それは
ある薄曇りの寒い日のことでした
人に見られるか、見られないかの
狭間でさまよう旅人がおりました
事件は何の前触れもなく起きました
彼の腕に嵌めていた時計は2時46分で止まりました
なんで思考が進まないんだろう
カレンダーを毎日めくっているのに
僕と時はいつからこんな縁遠い関係に、なってしまったんだろう
白い雪が落ちてくるその光景は、時の過ぎゆく外界の移ろい . . . 本文を読む
あなたは
遠くの街へ行ったのでしょう
溶け去ってしまうほどの
魂一つで
螺旋状に巡りめぐる
僕らの夢の傍らでは
オルゴールが
無辺際に
音色を響かせていて
形のない
想いで
この胸が占められては
3月11日は失踪し
あるはずの胸の痛みも
宇宙の闇へ飲み込まれていくように
儚い結末だけを残して遠く未来へ
走り去っていくのでした . . . 本文を読む
時を選ばずして
熱いものが
目から溢れ出る
海は
かつて
あの堤防を越えてきた
ああ!
それらは全く同じことだ
僕らを載せて廻るあの青い星も
耐えがたきを耐えて、叫んだんだよ きっと
星だって 泣くのに
僕ひとりで泣いてるように思ってたなんて
僕はとんだバカだよね…
. . . 本文を読む
祈りを繋げる青空を横断するしなやかなその電線の
遥か遠く伝達される僕らの名を持たぬ欲望の流れを
そのまま空へぶちまけたなら
うら若いその青も
波のように揺れ出す夏が来る
踊り狂うような夜を
艶やかに何度も越えてゆけば
ゆっくりと僕らのモーターが
回転し始めるのが分かるだろう
悲しみを纏った風が
今年も3月11日のホームタウンの街角を
駆け抜けていくのなら
眼を閉 . . . 本文を読む
あの日、僕の脳内のハードディスクに
終生忘れることのないだろう光景が
しかと焼き付けられた
小高い丘に立って
僕は歴史の動く瞬間を目の当たりにして
あっけに取られていた
我が家の目の前には
いつもはとても穏やかに流れる
「大川」と呼ばれる河があった
だがその日は
いつもと変わらぬ
何気ない光景が
そこには
なかった
歴史の大きな歯車が
動き出していくのを
. . . 本文を読む
春が来るので
いつとも知れず
白い影は泣いている
そっと手で
拭い去られるように
空は真っ新になって
泣き顔の名残は香り
一連の芝居は終わる
君が駆けていく
その歩幅も
宇宙の端から端へと
跨いでいくみたいな
大きさだ
雪の
燃えるような熱さを
冷えた口に放り込んで
僕は
魂に
精神という炎を灯した
あなたの祈りが
僕の心の中で生きるように
. . . 本文を読む