが購入希望者だということになっているので、店長が「弾きたい」と言ったギターも、最初はおいらのところに運ばれてくるんですよ。
ただ、おいらは試奏弱者なので、ポロロロ~ンと弾いて、あとは店長に渡すわけですが(爆笑)
おいらが店長にギターを渡す前に、店長は必ず、
「(にこにこ)Emのコードを思いっきり弾いてみて。」
とおいらに言って、弾かせて、ギターの正面で、じーーーーーっと聴くのですよ。
音が消えるまでずっと。
それをやってから、今度は自分でイングヴェイのフレーズを弾きまくり(笑)
でも、ちゃんと、ネックの反りやねじれ、ボディの様子をチェックしているわけです。
おいらもあれから20年くらい経ったので、ギターのことに少しは詳しくなったのだが、ギターって、自分で弾いているときに聞く音と、人が弾いているときに聞く音とは、同じギターでも、全然違って聞こえるのですわ。
だから、たぶん、店長はそれを確認していたんだと思うっす。
それとたぶん、サステイン(音がどれくらい鳴り続けるか)も確認していたんだと思うざますっ。
で、さんざん弾きまくって、満足してから、
「(にこにこ)つぁんは、どのギターが良かった?」
と聞かれたわけですよ。
あせる、おいら(爆笑)
正直、うん十万もするギターなんて、初めて弾いてるわけだから、どれとどれが、どう違う、なんて、ほとんどわかってません(汗)
おいらがまごまごしていると、
「(にこにこ)つぁんはニール・ヤングにあこがれているわけだから、D-28が妥当だと思うんだな。さすがにD-45は高すぎるよね(笑)で、D-28だとすると、これとこれとこれだけど、この3本なら、どう?」
と、かなり具体的に限定してくれて、もう一度その3本を弾いてみたっす。
1本は完全な新品。正規価格。
もう1本は30年以上のヴィンテージ。かなりのお値段。正規価格より高い・・・
で、もう1本は、中古品というか新古品? この3本の中ではもっとも安い。でも高いよ・・・
いや、その3本を改めて試奏して驚いたんだけど、
良いギターって、ほんとに年月が経つと音の感じが変わるのね・・・
新品は、本当に新品ぽい初々しい音。
ヴィンテージは、枯れたまろやかな音。
中古品はその中間。
って感じ。
でも当時のおいらには、どれが一番すぐれているか、ということはわからなかったっす。
でも、じつは店長は、この時点で、中古品に狙いをしぼっていたみたい。
店長自身が、かなりの時間をかけて試奏して、
「(にこにこ)つぁん、これがいいよ! 鳴りが全然違う。前のオーナーがかなり丁寧に取り扱って、しかもたくさん弾いたんじゃないかな? 新品にこだわっている、とかじゃなければ、これがいいよ!」
そう言われて、もう一度試奏してみると、すごく「鳴っている」感じがするから不思議(爆笑)
店員さんも、
「このギターは前のオーナーが1年くらいすごく大切にしていたギターで、まったく傷もないですし、この鳴りでこの値段なら、破格だと思いますよ、たぶん、すぐ売れますよ。」
などと、店長と同意見(笑)
まるで申し合わせたようで、
この二人なら、ギター詐欺でもできそうな勢い(笑)
そんなこと言われると、かなり、買いたい気持ちになってきてしまうんだなあ、うまいなあ(爆笑)
でも、20万弱のお金は、当時のおいらにとっては、かなりの金額・・・
ローンを組むにしても、わずかな仕送りと、アップルビデオ高津店の安いバイト料(爆笑)では、生活を切りつめないと・・・
などと悩んでいたら、店長が、
「(にこにこ)このD-28は、本当にいいと思うよ。マーチンほどのギターになると、中古品は、もっと中古になると、ヴィンテージだからね! 俺のオベーションの1985は、ヴィンテージにはならないと思う。それがオベーションとマーチンの違いだからね。俺が欲しいくらいのギターだよ! たぶん、この先10年でも20年でも、一生弾いても、飽きないくらいの良い音だよ。つぁんがこのギターを持っているだけで、俺は悔しくなっちゃうなあ(笑)」
買おっと(爆笑)
で、それから20年くらいたつんですが、本当に買ってよかったと思うっす。
初めて自分の部屋にそのマーチンを飾った時の気持ちは、本当に夢のようだったし。
店長が勧めてくれた通り、このマーチンがすごく「鳴る」んだということは、弾けば弾くほどわかるようになってきたし。
こんなおじさんになっても、ギターを弾き続けていられるのは、このマーチンがあったから!
おいらと一緒に年をとって、このギターの音がどんどん枯れていくのもわかる。
今なら、若者たちに、「若いうちに無理してでも、本物の、素晴らしいギターを買うべきだ!」と言うっす(笑)
そして、これが、現在のそのギター。
つっかさんが、路上に置いて撮影してくれた、記念すべき写真!
カールコードのおまけつき(爆笑)
真っ白だったニスが、いい感じに焼けてきて、すっかりヴィンテージのたたずまい!
話は20年前に戻る(笑)
そして、無事にローンを組む手続きをすませて、マーチンのギターケースに、購入した証であるクロサワ楽器のロゴの入った袋を巻き付けてもらって、これで、こいつは、ついに、完全に、おいらのもの!
もう、きみをはなさないぞっ(笑)
それを抱えたおいらが、ウキウキしながら、マーチンのフロアを出たら。
「(にこにこ)つぁん、その買ったばかりのギターを持って、クラシック・ギターのコーナーに行くぞ。高い買い物したんだから、思う存分、試奏できるからね! クラシック・ギターには、一味違う、素晴らしい響きがあるんだよ。イングヴェイなんかも、クラシックギターを弾いていてね。うんたらかんたら。これはこれで、まったく別の進化をとげた世界なんだよ。エレキとアコギとクラギ。この3つの世界は経験しておかなくちゃ! つぁんはあんまりエレキ・ギターが好きじゃないみたいだけど、ガット弦の音は、経験しておくといいよ!! 俺も前々から、高価なクラシック・ギターに興味があってさ~。もちろん、スパニッシュ・ギターもいいからね~。この二つの違いはね~、うんたらかんたら。」
これ、ガチだわ(爆笑)
結局、閉店ぐらいまで、おいらと店長は、素晴らしきギターの世界にどっぷりつかったのでした(笑)
つづきは、こちらです~。