遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書『ばかとりかうの取組』(下、馬鹿)

2021年12月31日 | 面白古文書

面白古文書『ばかとりかうの取組』の後半(下段、馬鹿)です。

下段:

馬鹿の方
大関 おきていなからよしあしをしらぬ人
   (起きていながら良し悪しを知らぬ人)
関脇 心よしのひなしかし
     (心良しの日無し貸し)
小結  おやのいけんをきかぬむすめ
    (親の意見を聞かぬ娘)
前頭  しんぞうにだまされるおやじ
      (新造に騙される親爺)
前頭  ちか道をゆく迚ふみまよふ人
    (近道を行くとて踏み迷う人)
前頭  ほれれたとおもふて金をつこふむすこ
      (惚れられたと思うて金を使う息子)
前頭  おんなゆをそとからのぞいてミているおとこ
     (女湯を外から覗いて見ている男)
前頭  にさいずきなごけいんきよ
      (二才好きな後家隠居)
前頭  人のお先につかハれるおとこ
      (人のお先に使われる男)

 

前頭  人の女房と色事のふりをするおとこ
      (人の女房と色事のふりをする男)
前頭  江戸で生れて宿なしになる者
      (江戸で生れて宿無しになる者)
前頭  子ともどうしのけんくわにあつくなるおや
      (子供同士の喧嘩に熱くなる親)
前頭  かけぐいにはらをそこのふひと
       (掛け食いに腹を損なう人)
前頭  車ひきをてつどうてやる人
     (車引きを手伝ってやる人)
前頭  我女房をほめてあるくていし
      (我女房を誉めて歩く亭主)
前頭  きゃくをかつてはたかになる女房衆
      (客を買って裸になる女房衆)
前頭  年あけ女郎のおやもとをたづねて行
   (年明け女郎の親元を尋ねて行く客人)
前頭  ぼう様にだまされるばアああま
     (坊様に騙される婆様)
前頭  まつりに出てせたいをしもふおとこ
      (祭りに出て世帯を終う男)
前頭  知たふりで物ことをしそこのふ男
      (知った振りで物事をし損なう男)
勧進元 くるしミをして金をなくす人
      (苦しみをして金をなくす人)

【新造】:若い見習い女郎
【二才】:青二才

 

コメント (5)
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面白古文書『ばかとりかうの取組』(上、利口)

2021年12月30日 | 面白古文書

今年最後の面白古文書、『馬鹿と利口の取組』です。

35.6㎝x 48.8㎝。江戸時代後期。

相撲の番付表を模した比べ物です。瓦版のような刷りです。良質の紙に刷られた大版です。

江戸後期には、東西対抗の形式で、いろいろな番付表が、数多く出されました。その中で、風刺やパロディに満ちた一群の番付表があります。

以前のブログでは、『嘘くらべ見立て評判』と、『大きな物見立てくらべ』を紹介しました。

今回は、利口と馬鹿の比べものです。

利口の方(上段)と馬鹿の方(下段)とに分けて書かれています。上段と下段を、2回にわけてブログアップします。

 

上段:

 

利口の方
大関 ねていても工風をするしよく人
      (寝ていても工夫をする職人)
関脇 しよにんにあいそうのよいあきん人
  (諸人に愛想の良い商人)
小結 どうらくな子を一ト通りにかんどうせぬおやの男
    (道楽な子を一通りに勘当せぬ親)
前頭 色男にほれぬ女房衆
    (色男に惚れぬ女房衆)
前頭 ひとのちやうちんをまちてあとから付て行人
    (人の提灯を待ちて後からついて行く人)
前頭  せたいを女房に頼む茶やのていし
    (世帯を女房に頼む茶屋の亭主)
前頭  むすこにはやくよめをとるかねもち
    (息子に早く嫁をとる金持ち)
前頭  色事でせたい持ているおとこ
    (色事で世帯持ちている男)
前頭  ひとをおさきにつかふひと
    (人をお先に使う人)

 

前頭  色じかけで金をもふける女
    (色仕掛けで金を儲ける女)
前頭  田舎からきて金持になる人
    (田舎から来て金持ちになる人)
前頭  おやたちにそうだんしてといゝぬけるむすこ
  (親たちに相談してと言い抜ける息子)  
前頭  人の金をまわして金をもふける人
      (人の金を回して金を儲ける人)
前頭  人をたのんておさせる車力  
      (人を頼んで押させる車力))
前頭  壱文のぜにでこどもをだますおや
      (壱文の銭で子供を騙す親)
前頭  客のきに入て請出さるゝ女郎衆
  (客の気に入りて請(うけ)出される女郎衆)
前頭 ひやうばん細見て吉原のはなしをまに合せるむすこ
    (評判細見で吉原の話しを間に合わせる息子)
前頭  ぼうさまをだます茶や娘
     (坊様を騙す茶屋娘)
前頭  ていしを見きりて出ル女房
      (亭主を見切りて出る女房)
前頭  しよじ人に聞あハせる人
      (諸事人に聞き合わせる人)
行司 たのしミをしながら金もふけする人
      (楽しみをしながら金儲けをする人)

 

感想:江戸後期の世相がうかがえます。時代が変わっても、人は変わらないですね。

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白鳥親子菓子器

2021年12月29日 | 古陶磁ー全般

昨日のブログで、Dr.Kさんが、飛来した白鳥たちの優雅な写真をアップされていました。

私の地方では、白鳥を見かけたことがありません。それなら陶磁器で、ということで探しだしたのが今回の品です。

親子白鳥の菓子器です。

親:長 20.7㎝、幅 14.3㎝、高 8.3㎝。子:長 10.8㎝、幅 7.2㎝、高 4.7㎝。昭和。

メーカーは不明ですが、日本の品でしょう。

実は、これまで白鳥たちを身近でじっくりと観察したことがありません。ですから、白鳥の親子がどのように暮らしているか、見当がつきません。

あてずっぽうで・・・

仲睦まじい親と子。

子供たちを先頭に進む・・・将棋じゃあるまいし(^^;

これでは、カルガモの親子⁉(^^;

 

さっさといただいた方がよさそうです(^.^)

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初代森有節『萬古焼高盃』

2021年12月28日 | 古陶磁ー国焼

これまで、馬上盃を紹介してきましたが、今回は、さらに小さな赤絵盃です。

径 6.0㎝、底径 3.6㎝、高 4.6㎝。幕末。

小さな器体に濃密な絵付けがなされています。

最初、これも馬上杯かと思ったのですが、ステム部が太く、杯も小さいので、高盃とするのが妥当でしょう。

東洋と西洋がミックスされたような不思議な絵付けです。この様な図柄は、萬古焼に多いのですが・・・・

底に、赤字で「嘉永年製」と書かれています。

また、非常にわかりずらいですが、高台の9時方向に、「有節」と読める押印があります(加藤藤九郎『原色陶器大辞典』(下写真)参照)。

加藤藤九郎『原色陶器大辞典』、左上の「有節」印

この小品は、萬古焼中興の祖、初代森有節の作品と考えてよさそうです。

高台内の「嘉永年製」の表記は、萬古焼として珍しく、製作時期がわかる資料的意味も大きいです。

満身創痍の小品ではありますが、よくぞここまで生きのびてくれました。

どうやら、正月の主役に躍り出そうです(^.^)

コメント (6)
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犬山焼馬上盃3種

2021年12月27日 | 古陶磁ー国焼

先回のブログで、犬山焼の呉須赤絵写し馬上盃を紹介しましたが、他にも2個、馬上盃が出てきました。

陶胎染付鹿紋馬上盃:

口径 6.8㎝、底径 5.6㎝、高 8.1㎝。明治―大正。

陶器の器体に、呉須で鹿が2匹描かれています。犬山焼らしい品物です。

底には、「犬山」の印が押されています。先回の品のように、手書きの「犬山」銘もありますが、このような印銘が圧倒的に多いです。

さらに、もう一つの馬上盃です。

赤絵龍紋馬上盃:

口径 5.3cm、底径 3.8㎝、高 7.1㎝。明治―大正。

薄造りで、生地は白い陶土です。上釉の上に、赤色で龍が描かれています。下部には、緑釉が効果的に使われています。赤絵付けや緑釉は、犬山焼よりも、万古焼系統の焼物を思わせますが、この品はやはり犬山焼です。

左、陶胎染付、中、色絵龍紋、右、呉須赤絵写し。

左と中の馬上盃には、無釉の底にぺったりと釉薬が置かれています。このような知らせ釉は、犬山焼の特徴です。ですから、底に印などはありませんが、この赤絵龍紋馬上盃は犬山焼であるといえます。

3種の犬山焼馬上盃が揃いました。

正月にどれをチョイスするか迷いますが、やはり呉須赤絵写しの馬上盃でしょうか。その理由は、一番小さいから(^.^)

コメント (4)
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