遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

祝!gooブログ4周年 渡金双鳥団華紋青銅鉢

2023年07月08日 | 金工

毎回、ネタ探しで四苦八苦のgooブログですが、早くも、4年がすぎました。いつものガラクタより、ワンランク上の物を出さねばと探し出したのが今回の品です。

径 30.1㎝、高 8.8㎝、高台径 16.2㎝、最大幅(含把手) 48.4㎝。重 1.54㎏。中国唐時代。

器体は四輪花型の青銅器、内と外、全面に毛彫りで模様が彫られ、渡金が施されています。

見込みには、大きく、つがいの鴛鴦が凸紋で配してあります。

各模様には、非常に細かな彫りが施されています。

中央の模様は、周囲や外側の模様とは異なり、凸型で盛りあがっています。一方、対応する底の部分は平らです。ですから、器の中央部を叩いて鴛鴦模様を浮き出したのではなく、別の凸型金属板に模様を彫り、それを見込みに張り付けてあるのです。

中央の鴛鴦のまわりを八個の団華紋が囲っています。この団華紋も、宝相華唐草の花の上にがあしらってあります。大変目出度い図柄です。

器の外周も内側と同じように、渡金が施された団華紋が八個あしらわれています。

打ち出し金具でできた2個の把手は、非常に頑丈で、この器が実用品であることが伺えます。

把手の取り付け具は、鬼面。

高台の外周にも、宝相華が。

入手時、今回の品は全面が灰色の堅い土で覆われていて、発掘品特有の錆び付いた金属鉢にしか思えませんでした。しかし、所どころにキラっと光るものが見えていて、これはひょっとして名品かも知れないと思い、家に連れて帰りました。

表面にびっしりとこびりついた土錆を、指の爪で少しずつ、根気よく剥ぎ取っていくと、見事な金色の鳳凰があらわれてきました。錫ヘラや竹べら等、いろいろな道具がありますが、人間の爪ほど、ほどよい堅さと絶妙の形をもったものはありません。本体を傷つけないように慎重に作業をしたので、全体の土錆びを剥がし終わるのに、1か月かかりました。爪も相当傷みました(^^;

底部には、取り切れない土錆びが残っています。

このような土錆びは、2、30年の土中では出来ようがありません。陶磁器の窯跡付近の物原からは、多くの陶磁器破片が埋もれています。その中には、ほぼ本体の一部になった土錆びに覆われている物があります。数百年の間に、土中成分と陶磁器表面が反応した結果です。今回の品は、中国の贋物によくある、赤土で汚したような品ではなく、何百年も土の中に埋もれていた物で間違いないと思います。ただ、金属は、陶磁器ほど、土成分との親和性が大きくないので、金属鉢が土錆びと一体化するまでには至らなかったのでしょう。それが幸いして、何とか土錆びを落とすことができました(^.^)

今回の品と非常によく似た物が資料にありました。中国の名刹、法門寺の地下の部屋から見つかった品です。当然、土錆びにまみれてはいません。それに、鉢本体は、青銅ではなく銀製です。

中国の古陶磁器の大半も、風化はあるものの、土錆びが堅くこびり付いてはいません。これは、それらのほとんどが明器で、地下の空間に納められていたからです。

それに対して、今回の品物は、直接土中に埋もれていた物です。中国では、以前は莫大な量の古物が発掘されていました。文革時、あまりに大量の品が世界中に流出したため、中国古陶磁の相場が、数十分の一に低下したほどです。そのため、今回のような品にはこれまで目が向けられませんでした。

しかし、現在の中国では、大規模な発掘は不可能です。盗掘は、当然厳禁です。そこで、今回のような品物にスポットライトが当たることになります。

では、今回の品物はどこにあった物なのでしょうか。良く知られているように、中国ではしばしば大きな戦乱が起こり、体制が変わりました。豪族やお金持ちの中には、安定した時代が来るまで、自分のお宝を土中に埋めておこうとした人がかなりいたようです。日本でも、御先祖が裏庭のどこかに〇〇を埋めたそうな、という話はよくありますね。これが中国では、かなり一般的であったようです。

このような事が書かれた記事を、昔、骨董雑誌で読みました。しかし、どれだけ探しても、その記事が見つかりません。少々悔いの残る4周年ブログになってしまいました(^^;

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金工24.手燭台

2022年05月23日 | 金工

先回のブログで、別府細工の芯入れ、芯切を紹介しました。

別府細工の燭台などについては、あらためてブログアップします。

ところで、普通の燭台はなかったか・・・と探したところ、隅の隅にころがっていたのがこの品です。

幅 14.0㎝、長 26.2㎝、高 13.1㎝。江戸後期ー明治時代。

手燭台とよばれる移動式の燭台です。柄が付いていて、手で持ち歩けるようになっています。

家にあった物ですが、茶事に使われた物か、普段使いの品だったのか、わかりません。

火皿には蝋がこびりついています。また、蝋燭受の輪が歪んでいます。相当使い込まれています。ご先祖様のどなたが使っていたのでしょう。

裏を見ると、剥がれかかった漆が残っています。

柄の部分は漆が擦り切れています。

元々は、黒漆が塗られていたようです。利休形の手燭台は、真塗りにするのだそうですから、この手燭は、茶事用だったのですね。しかも、歪んだ蝋燭受といい、手ずれの漆塗りといい、相当に使いこまれた品であることがわかります。毎日のように茶会を催さないと、ここまでボロボロにはならないでしょう。

故玩館を大改修した時、待庵かと見紛うボロボロの茶室の修復まではとても手(金(^^;)が回らず、きれいさっぱり撤去しました。一方、故玩館の床をとり除いてみると、すべての部屋に炉をきった跡がありました。多くの古民家改修を手掛けてきた設計士ですが、この家は何だったのでしょうね、と首をかしげていました(^^;

何代か前のご先祖にも、遊びをせむとや生まれけむ、の人がいたのですね(^.^)

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金工23.別府細工「芯入れ」「芯切」

2022年05月21日 | 金工

突然ですが、金工の品物です。

燭台とセットで使う芯切りと芯入れです。

芯入:最大径 5.2cm(把手状の鉤部含まず)、高 7.1㎝。重 206g。蓋:最大径 4.2㎝、重 24g。

芯切り:長 10.6㎝、幅 3.1㎝。重 25g。 江戸時代後期。

以前、古伊万里コレクターDr.Kさんが染付山水紋灰吹きを紹介されていました。それに対して、この品は、芯入れではないか、とのコメントが寄せられました。

故玩館には、陶磁器の芯入れはありませんが、銅器ならと探しだしたのが今回の品です。

江戸時代、燭台に和ろうそくを燈す場合、熱で蝋が融けて芯がどんどん長くなり、燃えすぎるため、適宜、芯を切って、長さを調節する必要がありました。そこで使われたのが、芯切りと芯入れです。

別府細工は、江戸時代後期、美濃国別府村(現在のJr東海道線穂積駅付近)で、広瀬清八、茂十郎親子によって、30年ほどの短期間だけ作られた蝋型銅器です。唐子や唐人がモチーフとなった燭台や水滴など、エキゾチックな品々が作られ、全国に行きわたりました。この場所は当時一寒村にすぎず、どうしてこのような品が造られたのか、大きな謎です。現存する品は限られていて、骨董市場では良い(良すぎる(^^;)値がつきます。特に地元には熱狂的なコレクターがいて、地元高の品の代表になります(^^;

そんなわけで、故玩館の近隣ではありますが、ビンボーコレクターとしては、小品をぼつぼつと(^.^)

今回の品は、大きさからして、50cm超の大型燭台の付属品でしょう。そんな途方もない本体にはとても手が出ませんから、はぐれた物でも、と勇んで求めた品です(^^;

砂金袋でしょうか。蝋型銅器特有の肌が魅力的です。

所々に孔が開いていますが、破れ袋を意識して、人為的に作られたものでしょう。

紐の装飾は、別府細工にしばしば見られる装飾です。

よく見ると中央に龍の模様が施されています。

顔のまん中に丸い目が一つと、唇がめくれ上がった龍は、別府細工に時々見られます。

蓋にも龍のような模様があります。

蓋の摘みは紐つくりです。

芯切りは鋳造ではなく、真鍮の板で出来ています。何の変哲もない芯切り鋏ですが、柄に丸い凸装飾が施されています。

芯入れは底が平らでなく、床に置いた時安定していません。平らな所に置くようにはなっていません。別府細工の燭台は、梯子や網干をモチーフとした物が多いので、そこへ芯入れの鉤部を引っ掛けておくようになっていたと思います。また、大型燭台の途中にはフックがついていて、芯切はそれに掛けておいたのでしょう。

どこかにあるであろう名品、大型別府細工燭台を想像しながら、掌の上で小さな品を弄んでみました。

蝋型銅器の質感は、何とも言えません(^.^)

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金工22 琴高仙人銅花瓶

2020年06月16日 | 金工

先のブログで、琴高仙人の古伊万里大皿を紹介しました。

今回は、琴高仙人の銅花瓶です。

相当昔に入手した品です。小品にしては、かなり高価でした。

       幅 4.6㎝、高 11.0㎝

 

反対側。

 

仙人というより少年に見えますが、やはり琴高仙人でしょう(^.^)

 

反対側は、波濤のみ(何かいるようにも見えますが)。

 

象耳がついて、これは仏花器でしょうか。

仏花器なら、値はつかない(^^;

しかし、仏花器にこの図柄なら、ある意味、珍品かも、と気をとり直しました(^.^)

 

例によって、掌の上に転がしてみると、それなりに楽しめます。

 

底をパテで埋めたのは、水漏れを止めるため(^^;

昔のことではっきりとは覚えていませんが、花を入れた記憶がかすかにあります。

 

あらためて、野の花を入れてみました。

嫌われ者のドクダミですが、空中へ舞い立とうとする琴高仙人に手向けるには案外ふさわしいのかもしれませんね(^.^)

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金工21 法隆寺什器? 雲龍紋稜花三足古銅菓子器 

2020年05月21日 | 金工

先回のブログで、獅子牡丹紋古銅菓子器を紹介しました。

この品物を入手して、一年程後、別の場所で、同じような物を見つけました。

先の品より、もっと地味で真黒でした。

見込みの模様もはっきりしない。

しかし、この雰囲気は、先の品物と同手の物だと、すぐにピンときました。

                  径 24.4㎝、高 8.0㎝、重 423g

4枚の稜花型で2段の胴、3足の獣脚をもった銅器です。口縁の覆輪を4個の金具で止めてあります。

左側が、先回の獅子牡丹紋菓子器、右が今回の品です。

 

少し拭いてやると、ツヤが出てきました。

 

器肌は、先回の品よりも凸凹が多いです。

 

脚の顔も先回の品とほぼ同じです。

胴は先回と同様、2段ですが、下段の方が大きくなっています。

 

見込みの彫りは、はっきりしませんが、光線の当て具合で、浮かび上がります。

 

やはり、蹴彫りで、雲龍紋が表されています。

 

ダイナミックな龍です。

 

内側の上段には、雲が彫られています。

 

 

 

外側の下段にも、雲が彫られています。

 

骨董の本に、今回の雲龍紋菓子器とよく似た品が載っていました。

やはり雲龍紋ですが、私の物と同じかどうかは、写真では判断できません。

胴が1段であるところが、私の品と異なります。

李朝物として売られていることもあるとか。

さらに、『法隆寺秘宝展』(平成2年)で、非常によく似た品が出品されていたとも書かれています。

 

そこでさっそく、『法隆寺秘宝展』の図録を求めました。

 古銅大香炉(法隆寺蔵) 径 23.7㎝、高 8.2㎝

獣脚3足の稜花形容器です。口縁の覆輪を、花形の金具で止めてあります。

見込みには、大きな雲龍紋が線刻されています。

やはり胴は2段です。

内側の上段に雲龍紋、外側の下段にも雲龍紋。

ここまでは、私の品と全く同じです。

雲龍紋のデザインは、少し違うかもしれません。

線刻の方法については、蹴彫りかどうかはわかりません。

胴の上下2段の比率が同じで、私の品とは少し異なります。

明時代の品で、当初は、菓子盤などとして用いられただろうと記されています。

 

私の品を、もう一度ながめてみました。

法隆寺の品と非常によく似ています。

 

はっきりとしませんが、内側の上段の雲には、鍍金(鍍銀?)がほどこされているようです。

外側、下段には、鍍金はみられません。

 

それにしても、時代を感じる器肌です。

最初は、長年の間に、銅器の風化がすすんだためと考えていました。

しかし、よく観察して見ると、どうもそれだけではないようです。

念のため、しっかりと磨いてみました。

 

非常に硬い表面で、銅器の硬さではありませんでした。

一日かけて、必死に磨いてみると・・・・

だんだん、ツヤと輝きを増してきました。

銅器ではありえない質感です。

 

まるで、湖面から登り立つ龍のようです。

 

蹴彫りの模様もはっきりしてきました。

これは漆ですね。黒漆が、銅器の全面に塗ってあるのです。

いつの段階で塗られたかは不明ですが、非常に古い漆です。銅器と一体化しています。経年の表面の劣化も、通常の漆の剥げ方ではなく、長期間のうちに自然な剥離が起こってできた凸凹のようです。丁度、数百年たった古い木製漆器にみられる断紋に相当するでしょうか。

せっかくきれいにしたので、果物をのせてみました。

ぴったりときます。

これは、やっぱり香炉ではなく、菓子器ですね(^.^)

 

先回の獅子牡丹紋古銅菓子器も、よく見ると、うっすらと漆が塗ってあります。ただし、磨いてもあまり光りませんでした。

こうなったら、法隆寺の銅器も磨いてみたいのですが・・・(^.^)

 

今回のブログで、金工は一区切りとします。

 

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