閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

雲・巣箱

2015-02-16 23:15:22 | 日々


朝から雲が面白い。

薄くて軽い巻層雲が、すうすう、ひらひらしている。


 

こういうときは、何か出そうだなあと、思っていると、

 

 

出ました。
虹? ではなくて・・

 

まんまるな日暈です。 
日暈(ひがさ)は雨の前触れ、とか。

 

でも、夕方まで、ずっとお天気で、あたたかく、雲が面白かった。

 

 

 

「ちょっと遊んでいきなよ」と、枝たちもはしゃいでいる。

 

毎年、バレンタインデーを過ぎる頃から、小鳥はさえずりを始める。
もちろん、お天気や気温にもよるけれど、昨日はヤマガラが
かなり本格的に「ツーピーツー」と長く鳴いていた。
巣箱のお掃除がまだだよ!と催促されているような気がする。

小鳥の巣箱かけは、5月のバードウィークに、都会の公園などで
行われることが多いけれど、我が家では2月のイベント。
Mがはしごをかけて、昨年のを回収してきた。
屋根をはずし、古い巣材は全部出して、きれいにする。
虫が入っていることもある。
ひとつの巣箱には、杉の樹皮を細く裂いたものが、
ボール状になって詰まっていた。
野ねずみ、かも。というのは鳥の巣博士の見立て。

何年も使うと、板がぼろぼろになってくるので、新しくする。
ひさしぶりに、わたしも2個つくってみました。
 

設計図とかはなく、ありあわせの板きれを集めて、テキトーです。
ヤマガラ、シジュウカラは、本来は木の洞などに巣をつくる鳥なので、
きっちり四角じゃなくても、少しくらい隙間があっても、
なんとなく「洞」っぽいものなら、いいわけです。
壁板は厚手のほうが好まれる、ような気がする。
雨が入らないことは重要。それに、取り付けやすいことも。

入口の穴は、大きくしすぎると、住宅地の場合は、
スズメやムクドリに横取りされてしまうので要注意ですが、
このへんは山で、スズメはいないので、これもテキトーです。
厚い板をきれいな円形にくりぬくのは難しい。
今回は、電気ドリルで、でこぼこな穴を開けてもらいました。
べつに丸くなくても、四角でも問題ないことは実証済み。

 

また、羽。
長さ15センチくらい。
左の2本は初列風切羽。右の幅の広い2本は尾羽。
確証はないけれど、たぶんキジバトで間違いない。
これもMが拾ってきた。場所は、2月11日のと同じ杉林。
(ということは、あれもキジバトだったかな)

 

 



キジバトのイメージと、黒っぽい地味な羽が、
すぐには結びつかない。たいていの鳥が、そうだ。
光にかざしたとき、先端にちらっと見える色に気づいて、
ああこれか、と思う。
ふだん表面にあらわれているきれいなところだけを
人は見て記憶に留めているけれど、分量的には、
地味な色のほうが圧倒的に多いことがわかる。

色、かたち、大きさ。
さまざまな羽の一本一本にそれぞれの役割がある。 
翼の羽は非対称形で、風車のブレードのように
微妙にねじれたカーブを持ち、軸はしっかりして弾力がある。
尾の羽はフラットで幅広く、飛行中は舵に、とまるときはブレーキになる。
カラスのような大きい鳥が飛んできてとまろうとする瞬間は、
翼がぐっとたわみ、尾が扇のようにひらいて、とても素敵だ。
身体をおおう短い羽はふわふわ柔らかく保温性にすぐれている。
まるごとの鳥をじっくり観察する機会はめったにないけれど、
たまたま拾った羽一本からでも、ずいぶんお勉強ができる。
面白い。 

 

 

本日の「いいね!」


コーランのお勉強 (動画)

言ってることわかんないけど、すっごく可愛い。


 

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ニワトコなど

2015-02-15 22:50:55 | 日々

ニワトコのつぼみ。
「てんぷらにすると美味しいですよ」と、枝ごといただいたもの。
水にさしておいたら生き生きとしているので、てんぷらも食べたいけど、
もうちょっと鑑賞することにしました。

ニワトコは、春一番に新芽がひらき、薄クリーム色の花をつける木。
以前はこの近辺でも見かけたけれど、いつのまにか消えてしまった。
大きな木にはならないが、枝がよく伸びて道路にはみ出すので、
通行の妨げになって切られたのかもしれない。
奥に分け入って探せば、きっとまだあるだろう。 

アンデルセンの「ニワトコおばさん」はちょっと好きな話だ。
風邪ひいた子が、ベッドでニワトコ茶を飲まされていると、
そのポットから「ニワトコおばさん」があらわれて、お話をしてくれる。
これは西洋ニワトコ(エルダー)で、日本のものとは種類が違うらしい。
樹皮、葉、花、実、根と、全体が、西洋では伝統的な薬用植物。
ハーブティーにするのは乾燥した花。
ドイツでは5月に咲くエルダーの花をフリッターにして食べるとか。

 

 

あけびや葛のからまった木の枝の上のほうに、
金色に光っている不思議な物体をみつけた。
長さは5~6センチくらい。メッシュ仕様で、中が透けて見える。
手の届かない高さなので、帰って写真を拡大して調べたら、
クスサンという蛾の繭らしい。

こういうものの中には、たまにびっくりするほど美しいものがある。
南米のUrodid mothの繭は、細い細いレース糸をかぎ針で編んだようだ。
見てみたい方は→こちら (虫キライ姫にはおすすめしません)
繭の状態は、非アクティブなので、わりと安心して観察できる。
「親」の姿はものすごく苦手で、絶対にお近づきになりたくないですが。 

 



怪獣っぽい雲。
2匹連れだって山の陰からあらわれたところ。

 

 



あ、変身した。ツノが生えた。

 

 

羽。長さ約25ミリ。
ジョウビタキ(♂) 
と、断定する根拠は一応あるけど、あんまり言いたくない。

 

 

反省してますか?

 

 

してないな。

 

本日の「いいね!」


石膏ボーイズPV (動画)

あはは。あと2チームくらい作れそうだよね。

 

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個室

2015-02-13 17:00:19 | 日々

きのうは一緒でしたが・・

 

きょうはちがいます。

 

 

個室だもん。

 

 

気温が低くなるとくっつきやすくなる性質。
飴とは逆ですね。
気温12℃以上ではあまりくっつかない。

 

 

本日のスウィーツ。

これを手にしたサンゴロウの苦笑いが目に浮かびます・・
って、いつも面白すぎる柴さん、ありがとう。 
 

一方、リアル黒猫のさんちゃんは、このところ闘争に明け暮れており、
帰ってくるたびに、ものすごく汚かったり、傷があったり。
いまも右の後ろ足の指をちょっと痛そうにしています。
目下のライバルは、尻尾の短いサバトラで、
元プロボクサーみたいな面構えの奴らしい。
だいじょぶか、さんちゃん。 

 

 

本日の「いいね!」

ふむふむなるほどなアイデア商品33選

どれもすごく良さそうに見えてしまうんだけど、
ほんとは使ってみなければわからない。

たとえば、こういうもの・・

露とりワイパーといって、冬期に窓ガラスの内側につく結露を
つーっと集めてかんたんに除去できちゃうというもの。
良さそうでしょ?
ところが、製品不良なのか何なのか、ガラス面にフィットしなくて、
結局、拭いたほうが早いってことで、ほとんど使えませんでした。
これが、いまは、別の用途で、大変重宝しています。

これから暖かくなると、冬眠から目覚めた大量のテントウムシが、
壁や窓をうろうろして、なかなか出口をみつけられず、
(入るときはどこからか入っちゃうんですけどね) 
出してやろうとしても、ちっちゃくて、つるつるで、つまめないし、
1匹出してるうちに1匹舞い戻るというぐあいで、とても厄介。
そんなとき、このワイパーが、便利なのです。
つーっと集めて、ある程度たまったら外に持ってって、リリース。
スグレモノのテントウムシワイパー。おすすめ。
(といっても、一般家庭ではまったく需要がないか・・)

  

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三寒四温

2015-02-11 18:13:15 | 日々


白梅。ほんのりピンク。
四歩すすんで三歩もどる春。 

 

猫柳も、きょうは、ふんわりご機嫌。

 

 

羽。長さ約60ミリ。
近くの杉林でMが拾ったもの。

 

 

このふわふわが特徴的。

 

 

右は、同じ杉林でとってきた焚きつけの小枝にからんでいた羽。
長さ約80ミリ。グレイで、毛先が淡い褐色。
根元のふわふわ感も、軸の硬さも、左のとよく似ている。
大きめの鳥。鳩とか・・コジュケイとか?

 

 



本日のおやつ。

りんごキャラメル。ありがとう、涼くん。

 

 

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霜の花

2015-02-09 13:22:15 | 日々

 

 

 

 

 

 

車の屋根。

 

 

 

 

羽。

長さ約42ミリ。
大きさのわりに、軸がしっかり太くて硬く、カーブしている。
これはキジ(♀)の羽です。
と、はっきり言い切れる根拠は、ある。けど、それは秘密。

 

 

本日のにゃんこ。
 

冬季限定「呉越同舟」 きなこすもも詰合せ



 

本日の「いいね!」

Dashing Thru the Snow (動画)

かんかんかんかん! 列車が来るよ!
(日本の雪質では、こういう荒技はできないらしいです)

 

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rainy day

2015-02-08 11:13:39 | 日々

save up for a rainy day
雨の日のためにとっておく。いざというときに備える。
ビートルズの「ジョンとヨーコのバラード」だ、
この言い回しを覚えたのは。(古いね!)

人、とくに女の人が、きれいな丸い宝石類を欲しがるのは、
木の実を集めて(雨の日や冬のために)たくわえておこうとする
原始的な本能からきていると、わたしは思うけど、
Mは「太陽の光を集めてとっておきたいのではないか」という説。
両方まざっているのかもしれない。

ということで、本日の画像にあまり深い意味はありません。
ただの練習。 
太陽光がないと機能しないところが、プリズムは素晴らしい。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の「いいね!」


Fibonacci Zoetrope Sculptures (動画)

フィボナッチ数列にもとづいた動く彫刻。
よくわからないけどふしぎできれい。

 

まつぼっくりの螺旋の数は「13」と「8」です。
写真に撮ると数えやすい。 

 

      

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こおり水玉・その2

2015-02-07 13:58:57 | 日々


ナマモノですのでお早目に。
気泡が入っていることも特徴です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水玉以上、つらら未満。

 

 

 

 

霜のファスナー?

 

 

フリーズドライ。

 

 

ねこやなぎ ぼうしをぬいだら さむかった

 

 

 

 

もうすっかりとけましたね。

 

 

本日の「いいね!」

Gravity Glue

ずっと前にこの人の動画をUPしたような気がしますが・・あらためて。
カナダのアーティストMichael Grabの作品。

 

 

Gravity―Arts of Rock Balancing
Michael Grab
近代文藝社

 

 

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こおり水玉

2015-02-06 17:18:09 | 日々


ちょっとひさしぶりにきれいな水玉を
たくさん拾えたので、うれしい。

朝の気温が低かったので、水玉は半分凍っている。
凍った水玉と、普通の水玉は、あきらかに雰囲気が違い、
離れたところからでもわかるので、朝食をとりながら、気もそぞろである。
日が射すやいなや、早送り映像のようにみるみる溶け始め、
あたりはしずくの落ちるぱたぱたぱたという音でいっぱいになる。
カメラを濡らさないように気をつけないと。 

宝飾品の収集でも、釣りや狩りでもそうかもしれないけれど、
きっと、手に入れた瞬間が最高なのだろう。
持ち帰って、あらためてゆっくり眺める。あるいは人に見せて自慢する。 
幸福感は、しばらく持続する。
幸福の大きさはそれを手に入れる労力に比例する、と言った人がいた。
金額で量る人もいるだろうし、順位にこだわる人もいるだろう。
でも、いずれにせよ、手にした幸福は長くはもたない。
時とともに色あせ、薄れていく。
食事と同じだ。
おいしいものを、おなかいっぱい食べても、ヒトはまた空腹になる。
ヒトはイキモノ。幸福はナマモノ。
よく噛んで、味わって、吸収してエネルギーに変えたら、
それを有効に使って、さらなる幸福を探しに出かければいい。
光も、水も、毎日があたらしい、ハピネス。 

 

 

 

 

 

外に置いてあるスコップの柄の部分に並んだ水玉。

 

 

もうすぐ咲きそうな梅のつぼみも、さむさむ。

 

 

池のサギ除けネットの網目が凍って、ステンドグラスのようだ。
上の赤いのは、金魚。

 

 

三角になるのが、こおり水玉の特徴のひとつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の「いいね!」

The Glass Flowers

ハーバード大学自然史博物館のガラス植物コレクション。
19世紀のドレスデンのガラス職人、レオポルドとルドルフ・ブラシュカ親子が
約40年間にわたって製作したもので、その数4000点を超えるとか。
見たいなあ、これ。 

 

The Glass Flowers at Harvard
Richard Evans Schultes,William A. Davis
Harvard Univ Glassflowers


 

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教草

2015-02-03 22:47:46 | 日々

明治時代の本が面白すぎるので、ついつい。
本日の寄り道は、こちら。

 

永島福太郎編「教草単語図解 一号」 明治11年
画像クリックで拡大します。

「教草」(おしえぐさ)というのは、いわゆる教科書。
子どもに知識や道徳を教えるためにつくられた本。
明治11年(1878年)というと、137年前です。
日本では学校制度が、まだスタートしたばかりの頃。
この本が、当時の学校や寺子屋(?)で使われたものなのか、
絵草紙屋が勝手に作って売ってただけなのか、よくわからない。
いや、子ども向けなのかどうかも、わかりません。
(昔は一般書と児童書の区別がなかったので・・)

「単語図解」というとおり、この本には、いろんなものの絵と、
その名前と、簡単な説明が書いてある。
最初は、なぜか、「糸」だ。そして「犬」。
「犬は雪を好み、暑さを怖れ、よく人の恩を知る。
鼻が効き、常に人の家を守って盗賊を防ぐ」
というようなことが書いてある。
それから、錨、井戸、猪、イモリが、ひとつの画面に。
庭先にどんと錨がすえてあるのが、いささかシュールですが。

ははあ、これは、いろは順に行くんだな。
と、めくったら、そうではなかった。
海老、絵馬、絵の具。
さらに、枝、榎(エノキ)、槐(エンジュ)ときた。
魚屋が天秤棒でかついだ桶には、伊勢海老のひげが見え、
頭上にエンジュとおぼしき木の枝。
こっちでは男が絵の具で絵馬を描いている。

おや、「え」始まりでまとめたか、と、次をめくると、
たらい、ふるい、燭台。櫂に、貝に、笄(こうがい)。
うーん。これって、言葉遊び?

次。
鳥居、笛、紫陽花、莞(い=イグサ)、稗(ひえ)、栄螺(さざえ)。
右ページには神社(?)で笛を吹く紋付袴の男。
左ページにはサザエをつぼ焼きにする商人風の男。

語尾が「い」または「え」・・という、ゆるいくくり方に見える。
「い」には「ひ」と「ゐ」もあり、「え」には「へ」と「ゑ」の表記もあった、
ということに気づくのに、ちょっと時間がかかった。
漢字で書かれているせいもある。
もしかしたら、間違えやすいのを並べてあるのかな。
もっと詳しく見てみないとわからないけれど。 

次。
家、鞆絵(=巴)、机、鼎、杖、苗。
(いへ、ともゑ、つくへ、かなへ、つゑ、なへ・・?)
これらの単語を一場面で見せるやり方が強引で笑える。
机をかついだ男と、鼎をかかえた男が、巴印の看板の下で
杖をついた男と立ち話をしており、あちらでは田植えの真最中です。

さあ、次は何で来るだろうかと、めくる。
慈姑(くわい)、鍬(くわ)、瓦、鰯(いわし)、
槲(かしわ)、簪(くつわ)、帯。
えーっと? 帯??
帯を締めてるのか解いてるのか、ちょっと色っぽい姐さんの
足元になぜか馬の轡が大量にあるという謎。
(あ、魚屋さん、こんどはイワシ持ってきた)

予想を次々と裏切られる、この感覚が、なんともいえない。
後半になると、果物づくし、野菜づくし、台所用品、着物、など、
ジャンル別になっていき、意外性は薄れるけれど、
それはそれで楽しい。
ちょっとリチャード・スキャリーの絵本みたいだ。
こういう感じの絵本って、いま、できないもんかなあ。
古いから面白い、っていう部分も、もちろんあるけれど。

永島福太郎(孟斎)は、明治の浮世絵師。
2巻目の動植物づくしも、なかなか美しいです。
興味とおひまのある方は、近代デジタルライブラリーで
ごらんください。

教草単語図解 一号
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/862562

教草単語図解 二号
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/862563

 

 

本日の「いいね!」

スマート節分 (動画)

おお。やるじゃん。

 

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馳走の語義

2015-02-02 16:24:04 | 日々

馳走とは、陸珍海美の食膳にあるを賞するのみの語にあらず。
消化し難き物は軟熟にし、軟熟にし得ざる物は、
繊維を横断細載しあるも馳走なり。
遠来の珍味、不時の佳肴あるも馳走なり。
冷熱の候に応じて、調味に濃淡の別あるも馳走なり。
麁菜(そさい=粗菜)といえども、塩梅(あんばい)好く調味しあれば馳走なり。
吾人が空腹なる時、人、之を察して、一塊の屯食(とんじき≒握り飯)を
調して与えらるるも馳走なり。
渇する時、一啜の苦茶を恵せらるるも馳走なり。
時と場合によりて、不味の麁菜に不熟の麦飯を饗せらるるも馳走なり。
一個の果物、一杯の麦酒といえども、恵与せらるる其の場合によりて、
渾(すべ)て是れ馳走ならざるはなし。
抑(よく)是の馳走の字義たるや、人、我が意中を推測して、
満足を与へんが為めに、其の場合に応じて、心を馳走し、飲食物を恵与せらる、
其の心ばせを感じ、且(か)つ賞し、且つ謝する語にして、
什器、衣服等を贈与せられたるには、此の語を用ゐず。
世に是の字義を誤解して、主人が客を饗する食物を購(あがな)ふ為に、
自ら走り廻る其の身労を謝して、馳走といふなりといふも、
中流以上の主人が、自ら買物に走り廻ることは、有べくもあらず、
実に笑ふべきの至りならずや。
茲(ここ)に此の語義を解するは、聊(いささ)か他事に渉(わた)るに似たれども、
邦俗食物を謝するの常語なるを以て、巻尾に記述したる所以(ゆえん)なり。

生間正起著「日本家事調理法」(六合館 明治37年)巻末より引用。
原文は旧字体、句点改行なし。


またまた長い引用ですみません。
宮本武蔵が料理本を書いたらこんなだろうかと・・(笑)

「家事調理」といっても、これは家庭向きのレシピ本ではなく、
プロの料理人の心得、というような内容で、
調理をする際の服装、動作、衛生管理などの注意から始まり、
さまざまな道具や食材の知識と扱い方が、こと細かに書かれています。
調理する人はしゃべっても笑ってもいけない、とか、
「如何なる場合といえども慎んで軽躁乱雑の行動あるべからず」
とか、すごく厳しい。

著者の名に「家元」とついているので、何だろうかと調べたら、
この人は、京都の宮家に仕えた料理人で、
「生間流式法秘書」という著書もある家元なのでした。
式法というのは、「式包丁」  →こちら(動画)
(これは宮中儀式というか、一種のパフォーマンスで、
食べるもんではないそうですが) 

時代は変わり、いまや中流以上だろうと以下だろうと、
主人みずから買物になんて普通のことになりましたし、
「意中を推測して満足を与えんがため」に走り回るんなら、
それも有りかと。


えーと、なんでこういう本が出てきたかといいますと、
最初は「葛粉の作り方」を調べていたのでした。
(お隣の雑木を切ったとこに、年代物の葛の根が大量にあるので、
掘ったら天然葛粉が採れるんじゃないかって、クロさんが!)
で、近代デジタルライブラリーに「日本山林副産物製造編」(明治19年)
という面白い本があったので、葛粉のついでに、松の皮の食べ方とか、
線香の作り方とか、あっちこっち見てしまい・・

あれ? でも、そこからどうして生間流に飛んだんだっけ?
調べものをするのに、まず現代じゃなく「近代」に行くという
変な癖がついてしまった閑猫は、今年も寄り道三昧。

 

 

本日の「いいね!」


恐怖の寝ぼけ14選

先日、メールに寝言書いてあやうく送信するとこだったです。
あぶないあぶない。

 

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