2024/12/12 読売新聞オンライン
仮囲いに描いた作品
福岡市中央区の舞鶴公園で復元が進む福岡城跡・潮見 櫓の工事現場にある仮囲いをキャンバスに、福岡県春日市在住の画家、坪山斉さん(43)が無償で博多湾をモチーフにした壁画「博多湾海景図」を描いた。直線を生かした作風で、かつて櫓から見えた博多湾のイメージを浮かび上がらせた。坪山さんは、「公園に突如現れた『非日常』を感じてもらえれば」と話している。
潮見櫓は木造2階建てで、江戸時代に福岡城の北西に建てられ、海上の監視を担っていたとされる。
復元工事は市が2023年1月に着手した。坪山さんは復元が進む潮見櫓から、海を見渡し、城を守る着想を得て創作。高さ約2メートル、幅約50メートルの仮囲いにローラーを使って青や緑、黒のペンキで直線を描いて、波や潮の流れ、防波堤を表現した。「自分の描く幾何学的な直線と自然がぶつかることで新しい発想を得ることができた」と手応えを語る。
坪山さんは仙台市出身で、東京芸術大大学院を修了。都内の中高一貫校で美術の非常勤講師をしていた時に東日本大震災が発生し、翌12年、妻の故郷の福岡市に移住した。
福岡市内でも美術の非常勤講師をしながら制作に励み、13年に若手芸術家ら約120人が出展した東京の公募展でグランプリを受賞。これを機に、徐々に画家としての仕事も増えたが、作品発表の舞台は東京や中国、韓国が中心で、制作拠点を置く県内ではあまりなかったという。