2024/12/10 読売新聞オンライン
引き揚げ港として使われていた当時の舞鶴港を説明する学生語り部(右)(舞鶴市で)
引揚記念館・学生語り部 留学生と国際交流学ぶ
舞鶴引揚記念館で学生語り部として活動する中高大生14人が8日、旧ソ連による抑留の地・ウズベキスタンと舞鶴市との間で続く国際交流について学ぶ研修に臨んだ。同国から市に派遣された国際交流員、アフメドフ・アシルベクさん(30)らが抑留を悲劇にとどめず、友好につなげて平和の礎としようとする人々の思いを紹介した。
「ナボイ劇場」
ウズベキスタンでは2万5000人もの抑留者が強制労働に就き、客死した日本人の墓地も残る。抑留者が建てた首都タシケントの「ナボイ劇場」では今もオペラなどが上演され、抑留者が同国の社会資本を築いた歴史の象徴となっている。
アシルベクさんは「日本人抑留者資料館」を同国で運営し、抑留の史実を継承してきたジャリル・スルタノフさん(80)が2016年、舞鶴引揚記念館を訪ねたことをきっかけに、交流が深まったと語りかけた。「大地震が起こっても崩れなかったナボイ劇場の建設など、日本人の懸命な仕事ぶりに国民が感銘し、今の友好につながっている」と話した。
学生語り部は「ウズベキスタンでは、歴史の授業で旧ソ連による抑留を教えていると知り驚いた」と感じ入っていた。
舞鶴市は17年から国際交流員を受け入れており、同市にある近畿職業能力開発大学校京都校では22年からウズベキスタンの留学生を受け入れている。
研修には同国の留学生8人も参加した。市みなと振興・国際交流課の坪内善紀さんは、行政や産業技術、福祉など各分野で人的交流が進んでいることを紹介。ロシア、中国、英国、韓国とも交流の枠組みがあることに触れ、「交流の積み重ねが、世界平和や互いの経済発展に結びつく」と強調した。
学生語り部たちと交流した留学生のイザティロ・イシモイロフさん(22)は「引き揚げやウズベキスタンのことに興味をもって聞いてもらった。交流を続け、私たちのことをもっと知ってほしい」と願った。