遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

天啓赤絵菊花紋中皿(5枚)

2022年10月30日 | 古陶磁ー中国

天啓赤絵の菊花紋中皿、5枚です。

 

径 16.0㎝、高台径 8.6㎝、高 3.1㎝。中国明末。

中央に菊紋、周囲に丸幾何学紋を配した皿です。

裏底には「天啓年製」の銘、高台内は放射状に削られています。

染付模様の地に、赤と緑の二色で上絵付がなされています。

南京赤絵、天啓赤絵、萬歴赤絵・・・似たような陶磁器に、色々な名称がついています。これまで紹介してきた南京赤絵とは、広義には明末清初の景徳鎮民窯の陶磁器を総称し、狭義には、天啓赤絵、萬歴赤絵、色絵祥瑞などを除いた物を指すようです。

今回の品は、天啓赤絵と呼ばれる明末民窯の皿です。

染付と赤絵の併用が、天啓赤絵の特徴であると言われています。

先に紹介した南京赤絵の皿と同じく、縁の虫食いを除いて、疵や擦れが全くありません。

「須知九日始若」の意味は不明です。

皿の縁には、きれい?な虫食いが見られます。

別の虫食いは・・・・おや!??!!

顕微拡大して見ると、

島のように取り残された上釉があるではありませんか。しかも、染付の跡もかすかに残っています。

この写真からは、胎土と上釉の収縮率の違いから釉薬が剥がれ落ちたとはとても思えません。虫食いは黒く焼け、疵口の釉薬が熔けていることからして、焼成の最中に小さな爆発のようなものが胎土の表面で起こって、熔融状態にある釉薬が吹き飛んだものと思われます。明末の呉須赤絵大皿に関しても、焼成中に同じような疵が生じる(皿の縁ではなく、色釉部に)ことを、以前のブログで報告しました。このような疵は、何かの微量成分が、熱によって急激にガス状物質を生ずるためと推定されますが、詳細は不明です。また、虫食いがどうして器物の縁だけに起こるのかもわかりません。

今回の品は、20年以上前、◯◯◯◯流通センターで入手した物です。観光地養老にあって、県外からも骨董好きな人が訪れる店です。それなりの物から珍妙な品まで、あらゆる品物が膨大にあります。その片隅に売れ残っていました。10枚揃いでした。そのうち5枚は行方知れず。誰かに差し上げたのかもしれません(^^;  というのも、一桁間違い?というくらい安価だったからです。まあ、図柄がパッとしないから売れ残っていたのかも、くらいに思っていたので、半分なくなってもさほど気に留めていませんでした。

ところが、この品の写しが、あの魯山人によって作られていたのです。

幾何学丸紋にかこまれた菊花紋。丸紋に多少の違いはありますが、今回の天啓赤絵皿の写しであることは疑いありません。私が購入した10枚の天啓赤絵皿の10倍出しても、この魯山人の写し皿1枚は購入できないでしょう(^^; お値打ち品天啓皿の100倍以上のプライス!

魯山人は、この地味な天啓赤絵皿のどこがいったいお気に召したのでしょうか?

あらためて、品物を眺めてみました。

なるほどー、菊花の間に、3人の子ども?が隠れている(^.^)

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南京赤絵漁師高士図四方中皿(5枚)

2022年10月28日 | 古陶磁ー中国

今回も南京赤絵の皿です。

縁の虫食いを除いては、5枚とも無疵です。

14.0㎝x14.0㎝、高台 9.4㎝x9.4㎝、高 2.8㎝。中国、明末ー清初。

先回の品よりもぶ厚く、日本からの注文品の古染付に似ています。

漁師が、川べりに佇む男に魚を見せています。

このような図柄は、定番の漁礁問答を思わせますが、漁師の相手が木樵ではないので、何か別の逸話の一場面でしょう。

先回の南京赤絵と同じく、表面の擦れ、小傷は全くありません。上絵付した部分も完全にきれいな状態です。

四方皿は、縁が水平に削られているので、端が非常に薄くなっています。ですから、釉薬の剥がれが多くあるかと思ったのですが、他の南京赤絵や古染付皿と同じような具合です。

縁の裏側には鉄釉が塗られ、いわゆる口紅になっています。口紅は、装飾と同時に、補強の意味もあると言われています。しかし、表側と同じように虫食いができています。

一般に、虫食いは、胎土と釉薬の収縮率の違いから、釉薬が剥げ落ちてできると言われてきました。長年の間に、釉薬がボロボロと剥がれていくイメージです。実際にそう説明している場合もあります。

しかし、前のブログの品や今回の品をはじめ、明末の中国陶磁器の虫食いをつぶさに観察すると、剥がれた部分に火が入っているようなのです。中には、釉薬が捲れ上がった状態で、端が鋭くなったものもあります。また、鉄釉を塗った効果はあまりないようです。従来の説明のように、収縮率の違いが大きいのなら、表面に細かなジカンが入ってもよさそうですが、全く見られません。

したがって、虫食いは、経年変化によるものではなく、陶磁器の焼成中に起こっているのではないでしょうか。原因はよくわかりませんが、ゴミなど不純物の混入もその一つでしょう。これは、日本で、古染付や南京赤絵のコピーを作る時に用いられる方法でもあります。偽物製作者は、案外、的を得ていたのかもしれませんね(^^;

 

今回の皿、5枚は、大きな箱に入っていました。箱には、「南京中皿四十人揃え」と書かれています。

こんな皿を、40枚も揃えるとは、元の所有者は、いったいどんな人物?(^.^)

 

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南京赤絵蓮池鴛鴦紋中皿(5枚)

2022年10月26日 | 古陶磁ー中国

Dr.Kさんの先日のブログで、南京赤絵ではないかとされる花瓶が紹介されていました。

南京赤絵!そういえば、故玩館にもしまいっ放しの物があったはず・・・例によってゴソゴソさがし回り、見つけ出したのが今回の品です。

 

南京赤絵の中皿です。

5枚揃い、内一枚の縁に金継ぎ補修があります。

径 15.2㎝、高台径 8.1㎝、高 3.2㎝。中国明末ー清初。

日本の皿よりも、一段、薄い造りです。良く焼き締まっていて、爪で弾くと、カン高い金属音がします。

また、皿の底は、放射状に削られています。

 

品物の縁には、明末の中国陶磁器の特徴である虫食い(釉薬剝がれ)が、全部の皿で見られます。

南京赤絵の魅力は、何といっても奔放な絵付けです。

蓮池に鴛鴦、これは中国陶磁器では人気の図柄です。

たいていは、二匹の鴛鴦が前後して、仲睦まじく泳いでいるのですが、この品の場合は・・・

呼び合っているような・・・・親子かな?

蓮の花も、どこかマンガチックで、見ていると頬が緩みます(^.^)

今回の品物、縁の虫食いを除けば、疵が全くありません。表面の細かい擦り傷も皆無です。

上絵付けの赤釉は、非常に脆いので、古陶磁の赤釉部分には、微細な傷や擦れがあるのが自然だ、と先のブログで書きました。

 

しかし、今回の品は、顕微拡大しても、非常に綺麗な状態に見えます。小傷が無いのは、赤釉の成分が日本の赤絵とは違う?それとも、焼成法の差?

南京赤絵は、そのくだけた佇まいが茶人などに評価され、珍重されました。この品も、日本に渡ってから、よほど大切にされてきたのでしょう

せっかくですから、故玩館のガラスケースに移して、陽の目を見させてあげるのが良いかと(^.^)

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楽ちん農作業椅子を手作り

2022年10月23日 | ものぐさ有機農業

先回のブログで、昔の組み立て式座椅子を紹介しました。

それに対して、highdyさんから、風呂で使っていた椅子や桶について、コメントをいただきました。

ん!風呂の椅子!💡!  

そうだ、農業作業で、昔、風呂椅子をつかっていた・・・

ということで、昔〜現在に至る私の農作業椅子を並べてみました。

さて、このうちで、腰痛もちの私が、今、もっぱら使っている物はどれでしょうか?

 

 

ヒントは、品物の裏面にあります(陶磁器と一緒ですね(^^;)

 

もう一つのヒントは、私の畑の畝。

ごく普通の畝に見えますが、マルチで全面被覆、通路も覆っています。これは、もっぱら草対策。この様にしておけば、通路の雑草を気にしなくても良いです。夏の農作業が非常に楽です。

この方法の弱点は二つ。まず、幅120㎝のマルチを20㎝位ずつの重なりで覆っていくため、通路を広くとることができません。というより、平らな通路ではなく、ゆるやかな凹面です。なので、通路で作業する場合、4本足の椅子は不安定です。

==>3(家庭用スツール),4番目の品(専用農業椅子)は✖。

20年前に勇んで入手した品ですが、結局、一度も使うことなく、片隅へ。ラベルもついたままです(^^;

二つ目の欠点。マルチは薄いので、接地する部分が細い椅子では、体重が掛かって破れてしまします。

==>1、2番目の品(風呂椅子)は✖。

正解(もっぱら使っている品)は、5番目の黒ブロックです。

なんだこれは?ですね(^^;

ホームセンターで、発泡スチロールのブロック(18.5㎝x38.5㎝x10㎝、3個)を購入し、合成ゴム系ボンド(1本分)で接着しました。色、サイズはお好みの手作り農作業椅子。

この品なら、マルチを破る心配がありません。しかも、軽い。太ゴム紐で、腰に結わえて使うこともできます。両手フリーで移動できますが、ちょっと滑稽な格好(^^;

使ってみて、何より良いのは、高さが高い事です。市販の品はほとんどが低すぎます。ひと株の作業が済んで、次の株に移る時、ギュッと腰を伸ばさなければなりません。この動きが、腰に負担をかけます。この手作り品は、私の作業動線に高さを合わせてあります。ブロックの大きさ、個数を変えて、自分に合った物を作ればいいのです。最初、ホームセンターで売っている一般的な発泡スチロール箱を作業椅子として使ってみましたが、強度不足でした。

また、発泡スチロールでできた箱型の品が、農作業用品として市販されています。でも、たいていは小さく、低すぎます。大型の物もあるのですが、高価です。

  

というわけで、右のブロックが今の私の常用品。

また、仕分けなど、マルチの外で長時間の作業をする時は、左側のスツールを使います。両者とも、比較的、腰高です。

この組み合わせで、ガラスの腰も、なんとか持ちこたえています(^.^)

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これぞ組立式座椅子

2022年10月21日 | 能楽ー工芸品

 

 

壁に飾るほどの価値のない駄古面たちを置いてある棚の一角に、仮面とは思えない物を発見しました(単に置いたのを忘れていただけ(^^;)

開いてみると、

丸っこい木が一つと四角い木が二枚。

さらに、丸い木の中には、横長の木が2個、入っていました。

大きな木、三つには、ホゾが彫ってあります。どうやら組み木のようです。

溝の凹に合う凸を嵌めていく事にしました。

まず、四角い板に横棒。

細い横棒も嵌め込みます。

もう一枚の四角い板を合わせて、凹をに凸を嵌めると・・・

こんな形になりました。

向きを変えれば、

受け台のようです。

丸い板に乗せて、凹部にホゾを嵌めれば、

これこの通り、

裏返して、

完成!(^.^)  

幅 22.4㎝x13.3㎝、高 14.2㎝。明治時代。

これは、座椅子ですね。

highdyさんに教えてもらったPC技で、おさらい。

実はこの品、能に興味をもち始めた数十年前、まずは定番の謡曲から習い始めた時に購入した物です。とにかく、正座には難渋しましたから(^^;  その後、何処へ行ったのかわからなくなってしまい、仕方なく、以前のブログで紹介した、今出来の安直な座椅子(下写真)を使っていたのです。

木組みではなく、マジックテープで座部に脚をくっつけるだけの物です。しばらく、謡曲の練習に使っていました。が、歳をとるにつれ体重が減少、何とか正座ができるようになり、この品は不用となりました。その後の、小鼓や能管の稽古も、座椅子無しでいけました(^.^)

今回の木組みの座椅子には、「明治四拾四年拾壱月参日新調 八条 藤司」と書かれています。京都の藤司さんが、明治44年に入手(注文品?)された品であることがわかります。

二つの座椅子には、100年の時間差があります。

私と藤司さんは、一世紀をへてめぐり合った座椅子兄弟!?

座椅子は、時代の変化を、尻の下で受け止めてきたのですね(^.^)

 

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