チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第98話 夕 立

2007年08月09日 | チエちゃん
 夏の午後、突然にやって来る夕立をチエちゃんは何となく趣き深い気がして、嫌いではありませんでした。

 東南の空に浮かんでいた入道雲が、いつの間にか黒い雨雲に覆われ、サワサワと涼しい風が開け放った窓から入ってきます。

 こりゃあ、一雨来るぞ!

そのうち、遠くからゴロゴロと雷鳴が聞こえ出しました。

 お母さんは、慌てて、洗濯物や土用干ししていた衣類などを取り込み始めています。チエちゃんも、お手伝いをして、洗濯竿を軒に入れました。

 ますます、辺りは暗さを増し、ポツポツと雨粒が落ちてきました。
開けきっていた縁側廊下の戸をガラガラ、ピシャッ、ガラガラ、ピシャッと閉め、二階の窓、チエちゃんたちの寝室の窓など、大急ぎで閉めに廻ります。
 最後の1枚を閉めた途端に、ザーッと激しい雨が降り出しました。

 フーッ、間に合った!!!

と思う間もなく、稲妻がピカッと走り、思わず両耳を手で塞ぐチエちゃんでした。

 ピカッと光ってから、雷鳴がするまで、10を数える間以上あれば、まだ遠い。
おばあちゃんが教えてくれたことを思い出しながら、10、数えます。
まだ、大丈夫。

いつの頃からか、雷様がおへそを取りに来るなどという話は大人が作り上げた迷信だと知っても、突然、停電となり、稲妻が走る様子を見れば、雷が落ちる恐怖を感じたものでした。
 また、このまま夜まで、停電が復旧せず、ろうそくの明かりで、夕飯を頂いたことも、いとをかし の夏の夜でした。