遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

ハーバード大学の美術館、博物館

2019年01月30日 | 故玩館日記
ハーバード大学

 先のブログで、ボストン市内にあるハーバード・メディカルスクールを紹介しましたが、ハーバード大学の本体は、隣のケンブリッジ市にあります。
 白いチャペルのあるハーバードヤードを中心に、その周辺には大学の様々な建物が配置されています。


                    大学正門



              Widener Library(中央図書館)
 Library


                  図書館内部

 ハーバード大学には、70以上もの図書館があります。大学図書館では、世界最大と言われています。ハーバード図書館群の中心となるのが、ハーバードヤードの端に位置する、このWidener Libraryです。




            創設者John Harvardの像




                  Harvard Cathedral




                  卒業記念式典




                    物理学教室




                 サイエンスセンター

 ハーバード大学の構内は、日中、観光客も含め、人々であふれています。Harvard Coopで土産品を買うのも良いですが、大学の雰囲気を味わうなら、人の少ない早朝の訪問がおすすめです。
 ほとんど誰もいない広大なハーバードヤードの芝生には、木立からリスが降りてきて、盛んに遊んでいます。大学の建物に囲まれた緑の広場の中にぽつんといると、毎日の生活ではなかなか味わえない気分にひたることができます。



ハーバード大学の美術館、博物館

 ハーバード大学には、多くの美術館、博物館があります。教室が保有しているコレクションなども含めれば、20を越えるのではないでしょうか。
 近年、大学の機構改革がすすみ、それらは整理、統合されつつあります。外部向けには、ハーバード美術館とハーバード博物館として整備がすすんでいます。それに伴い、訪れる人も急増しています。
 かつてのように、他に誰もいない部屋のなかで、自分ひとり、名画や貴重な資料に囲まれている・・・そんな贅沢は望めなくなってきています。


ハーバード美術館
 ハーバード大学には、フォッグ美術館、ブッシュ・ライジンガー美術館、アーサー・M・サックラー美術館(the Fogg Museum, Busch-Reisinger Museum, Arthur M. Sackler Museum)の3つの主要な美術館があります。フォッグ美術館を中心に、これらを統合し、長い工事の末、2014年に、ハーバード美術館が誕生しました。その名称も、Harvard Art Museumsと複数形であり、一つの建物に統合されたとはいえ、3つの美術館はそれなりの独立性を保っています。


                                        ハーバード美術館
     赤煉瓦部分が、かつてのFogg Museum の建物

 ハーバード美術館は、3つの性格の異なる美術館のコレクションを母体にしているため、美術館には、非常に幅広い美術品が収蔵されています。日本の美術品もあります。
 フォッグ美術館は、1985年に建設され、中世から現在までの西洋絵画、彫刻、装飾芸術、写真、版画、そしてデッサンの所蔵で有名です。
 ブッシュ - ライシンガー美術館は、1903年に設立され、ドイツ語圏ヨーロッパ諸国の芸術に焦点を当てた美術館です。
 アーサー・M・サックラー美術館は、1985年に設立された新しい美術館で、アジア、中東、地中海地域の芸術品を多く所蔵しています。


                              フォッグ美術館(Fogg Art Museum)
       現在は、ハーバード美術館の正門となっている

 実は、私は、当初、フォッグ美術館の隣の大学アパートに住んでいました。結構年期の入った部屋で、ゴキブリなぞもゴソゴソいました。
 フォッグ美術館へは、毎日のように立ち寄り、中世宗教画や印象派の絵を独り占めにして楽しんだ後、誰もいないルネッサンス様式の回廊に囲まれた中庭で、ボーッと過ごしていたものです。が、改装後は、中庭も近代的な展示スペースとなり、人であふれています


       ハーバードのアパート
   (フォッグ美術館の南隣り、私の部屋は4階)



ハーバード博物館 
 ハーバード大学には、多くの博物館があります。そのうちで、規模の大きなものは、植物博物館、鉱物学地質学博物館、比較動物学博物館(Botanical Museum, Mineralogical and Geological Museum,  Museum of Comparative Zoology)、ピーボディ考古学民俗学博物館( Peabody Museum of Archaeology and Ethnology)の4つです。
 このうち、自然科学系の3つの博物館を、ハーバード自然誌博物館(Harvard Museum of Natural History、文字通りには自然史博物館ですが、内容からすれば自然誌博物館の日本語が妥当)と呼んでいます。ピーボディ考古学民俗学博物館も同じ場所にあるので、4博物館を合わせて、ハーバード博物館と呼ぶこともあります。

ハーバード自然誌博物館
 植物博物館は、500万にもおよぶ世界最大級の植物標本やガラス細工の美しい植物模型(グラスフラワーズ)で有名です。
 鉱物学地質学博物館は、地球上のほとんどすべての鉱物標本を所蔵しています。
 比較動物学博物館では、動物や鳥の剥製、魚・虫の標本、恐竜の骨や化石が展示されています。
 大学の積極的な情報発信により、近年、来館者が急増しています。が、それでも、趣のある古い建物の中で、世界最大級のコレクション類をゆっくりと鑑賞することができます。


                ハーバード自然誌博物館

ピーボディ考古学民俗学博物館
 ピーボディ考古学民族学博物館は1866年に設立されたアメリカ最古の人類学博物館です。この博物館の設立は、セイラムのピーボディ博物館と同じく、ジョージ・ピーボディの出資によります。アメリカを中心に、世界各地の民俗学的資料が120万点、所蔵されています。
 自然誌博物館に隣接した建物ですが、内部はつながっています。


           ピーボディ考古学民俗学博物館



      
       








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文化の街ボストン

2019年01月29日 | 故玩館日記
文化の街ボストン

 ボストンはアメリカでは特異な都市です。イギリスからの独立に深く関わり、建国の精神と伝統文化を守る気風が今でもいきています。
 地元の人は、自分たちをBostonianとよび、進歩的なこの地で生まれ育ったことに誇りをもっています。
 この街はヨーロッパの雰囲気を色濃く残しながら、先端技術や新しい文化、芸術の発信場所にもなっています。


         上空から見たBoston市街



             Copley Square


             Boston Common


              Quincy Market


            Quincy Market


          ボストン大学裏の通り



            チャールズ川



ボストン美術館

 ボストンには、多くの博物館、美術館があります。
Children's Museum や Museum of Scienceは、地元の人、観光客ともに人気があります。
 なかでもボストン美術館(Museum of Fine Arts)は見逃せません。特に、日本の絵画、浮世絵、工芸品のコレクションは、質、量ともに傑出しています。
 日本国内にあれば、重文、国宝級の物がいくつかあります。所蔵されている膨大な浮世絵はまだ、整理、研究の途上にあり、今後、どんな大発見がなされるか楽しみです。
 ところが、あまりにも膨大であるため、展示されているのは日本コレクションのごく一部にすぎません。見たい作品にめぐり会えるとは言えないのです。美術館の展示替えや催し物などをこまめにチェックする必要があります。


    Museum of Fine Arts(ボストン美術館)

 ボストン美術館がなぜこれほど充実した日本の美術品を所蔵しているかといえば、それは、モース、フェノロサ、ビゲローなど、明治初期に来日したアメリカ人たちのおかげです。この3人は、知り合い同士で、モースが他の2人を日本へ導いたと言われています。
 文明開化、富国強兵のかけ声の下、古くさい日本の象徴として見捨てられようとしていた美術品をすくい集めたのは、彼らだったのです。廃仏毀釈により、興福寺の五重塔が、 25円で売りに出されたほどひどい状態に、日本はありました。彼らは、文化に対する深い見識、卓越した審美眼、研究への情熱をもって、日本各地をまわりました。収集には、岡倉天心をはじめとする日本人も大きく協力しました。
  その結果、モースの陶磁器5000点、ビゲローの収集を中心とした浮世絵5万点と仏像、漆器、刀剣などの工芸品、そして、「平治物語絵巻」、俵屋宗達「松島図屏風」をはじめとするフェノロサによる絵画が多数収蔵されました。いずれも名品、優品ぞろいであり、海外では、最大の日本美術コレクションと言われています。
 フェノロサは、ボストン美術館の初代日本部長に就き、その後、岡倉天心も東洋部長になりました。


ハーバード・メディカルスクール
 博物館、美術館とならんで、ボストンを特色づけるのは大学です。世界的に有名なのは、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学です。が、この2大学はボストンではなく、となりのケンブリッジにあります。といっても、行政的な話しであって、実際は、チャールズ川を挟んでいるだけで、街はずっと続いています。
 ハーバード大学の美術館、博物館については、次回のブログで。

 さて、ボストン美術館から、グリーンラインで駅ひとつ分、西へ10分ほど歩くと、趣のある小高い地区に出ます。この辺りは、メディカルエリアとよばれ、医学系の大学と大病院が集中している場所です。


         メディカルエリア界隈

 その中核は、ハーバード・メディカルスクール(ハーバード医学大学院)です。日本の医学部に相当しますが、アメリカでは、4年制大学を卒業してからしか医学へすすめませんから、医学生の出身学部はさまざまです。
 ハーバード・メディカルスクールの周辺には、ハーバード公衆衛生大学院、ハーバード歯科大学院などがあります。 
 このように、ハーバード大学のうち、医学系の諸機関は、ボストン市内にあります。また、ハーバード・ビジネススクールも、ケンブリッジではなく、ボストン市内にあります。

 もうおわかりと思いますが、ハーバード大学は、スクール(大学院)が中心の学群集合体なのです。日本の大学に相当するのは、Harvard Collegeだけです。
 College と対等なのがSchool(スクール)です。ハーバード大学には、メディカル・スクール、ビジネス・スクール、ロー・スクールなど11ものスクールがあります。かつては、名門女子大Radcliffe College(ヘレン・ケラーが卒業した学校として有名)も、ハーバード大学を構成するCollegeのひとつでしたが、1990年に吸収合併され、現在は大学の一機関になっています。



     ハーバード・メディカルスクール
      右の建物の4階手前側が、私が所属した研究室




Harvard School of Public Health(ハーバード公衆衛生大学院)


         Children's Hospital

 メディカルエリアをもう少し南へ行くと、Brookline地区になります。J.F.ケネディの生家があるなど、かつては高級住宅地であった地区です。
 また、ボストン美術館を、北東(メディカルスクールとは反対方向)に15分ほど(green lineで1駅)歩けば、ボストンレッドソックスの本拠地Fenway Park に出ます。
 残念ですが、メディカルエリア、美術館周辺も含め、これらの旧住宅街は、NYと同様、大都市の宿命、治安の悪化がすすんでいます。夜間の徒歩外出は控えねばなりません。


         ハーバード大学警察
ボストンのメディカルエリアとケンブリッジのハーバード大学周辺をパトロールしている。


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アメリカ東部セイラムのピーボディ博物館

2019年01月26日 | 故玩館日記

アメリカ東部セイラムのピーボディ博物館

 先回のブログで、アメリカ東海岸の小都市セイラムにあるピーボディ博物館、モースコレクションの縮緬細工を紹介しました。

 私は、1980年頃、ボストンに住んでいました。ピーボディ博物館のあるセイラムは車で30分ほどの距離の小さな港町で、休日には、この地をしばしば訪れていました。


          アメリカ、マサチューセッツ州セイラム
車は、Buick Centurion、7500cc、フルオートマチック、特別仕様車。
知り合いの米国人ディーラーが自分用に所有していたものを譲ってもらいました。



                   セイラムの街はずれ      

 セイラムの街の一角に、小さな表示がなければそれとは気づかないような古い建物があり、それがピーボディ博物館でした。実業家J.ピーボディの寄付により、1867年に設立され、モース自身、館長をつとめました。
 明治初期、モースが日本で収集した膨大な民具、日用品のコレクションは、陶磁器の5000点以外、この博物館に寄託されました。古陶磁の方は、ボストン美術館に収蔵されています。

 私が訪れていた当時は、古びた建物の中に、ぎっしりと、日本の農機具や日用品が並べられ、不思議な空間に迷い込んだかの様でした。それにしても、明治の初め、誰も見向きもしなかった品々をこんなにも集め、はるばる海を渡って運びこんだモースには、ただ驚くばかりです。


            ピーボディ・エセックス博物館

 その後、1990年~2000年代にかけて、ピーボディ博物館は大改修が行われ、ピーボディ・エッセクス博物館として生まれかわりました。いまでは全米で屈指の民俗博物館となっています。



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モースの縮緬細工コレクション

2019年01月21日 | 縮緬細工

モースの縮緬細工コレクション


 2回にわたって、故玩館の縮緬細工の背守りを紹介してきましたが、はたしてこれらは、本当に背守りなのでしょうか?

 背守りとは、子供を邪悪なものから守るために幼児衣服の背に縫いつけた模様のことです。詳しくは、また、後日、ブログで。
 
 いろいろ調べましたが、資料は多くありません。そのうちで、興味深いものを見つけました。

 エドワード・S・モースEdward Sylvester Morseのコレクションです。モースは、明治の初め、お雇い外国人として滞日したアメリカの学者で、大森貝塚の発見者として有名です。明治10年代に、三度来日し、膨大な量の日本の民具、陶磁器などを収集し、アメリカへ持ち帰りました。
 そのコレクションは、アメリカ東部の街セイラムにあるピーボディ博物館に所蔵、展示されました。



  国立民俗博物館編『モース・コレクション』 小学館、1990年













 これは、モースコレクションを紹介した本です。その中に、このブログで紹介してきた縮緬細工の背守りに非常によく似た品が載っています。

 モースコレクションの特徴は、収集品が明治10年代に日本で使われていた品であることです。ですから、この本の縮緬細工は、明治初期の物です。
 縮緬細工は、江戸後期から昭和初期にかけて、盛んにつくられたと言われています。が、個々の品の年代を特定することは非常に難しい。その点で、モースコレクションは大変貴重です。

 さて、この資料でもう一つ注目されるのは、「迷子札」と記されたページに縮緬細工が載っていることです。確かに、6個の縮緬細工のひとつの裏面に、迷子札(紙?)がはさんであります。
 ということは、この縮緬細工は、幼児が迷子になった時、住所、氏名がわかるようにするための品だったのでしょうか。
 しかし、他の品は、板状の物を挟めるようになっているようには見えません。故玩館の縮緬細工の背守りにも、裏側に物を挟めるようになっている品はありません。

 また、他の資料には、縮緬細工の裏側に、直接、子供の住所、氏名などを書き込んだとありますが、故玩館の縮緬細工にはそれらしき物は全くありません。

 これらを総合するなら、縮緬細工の背守りは、本来の子供の守りというより、装飾品、あるいは、子守りをする女性の楽しみのために作られたと考えるのが妥当でしょう。

 先の迷子札をよく見ると、板に穴があけてあります。穴の大きさからすると、糸ではなく丈夫な紐を通したと思われます。おそらく、帯紐に結わえて用いたのでしょう。
 縮緬細工の背守りも、同様にして用いられたとも言われています。
 ただ、縮緬細工についている紐は、いずれも細く、縫い糸をそのまま輪状にしているものも多いです。これでは、細めの帯紐に結わえつけたとしても、あまりにもバランスがわるいし、華奢ですぐに切れてしまうような気がします。
 むしろ、赤児の産着やねんねこ半纏の後部に背守りのように付けて、ゆらゆら動く縮緬細工を子守りの女性が楽しんだのではないでしょうか。
 これらの縮緬細工を見ていると、泣く子を寝かしつけながら、次は何を作ろうかと思いをめぐらす少女の顔が浮かんできます。




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縮緬細工の背守り(2)

2019年01月18日 | 縮緬細工
縮緬細工の背守り(2)

もうすこし、縮緬細工の背守りを見てみましょう。

いろいろな細工物があります。
いずれも、手作りの味わいにあふれています。

つけ紐は、縫い糸で代用した細いものもあります。
いくつかの品は、つけ紐自体が失われてありません。

































































































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