桐の落花を探そうとの、道すがらでとてもよい香りが漂ってきた。
なんとも奥ゆかしい芳香。
「どなたですか?自己申告してくださると助かります。」
車中で師匠が問う。
しばらくして、
「自己申告をいただいたよ。
イボタノキさんだそうだ。
さっきいた場所の道路を隔てた崖側に、咲いてて、
君が可愛い花だって言ってた白い花さんだそうだ。」
と、植物さんと話した後に、けらけら笑う。
この時期は、あちらこちらから花の香りがする。
橘さんの一族の柑橘から、ジャスミン、唐種招霊など、普段でも、
まわりで漂ってくる芳香。
その花たちが一斉に開花している。
まもなく暦では、トの神さまの納める時期。
トの神さまは南の風であり、薫風。
どこにいても、自分は守られている。
時に忘れかけていた感覚も、この芳香によみがえる。
いつだって、リセットはできる。なんどでも、やり直せるのだ。
自分で在るという、思いは続けられる。そして、準備が整えば
新しい自分をも簡単に受け入れることができる。
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