明治時代の本が面白すぎるので、ついつい。
本日の寄り道は、こちら。
永島福太郎編「教草単語図解 一号」 明治11年
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「教草」(おしえぐさ)というのは、いわゆる教科書。
子どもに知識や道徳を教えるためにつくられた本。
明治11年(1878年)というと、137年前です。
日本では学校制度が、まだスタートしたばかりの頃。
この本が、当時の学校や寺子屋(?)で使われたものなのか、
絵草紙屋が勝手に作って売ってただけなのか、よくわからない。
いや、子ども向けなのかどうかも、わかりません。
(昔は一般書と児童書の区別がなかったので・・)
「単語図解」というとおり、この本には、いろんなものの絵と、
その名前と、簡単な説明が書いてある。
最初は、なぜか、「糸」だ。そして「犬」。
「犬は雪を好み、暑さを怖れ、よく人の恩を知る。
鼻が効き、常に人の家を守って盗賊を防ぐ」
というようなことが書いてある。
それから、錨、井戸、猪、イモリが、ひとつの画面に。
庭先にどんと錨がすえてあるのが、いささかシュールですが。
ははあ、これは、いろは順に行くんだな。
と、めくったら、そうではなかった。
海老、絵馬、絵の具。
さらに、枝、榎(エノキ)、槐(エンジュ)ときた。
魚屋が天秤棒でかついだ桶には、伊勢海老のひげが見え、
頭上にエンジュとおぼしき木の枝。
こっちでは男が絵の具で絵馬を描いている。
おや、「え」始まりでまとめたか、と、次をめくると、
たらい、ふるい、燭台。櫂に、貝に、笄(こうがい)。
うーん。これって、言葉遊び?
次。
鳥居、笛、紫陽花、莞(い=イグサ)、稗(ひえ)、栄螺(さざえ)。
右ページには神社(?)で笛を吹く紋付袴の男。
左ページにはサザエをつぼ焼きにする商人風の男。
語尾が「い」または「え」・・という、ゆるいくくり方に見える。
「い」には「ひ」と「ゐ」もあり、「え」には「へ」と「ゑ」の表記もあった、
ということに気づくのに、ちょっと時間がかかった。
漢字で書かれているせいもある。
もしかしたら、間違えやすいのを並べてあるのかな。
もっと詳しく見てみないとわからないけれど。
次。
家、鞆絵(=巴)、机、鼎、杖、苗。
(いへ、ともゑ、つくへ、かなへ、つゑ、なへ・・?)
これらの単語を一場面で見せるやり方が強引で笑える。
机をかついだ男と、鼎をかかえた男が、巴印の看板の下で
杖をついた男と立ち話をしており、あちらでは田植えの真最中です。
さあ、次は何で来るだろうかと、めくる。
慈姑(くわい)、鍬(くわ)、瓦、鰯(いわし)、
槲(かしわ)、簪(くつわ)、帯。
えーっと? 帯??
帯を締めてるのか解いてるのか、ちょっと色っぽい姐さんの
足元になぜか馬の轡が大量にあるという謎。
(あ、魚屋さん、こんどはイワシ持ってきた)
予想を次々と裏切られる、この感覚が、なんともいえない。
後半になると、果物づくし、野菜づくし、台所用品、着物、など、
ジャンル別になっていき、意外性は薄れるけれど、
それはそれで楽しい。
ちょっとリチャード・スキャリーの絵本みたいだ。
こういう感じの絵本って、いま、できないもんかなあ。
古いから面白い、っていう部分も、もちろんあるけれど。
永島福太郎(孟斎)は、明治の浮世絵師。
2巻目の動植物づくしも、なかなか美しいです。
興味とおひまのある方は、近代デジタルライブラリーで
ごらんください。
教草単語図解 一号
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/862562
教草単語図解 二号
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/862563
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おお。やるじゃん。