遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

古面27.顰(しかみ)1

2022年05月30日 | 古面

これまで、強い怨み、怒りをもった女の能画や能面、特に般若について、ブログで紹介してきました。

じゃあ、男はどうなんだ、ということになりますが、どうもピッタリと対応する物がないのです。

鬼女はあるけれど、鬼男はない(^^;

鬼は男が当たり前だから、あえて鬼男とは言わないと一般にはいわれています。ところが、鬼は善鬼から悪鬼まで幅広く、怨念の塊の鬼女に対して鬼男とはいかないのです。

鬼女に対する鬼男・・・しいて言えば、鬼神でしょうか。鬼神は、荒くれた神を表すのですが、時には人間を諫めます。怨念に凝り固まった男の鬼はなかなかいないのです(^^;

それではお話にならないので、能の場合に限定します。

般若系の鬼女に対応する男面は、顰(しかみ)、べしみ、獅子口などです。

今回の品は、古い顰面です。顰(しかみ)は、激しい怒りの男面で、名の由来は、”顔をしかめる”から来ています。

幅15.7㎝ x 長19.1㎝ x 高7.2㎝。重 206g。江戸時代。

江戸時代の初期ー中期と思われる古い面です。

木地の上に胡粉を塗り、さらに黒、赤の彩色がなされています。塗りの剥離が酷いです。

裏面もしっかりと彫られています(顔面によくフィットし、違和感を少なくするため)。また、裏面も黒塗りになっています(汗が木地に浸みこむのを防ぐため)。能面として使われた品だったかもしれません。

奉納面は、顎下が水平になっている場合がありますが、この品はリアルな造りです。

能面、顰(しかみ)の特徴は、

つり上がった眼と、

カッと開けた口、です。

怒りにあふれています。

ただ、塗りが剥がれて、小々滑稽で恨めしそうにも見えます(^^;

 

 

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能画15.人頭燭台で『鉄輪(かなわ)』

2022年05月28日 | 能楽ー絵画

今回の品は、珍しい墨絵の能画です。

70.4㎝ x 95.3㎝。昭和。

作者の詳細は不明です。

タイトルには「夜の祈り」とありますが、能『鉄輪(かなわ)』の前半部の情景描写と思われます。

鬱蒼とした大木が茂る中、何かに憑かれたように女が夜道を急ぎます。

 

能『鉄輪』は、若い女に走り、自分を捨て去った夫に対する激しい怒りと恨みで、鬼となった都の女の物語です。前半は、貴船神社へ参詣をする女に、丑の刻参りによって鬼に変身させるとの神託が下ります。後半、鬼女となった女は、凄い形相で恨みを語り、夫と新妻の人形を激しく責め苛みますが、陰陽師、安倍清明の祈祷により、とりあえずその場を去って行きます。

鬼女が登場する能は多くありますが、最後まで怒りを失わない設定の能は『鉄輪』だけだと思います。鬼女は一時退散するだけなのです。

鬼女のつける面も、怨念がつのった面で、前半は泥眼、後半は橋姫です。

『鉄輪』では、後半部、五徳に燃え盛る蝋燭をつけた鬼女の立ち回りが有名です。しかし、前半部、女が怨念に燃え、鬼女に変身する様も見所です。

今回の絵画の女は、いかにもいわくありげな表情をしています。目に金泥は塗られていませんが、面としては、泥眼と考えてよいでしょう(墨一色の絵だとばかり思っていましたが、ほんのわずかに彩色がなされています)。

 

真夜中に貴船神社を参詣する女 ・・・・・そうだ、人頭燭台。

和ろうそくをセットして、夜を待ちます ・・・・

女が現れました。

蝋燭を燈します。

芯をきらないと、どんどん焔が大きくなります。

危ないので、息を吹きかけて、消しました。

やがて女も、煙のように消えて行くのでした(^.^)

 

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人頭燭台

2022年05月26日 | 面白グッズ

故玩館の面白グッズコーナーに置いてある燭台です。

全体:高さ 38.7㎝。台:17.7cm x 11.3cm x 9.8㎝。時代不詳。

これまで、しっかりと眺めた事がなく、木製の燭台だとばかり思っていました(^^; 

実際は、台と軸が木製、人頭と火皿部は銅製です。

光の当たり様によって、何とも言えない雰囲気が出ます。

 

人頭の造りからして、日本製ではないようです。アフリカか東南アジア方面の品でしょう。

重い木のブロックに、燭台の木の軸棒がしっかりと挿しこまれています。

金具が大きく、相当太いロウソクでないと金具にささりません。そんなロウソクはどこで入手できるのでしょうか。

まわりには、熔けた蝋が溜まっています。

人頭の横側にも蝋が飛び散っています。

 

こうやって見ると、かわいい乙女のようですが・・・

光の当たり具合で、

怨みの表情に変わります。

ロウソクに火がともった時の表情や如何に(^.^)

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蛙燭台?

2022年05月24日 | 面白グッズ

よくわからない品です。

高 8.7㎝。重 217g。鉄製。現代?

蛙が頭上の皿を支えています。

 

灯火器でしょうか。

皿に油を入れて、燈芯に火をともす?

しかし、全く使用された形跡はありません。油のシミを探しても、どこにもみあたりません。

どうも、灯火器ではなく、お遊びで作られた置物の可能性が高い・・・面白グッズの一つですね(^.^)

ならばということで、いつどこで入手したか全く記憶にない、チープな玉類をのせてみました。

オープン宝石箱(^^;

 

手に取ってみると、意外と触感がよく、

今時のペットとしても、そう違和感はない!?(^.^)

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金工24.手燭台

2022年05月23日 | 金工

先回のブログで、別府細工の芯入れ、芯切を紹介しました。

別府細工の燭台などについては、あらためてブログアップします。

ところで、普通の燭台はなかったか・・・と探したところ、隅の隅にころがっていたのがこの品です。

幅 14.0㎝、長 26.2㎝、高 13.1㎝。江戸後期ー明治時代。

手燭台とよばれる移動式の燭台です。柄が付いていて、手で持ち歩けるようになっています。

家にあった物ですが、茶事に使われた物か、普段使いの品だったのか、わかりません。

火皿には蝋がこびりついています。また、蝋燭受の輪が歪んでいます。相当使い込まれています。ご先祖様のどなたが使っていたのでしょう。

裏を見ると、剥がれかかった漆が残っています。

柄の部分は漆が擦り切れています。

元々は、黒漆が塗られていたようです。利休形の手燭台は、真塗りにするのだそうですから、この手燭は、茶事用だったのですね。しかも、歪んだ蝋燭受といい、手ずれの漆塗りといい、相当に使いこまれた品であることがわかります。毎日のように茶会を催さないと、ここまでボロボロにはならないでしょう。

故玩館を大改修した時、待庵かと見紛うボロボロの茶室の修復まではとても手(金(^^;)が回らず、きれいさっぱり撤去しました。一方、故玩館の床をとり除いてみると、すべての部屋に炉をきった跡がありました。多くの古民家改修を手掛けてきた設計士ですが、この家は何だったのでしょうね、と首をかしげていました(^^;

何代か前のご先祖にも、遊びをせむとや生まれけむ、の人がいたのですね(^.^)

コメント (4)
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