遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

全国唯一? 物価高騰対策で高齢者にギフトカード

2024年02月29日 | 故玩館日記

昨日の夕方、郵便配達さんがピンポン。

サインと引き換えに、封筒に入った物を受け取りました。

市役所からです。

心あたりは無いんですが・・・

物価高騰対策事業で高齢者にギフトカードを送る、とあります。

すわ、新手の詐欺か?

中には、確かに本物のギフトカードが入ってました。

キツネにつままれたような感じです。

市のホームページを見たら、確かに、この事業が書いてあります。65才以上のすべての高齢者が対象の支援事業です。それも、ほんの数日前に議会を通ったらしい。名古屋のベッドタウンで、岐阜では例外的に人口増加が著しい(名古屋へ通勤圏にしては土地が割安)以外、さしたる特色のない街なのですが、これは一体どうしたことか。福祉の街に急変?

世帯主の私だけでなく、つれあい殿にも同じ物が来ました。

低所得世帯への給付金は聞いたことがありますが、ネットを調べても、高齢者個人へのこのような事業は見あたりません。

マイナンバーカードのように、裏の魂胆が見え見えでもないし、まあ、ありがたく、次の皿のためにいただいておくことにします(^.^)

ところで、JCBギフトカードって、骨董屋でも使える?(^^;

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百年前の南洋諸島スケッチ

2024年02月27日 | 古面

先回のブログで、南洋の小島、木曜島で使われていた祭礼面を紹介しました。

南洋の小島!?・・・そういえば、古い掛軸があったはず。

掛軸の山をかきわけかきわけ、思いあたる品を見つけました。

「大正九年日本ノ管理トナリシ際親しく視察シテ写ス」と書かれています。100年以上前、誰かが記録したのでしょう。

掛軸はボロボロです。

幸いにも、貼ってある10枚のスケッチは全部良い状態です。

「南洋諸島スケッチ」とあります。

右から順次、見ていきます。

「トラック島土人ノ妻パンノ實を蒸シテ餅ヲ製造スル處」

「土人の妻パンの實を蒸して餅を製造スル圖」

大きさ:12.3㎝x20.4㎝。大正9年。

以下の図も同じ。

 

「ヤップ二於ケル西ノ班牙時代城址二シテ今ハ我守備隊ノ所在地ナリ」

「パウラ群島ノ大酋長アイバドル」

「ポナペ港入り口ジョカージノ〇岩(パイパラップ)」

「アンガウル島二於ケル燐礦逓搬鉄道ト採ル堀場ノ中央二アル大榕樹」

「ポナペ二於ケル西班牙領時代ノ城壁木鐸ト椰子葉腰巻飾」

「クサイ島酋長邸宅今は分遣隊ノ所在地人物ハ酋長ノ令嬢」

「塚村兼吉ノ独逸人二拘禁セラレシ處床下ナル赤色ノ附シテアル箱二六ッノ空気ヌキ穴アリテ箱中二拘禁セラレタリト云フ」

「ヤルート島土人ノ家屋赤色ナル小屋ノ如キモノ・人の住所」

「クサイ島二於ケル古城址」

 

この品に描かれたのは、すべてミクロネシア小島の100年前の情景です。

特に、最初のスケッチ「島の女がパンの実を調理している図」の舞台は、先回のブログで紹介した木曜島のあるチューク諸島です。

この絵を見ていると、先回の仮面は、メラネシアの木曜島ではなく、日本軍の要塞があったミクロネシアの木曜島の可能性もあると思えてきます(^^;

トラック島:チューク諸島。木曜島もその一つ。
パウラ群島:パラオ諸島
ヤップ島:ミクロネシア連邦西端の島。土着文化が今も残る。
ポナペ島:ポンペイ島。カロリン諸島の一つ。ポナペ港が主要港。
クサイ島:ミクロネシアの東端、グアムの南。
アンガウル島:パラオ諸島南の小島。
ヤルーノ島:マーシャル諸島の一つ。

パンの実:クワ科の植物。ブレッドフルーツともよばれ、実はジャガイモに似た食感がある。熱帯地方を中心に、世界中で栽培されている。
パイパラップ:ポナペ島にある巨大な岩。ソケース・ロックと呼ばれ、現在は島の第一観光スポット。
榕樹:ガジュマル
塚村兼吉:大正3年、岡山県人塚村兼吉は、神戸の独逸人商会に雇われ、石炭や食糧を満載したドイツ船で南洋へむかったが、ドイツ軍にヤルート島で拘禁された。
牙領時代:ポルトガル領時代。葡萄牙=ポルトガル。

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インドネシア、影絵人形劇人形、ワヤン・クレ(2体)

2024年02月23日 | 古面

先回のインドネシアの人形劇、ワヤン・ゴレに引き続いて、やはり、ジャワ島、バリ島で演じられる影絵人形劇、ワヤン・クレで用いられる扁平な人形(ワヤン・クレ)2体です。

クレ(皮)を使ったワヤン(芝居)が、ワヤン・クレなのですね。

右:長さ 49.0㎝、左:48.9㎝(支持棒込み)

扁平な人形は、水牛の皮で作られています(木製の物もあります)。

かなり使い込まれた品で、あちこちに損傷があります。

右の品:

反対側も全く同じ造りです。

全体に細かな穴がたくさんあけられています。これが、影絵劇で絶大な効果を発揮します。

風化して薄くなってはいますが、細かに彩色が施されています。夜の上演ですし、人形は白幕の向こう側で動くので、彩色は本来不要なのですが・・・スクリーンの裏側は、あの世であるとされ、あの世では色の付いた美しい世界が現世では白黒にしか見えない、ということを表すと言われている(Wipipedia)のだそうです。 

人形の中央には、水牛の角で作った棒が固定されています。ボディにそって緩やか曲がりながら、先に行くほど細くなり、上部は曲線になって頭部を固定しています。下端はとがっていて、人形使いが台座に挿して使うこともできるようになっています。

人形の反対側も、まったく同じように水牛の棒がクリを固定しています。では、棒は裏と表に一本ずつ使われて、人形を挟み込んでいるのでしょうか。

棒の下方を見ると、棒は二つに割れて、そこに人形が挟まっているではありませんか。ず~っと上まで同じで、頭部をぐるっと固定する細い所まで、すべて二つに割った角なのです。高度な細工です。

この棒のおかげで、人形はしなやかな動きが可能となるのですね。

しかし、激しい動きも多くあります。

耐えかねて、折れてしまったのですね。

右腕は失われています。

腕についていたはずの、二本の竹繰り棒もありません。

 

左側の品についても同じです。

こちらは、衣裳の損傷が酷い。

やはり、棒は折れています。

2本の繰り棒も失われています。

 

このように満身創痍のワヤン・クリですが・・・

光を受けると、がぜん、生き生きとしてきます。

細かな穴も実に効果的。まるで、伊勢型紙です。

人物の表情まで、浮かび上がります。

損傷はほとんどわかりません。

腕飾りも浮かび上がります。

破れた衣服にもそれなりの風情が。

貴婦人の役柄なのでしょうか。

全部見えてしまわない分、想像力がかき立てられます。

影絵の魅力ですね(^.^)

 

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インドネシア、人形劇人形、ワヤン・ゴレ(5体)

2024年02月21日 | 古面

先回のブログで、インドネシアの仮面劇、ワヤン・トペンで使われる仮面を紹介しました(この仮面のことも、ワヤン・トペンと呼ぶ)。

インドネシアでは、人形劇も非常に盛んです。扁平な人形を使った影絵芝居(ワヤン・クリ)と通常の人形劇(ワヤン・ゴレ)とに大別されます。

今回紹介する品は、ワヤン・ゴレで使用された人形です。

なお、ワヤンは元々、「影」の意味でしたが、「劇、芝居」を表すようになりました。したがって、ワヤン・トペンは、トペン(仮面)を用いた芝居となります。

ワヤン・ゴレは人形劇、さらには人形劇で使われる人形を表します。

故玩館には、5体のワヤン・ゴレがあります。

 

大きさ(長さ):53㎝、55㎝、68㎝、71㎝、74㎝。

いずれの人形も、かなり長い間使われてきた物です。

極彩色に塗られていたはずですが、長年の間に、ギラギラが薄れ、我々にもあまり違和感がありません。

どぎつい人形というより、喜怒哀楽を秘めた人間に近いものになっている感じがします。

衣裳はいろいろですが、この人形はジャワ更紗をまとっています。あちこちに穴があき、ほころびが目立ちます。

人形の動きを生み出すのは、肩と肘の関節。

掌に付けた細長い竹棒(40㎝ほど)で動かします。

首はスポンと抜けます(人形殺人事件ではありません(^^;)

胴の中は刳り貫いてあって、そこへ太い棒が通り、首を挿す様になっています。

棒の下部を回せば、顔が動きます。

人形遣いの手は二本しかないのに、どうやって3つを動かすのでしょうか。人形使いは、人形の首下につけた主軸棒を左手でもち,右手で人形の両手につけた棒を自在に操るのです。すごい技ですね。

また、心棒の先は尖っています。これを、舞台下の台座に挿して固定することもできます。

ワヤン・ゴレは、人気の高い伝統演劇ですから、上演頻度も高く、かなり洗練されたものでしょう。一度、現地で見たいですね。

骨董の世界では、土俗的な物はずっと素通りしてきました。しかし、戦前、世界を股にかけて活躍した大骨董商、山中商会の目録に、インドネシア人形劇の人形が載っていました。今回の品によく似ていたと思うのですが、例によって、行方が知れません(^^;  探し出せたらまた、報告します。

 

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古面46 インドネシア仮面劇、ワヤン・トぺン

2024年02月19日 | 古面

引き続き、インドネシアの仮面です。

 

幅 15.6㎝x 長 18.3㎝ x 奥 15.7㎝。重 192g。インドネシア(ジャワ島、バリ島)。20世紀前半。

インドネシアのジャワ島、バリ島で行われている古典仮面劇で使われる面です。ワヤン・トペン(仮面劇)呼ばれる民衆芝居は、12世紀か、それ以前からジャワ島で行われてきたもので、その後、バリ島へも伝わりました。

役柄に応じて、非常に多くの種類の面があります。そのうちの一枚(名称不明)です。

見る角度によって、表情が変わります。喜怒哀楽など、劇の要素を満たすことができそうです。

これまで紹介してきたエスニックな仮面の多くには、おどろおどろしい形相で、人間を超えた霊的な力を備えたいとの願望がこめられていました。

ところが、今回の仮面は人間の顔です。誇張はあるものの、目、鼻、口、髪、眉、髭など、人間の特徴を備えています。

表側は、鑿跡が残らないよう、きれいに磨かれ、その上に白、黒、肌色の彩色が施されています。裏側は深く彫られ、面をつけた時に安定するようになっています。大きな丸い目の下に、切れ込み(演者のための目)がいれてあります。演者は声を出さないので、口穴は開いていない物が多いです。

薄く作られており、軽いので、面を被って演技をするのに向いています。

完成度の高い面と言えます。

大きさや重さも、日本の能面とよく似ています。

面の下側が水平になっていて、

直立します(何か意味がある?)。

長い間、使い込まれたのでしょう。

パカっと二つに割れたのをくっつけてあります。

顎の部分が一部、凹形に切れ込まれています。

よく見ると鎹のような金具で留めてあります。割れが広がらないようにしているのでしょう。

ところで、この凹は何のためにあるのでしょうか。

インドネシアの仮面芝居では、演者は声を発しません。音楽と語りによって、劇は進行します。人形浄瑠璃の人形のかわりに、仮面をかぶった人間が演じる人間浄瑠璃なのですね(^^;

トペンでは、この凹部木片などを差し込み、それを口にくわえて面を顔に固定するのです。日本にも、祭礼に使われる面では、口に咥える物があります。一方、バリ島では、ゴム紐を使って被ります。

今回の面には、両耳の下にも小さな穴があいています。凹と穴の両方があるのです。

ジャワとバリの共通仮面??(^^;

能は世界最古の舞台演劇と言われてきました。

しかし、インドネシアの仮面劇に席を譲らねばならないかも。

猿楽まで遡れば、能が勝ち?

ところが、トペン劇のルーツも相当古そう。

簡単に勝負はつきそうもありません(^.^)  

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