磁胎七宝の急須です。
最大幅 14.3㎝、最大径 9.8㎝、底径 7.6㎝、高 10.9㎝。重 432g。明治初期。
側面、蓋に泥七宝が施された、少し大型の急須です。
先に紹介した磁胎草花蝶紋小急須(写真左)に較べると、
親子以上異なります(^^;
今回は、洒落た趣きの品ながら、手取りは重く、よく言えば頑丈、悪い言えば武骨な造りです(^^;
注ぎ口、把手、蓋摘みなどの造形は、中国風のデザインです。また、竹を模したのでしょうか、これらには、緑釉と褐釉で輪状に節が描かれています。この部分は、形も少し凸になっています。
漉し穴の位置が底近く、非常に低い位置にあります。一方、注口はかなり高い位置にあり、西洋風の銅水注のようなデザインです。全体としては、かなりオシャレです。
では、使い勝手はどうなのでしょう。水を入れて注いでみると、思ったほど激しくは出ません。うまく茶を注げそうです。長い注口のせいでしょうか。この点も、西洋の銅水注と似てますね。
今回の品には、非常に華やかな七宝絵付けがなされています。
色とりどりの草花に加えて、
鳥もいます。
蓋には、蝶が飛んでいます。
この磁胎七宝の絵付けは、これまで紹介してきた十数個の陶胎七宝や磁胎七宝とは大きく異なっています。泥七宝を使った陶胎七宝、磁胎七宝の宿命でしょうか、ほとんどの場合、金属植線で囲われた内側は、単色の色釉が使われています。
ところが、今回の品では、複数の色釉を駆使したり、ボカシの技法が使われたりしています。これは、明治以降、近代七宝釉薬を用いた日本の七宝細工の基本的なスタイルです。これによって、七宝で複雑な絵画表現が可能となりました。
その様式を、今回の品は、泥七宝で試みているわけです。
底銘には見覚えが・・・
中国製として売られていたあの巨大な茶壷(写真左)の底銘です、
同一の「松岡」です。
そういえば、桔梗の描き方などは、両者、似ています。蓋に蝶を配する点も共通。
また、地の部分をハート形の細かな植線で埋めずに、そのまま青釉をベッタリと塗っている事も共通です。そのため、両者の地の部分には、ジカン(細かなヒビ)がびっしりとできています。
それに、重く、武骨な点も共通(^^;