遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

根来塗小箱 ~熟女と土鈴~

2021年09月30日 | 漆器・木製品

今回は、根来塗りの小箱です。

14.2㎝x10.7㎝、高4.9㎝。江戸後期。

これまで紹介してきた根来段重に較べて、ずっと小さく、華奢です。薄い木でできていて、軽いです。

用途もはっきりしません。いずれにしろ、小物入れです(^^;

只・・・

湾曲した器形や脚などは、上手の品を思わせます。

まさか、室町~江戸初ということはないでしょうが(^^;

手に取ってみると、いかにも可憐。

故玩館来訪時、口うるさいオバサマ方も、「あら、カワイイわね」とおっしゃって下さいます(^.^)

ならばもうひと踏ん張りして、中に収める物をさがさねばなりません。

かといって、探せども探せども、武骨なガラクタの山また山・・・そして・・・・

おおこれなら、と見つけたのが、

美江寺土鈴。2.5ー3.7㎝。戦前。

大黒さん。

独楽。

これなら、文句なく、オバサマ方に「カワユイ」と言っていただけるでしょう(^.^)

美女と野獣ならぬ、熟女と土鈴(^.^)

 

ところで、この小箱、形は古風ですが、塗りはどうなのでしょうか。

例によって、顕微観察をしました。

驚いたことに、朱漆を擦った痕が全くありません。

以前紹介した根来塗堤重では、このように、朱漆層を擦り取った痕が歴然としていました。

今回も当然、擦った痕が見えるだろうと思っていたのですが、見事にハズレ。これは一体??? ひょっとして、本物の根来塗!?????!

ま、それはないとして、考えられるのは、擦るのではなく、塗る方法です。まず、黒漆を全面に塗り、その上へ朱漆を塗ります。この時に、塗り残した部分が黒模様となるわけです。ただ、単純に塗り残しただけではミエミエです。自然に見えるよう、うまく暈しを入れてあります。

 

しかし!!!!!

正面:

背面:

両側面:

箱の正面と背面、二つの側面、ともに、模様のパターンが似すぎてませんか!!

いくら何でも、自然の模様がこんな風にステレオタイプのはずはありません。

簡単に塗り残しの黒模様は出せるのですから、もう少し自由にキャンバスを使って欲しかった(^.^)

 

この根来塗小箱を見ていて、なぜかオバサマ方の化粧を思い出してしまう遅生でありました(^^;

 

 

 

 

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肥松は透けるトン

2021年09月29日 | 漆器・木製品

これまで、2枚の肥松盆を紹介しました。

柾目と輪切り、それぞれに味があります。

ところで、ずっと以前、何かで読んだことがあります。

「肥松は光を通す」

ええっ、いくらなんでも、そんなバカラ(^^;

小さな盆ですが、板の厚さは、6,7㎜はあります。

木材が光を通すなんて、タケシの怪しい番組でもあるまいし(^^;

 

ダメ元で、裸電球にかざしてみました。

ん?! なんか、赤っぽい。

部屋を暗くしてやると・・・

柾目模様が赤く浮かび上がってくるではありませんか。

じゃあ、もう一つの輪切り盆の方はどうか?

電燈にかざすと・・・・

ほんのわずかに、赤い部分が見られます。タブレット付属のカメラではとらえられません(^^;

もうひとつのポケットカメラで見ると・・・

ボーっと、スケルトンが浮かび上がります。

なぜか青色、神秘の宇宙。

柾目の盆の方は・・・

やっぱり、青い柾目模様。

肥松が透けるメカニズムはよくわかりませんが、おそらく、内部の松脂がだんだん樹脂化して、琥珀のようになるからではないでしょうか。

これでまた一つ、来館者をビックリさせるネタができました(^.^)

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肥松香盆

2021年09月28日 | 漆器・木製品

先回は、肥松の煎茶盆を紹介しました。

今回は、肥松の香盆です。

26.4cm x 16.7㎝、高 1.7㎝。明治時代。

先回の肥松煎茶盆より、少し小振りです。また、縁も浅いので、香盆としました。もちろん、煎茶盆として使うことも可能です。

先回の盆は松の柾目を使っていました。

一方、今回の品は、松の輪切りをそのまま使っています。

上品な柾目に対して、ワイルドな輪切り。

脂分が非常に多く、色も濃い茶色です。

一番の見どころは、太い幹から出た小枝の部分。

 

幹の中心から伸びています。まだ、赤ちゃんの段階の枝も見えます。

ひび割れも、中心から出ていますね(^^;

この盆を作るにあたって、やはりこの枝を意識したのでしょう、外側に少し出っ張らして枝を強調しています。なかなか芸が細かい(^.^)

 

そこで、この盆に合う品を探しました。

8.7㎝ x 4.9㎝、高 5.2㎝。江戸時代。

京焼だと思います。鶴香合は多くありますが、この品は風雅な落ち着きがあります。

渋い肥松香盆の上で、場所を得たかのようです。

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肥松煎茶盆

2021年09月27日 | 漆器・木製品

今回は、肥松の煎茶盆です。

27.2㎝ x1 9.8㎝、高 3.2㎝。大正・昭和。

肥松とは、松の種類ではなく、歳を経て脂分(松脂)が多く含まれた松材のことを指します。下方の根に近い部分が良いとされ、松明に用いられました。また、独特の味わいがあるので、盆や棗など木工製品にも加工されています。

肥松の特徴として、長い間使われ続けるうちに、艶と風格が増します。内側からわずかに浸みだす油分を摺りこみながら拭き取ってやると、琥珀色の被膜が作られるからです。したがって、使った後の乾拭きの繰り返しが決め手となります。

この盆は、まだこれからが育ち盛り。

ということで、その辺に転がっていた煎茶器をもってきました。

九谷木米の煎茶器、昭和の品です。

これなら粗相をしても、精神的ダメージは極小(^^;

ざっと、こんな感じでしょうか(^.^)

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脇息(きょうそく)

2021年09月26日 | 漆器・木製品

時代劇でおなじみの脇息(きょうそく)です。

横 41.8cm、縦 39.5cm、高さ 27.6㎝。江戸時代。

骨董に狂いはじめたころ、右も左もわからないまま、思わず手を出した品です。

 

,

相当古い布です。扇面模様でしょうか。

かなりへたっています。

骨董屋女主人の言う「しょう(性?生?精?)がぬけた」状態ですね(^^;

この種の品のウリは蒔絵と品格。

どんなお方が使っていたのか、興味あるところです。

脇息は今でも作られています。将棋の藤井聡太棋聖、対局の時に脇にあります(もちろん、対戦相手の脇にも)。でも、普通の生活の中ではなかなか見られません。

ところが、どこの骨董市をのぞいても、脇息はあります。誰も手を出しませんから(^^;

そんな不要物をなぜ買った?

一度、言ってみたかったのです・・・・

『苦しうない。もそっとちこうよれ』(^.^)

 

 

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