先回のブログで、獅子牡丹紋古銅菓子器を紹介しました。
この品物を入手して、一年程後、別の場所で、同じような物を見つけました。
先の品より、もっと地味で真黒でした。
見込みの模様もはっきりしない。
しかし、この雰囲気は、先の品物と同手の物だと、すぐにピンときました。
径 24.4㎝、高 8.0㎝、重 423g
4枚の稜花型で2段の胴、3足の獣脚をもった銅器です。口縁の覆輪を4個の金具で止めてあります。
左側が、先回の獅子牡丹紋菓子器、右が今回の品です。
少し拭いてやると、ツヤが出てきました。
器肌は、先回の品よりも凸凹が多いです。
脚の顔も先回の品とほぼ同じです。
胴は先回と同様、2段ですが、下段の方が大きくなっています。
見込みの彫りは、はっきりしませんが、光線の当て具合で、浮かび上がります。
やはり、蹴彫りで、雲龍紋が表されています。
ダイナミックな龍です。
内側の上段には、雲が彫られています。
外側の下段にも、雲が彫られています。
骨董の本に、今回の雲龍紋菓子器とよく似た品が載っていました。
やはり雲龍紋ですが、私の物と同じかどうかは、写真では判断できません。
胴が1段であるところが、私の品と異なります。
李朝物として売られていることもあるとか。
さらに、『法隆寺秘宝展』(平成2年)で、非常によく似た品が出品されていたとも書かれています。
そこでさっそく、『法隆寺秘宝展』の図録を求めました。
古銅大香炉(法隆寺蔵) 径 23.7㎝、高 8.2㎝
獣脚3足の稜花形容器です。口縁の覆輪を、花形の金具で止めてあります。
見込みには、大きな雲龍紋が線刻されています。
やはり胴は2段です。
内側の上段に雲龍紋、外側の下段にも雲龍紋。
ここまでは、私の品と全く同じです。
雲龍紋のデザインは、少し違うかもしれません。
線刻の方法については、蹴彫りかどうかはわかりません。
胴の上下2段の比率が同じで、私の品とは少し異なります。
明時代の品で、当初は、菓子盤などとして用いられただろうと記されています。
私の品を、もう一度ながめてみました。
法隆寺の品と非常によく似ています。
はっきりとしませんが、内側の上段の雲には、鍍金(鍍銀?)がほどこされているようです。
外側、下段には、鍍金はみられません。
それにしても、時代を感じる器肌です。
最初は、長年の間に、銅器の風化がすすんだためと考えていました。
しかし、よく観察して見ると、どうもそれだけではないようです。
念のため、しっかりと磨いてみました。
非常に硬い表面で、銅器の硬さではありませんでした。
一日かけて、必死に磨いてみると・・・・
だんだん、ツヤと輝きを増してきました。
銅器ではありえない質感です。
まるで、湖面から登り立つ龍のようです。
蹴彫りの模様もはっきりしてきました。
これは漆ですね。黒漆が、銅器の全面に塗ってあるのです。
いつの段階で塗られたかは不明ですが、非常に古い漆です。銅器と一体化しています。経年の表面の劣化も、通常の漆の剥げ方ではなく、長期間のうちに自然な剥離が起こってできた凸凹のようです。丁度、数百年たった古い木製漆器にみられる断紋に相当するでしょうか。
せっかくきれいにしたので、果物をのせてみました。
ぴったりときます。
これは、やっぱり香炉ではなく、菓子器ですね(^.^)
先回の獅子牡丹紋古銅菓子器も、よく見ると、うっすらと漆が塗ってあります。ただし、磨いてもあまり光りませんでした。
こうなったら、法隆寺の銅器も磨いてみたいのですが・・・(^.^)
今回のブログで、金工は一区切りとします。
素晴らしい!
それも、2つも!
一対になりますね。
なるほど、表面には漆が塗ってあるんですか。
これは、法隆寺でもご存知ないでしょうね。
ホント、この際、法隆寺の銅器も磨いてみたいのですね(笑)。
貴重なものをありがとうございます。
法隆寺どころか、日本にも行けない状態ですから(笑)
素人目にも漆のせいか、金属らしからぬ有機的な感じがします。
そしてリンゴが美味しそう。器に映える大玉
漆もここまで古くなると、金属と区別がつきません。それに、昔の銅は、山銅の可能性もあるし、てっきり時代を経た銅の味だと思いこんでいました。意表をつかれた感じです。法隆寺どころか、お釈迦様でもご存知あるめー(^^;
金属の冷たさがまったくありません。
これだけ地味な器だと、果物が映えますね。
クライストチャーチのBBで、朝食に、ものすごい種類と量の果物がでました。驚きました。