遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

唐物茶棚

2023年03月23日 | 漆器・木製品

かなり古い茶棚です。

幅 46.0㎝、奥行 34.5㎝、高 77.3㎝。中国、明ー清。

中央に収納部を備えた茶棚です。骨董屋の店先で私を待っていました。聞けば、高齢の趣味人の所から出た品とのこと。こんなのが一つ欲しかったので、私には珍しく即決となりました。さすがに野口先生では歯が立たず、福沢諭吉先生何人かのお世話になりました(^^;

左面:

右面:

背面:

あちこちに痛みがあり、目立たないように漆を塗りました。螺鈿の剥がれは、白塗りでお茶を濁しました(^^;

元々、かなり凝った造りなので、素人補修でもなんとか様になりました(^.^)

 

中央部は、2枚の戸をスライドさせて物を出し入れできるようになっています。扉の把手は蝶の形になっていて、玉製です。

文字の部分は、写真では白ペイントのように見えますが、

近づくと確かに螺鈿であることがわかります。

では、いったい何が書かれているのでしょうか。

天板の文字はわかりません。

中段:

福     自
天     来
丹     鳳
朝     陽

福自天来・・・雲の中に蝙蝠が飛ぶ図。吉祥画題。
丹鳳朝陽・・・朝日に鳳凰図。吉事、平和の象徴。

下段:

呈 (祥)
富 貴
芝 仙
祝 寿

呈祥は龍鳳、富貴は牡丹、 芝仙は霊芝を表し、長寿を祝う。 

左面:

春 風
満 坐    (すべての人々)
十 里  
荷 香  (荷=蓮)

春風がそこの人々すべてに吹きわたり、蓮の香りが十里にもわたって香る。

右面:

雲  中
白  鶴
左  琹(琴)
右  書

雲中白鶴・・・世俗を超越した高尚な境地にいる人。雲は高潔な境地のたとえ。
左琹(琴)右書・・・琴と書とともにある文人生活を表現。

棚物入扉:

倦夜 杜甫
  
竹涼侵臥内
野月満庭隅
重露成涓滴
稀星乍有無
暗飛蛍自照
水宿鳥相呼
萬事干戈裏
空悲清夜徂

竹涼(ちくりょう)は臥内(がだい)を侵し
野月(やげつ)は庭隅(ていぐう)に満つ
重露(ちょうろ)涓滴(けんてき)を成し
稀星(きせい)乍(たちまち)に有無
暗きに飛ぶ蛍は自ら照らし
水に宿る鳥は相呼ぶ
萬事は干戈(かんか)の裏
空しく悲しむ清夜の徂(ゆ)くを


竹林の涼気が寝室に入って来て、
野の月の光は庭の隅々にまで満ちている。
草葉の露は集まって滴となり、
まばらに浮んだ星がまばたいている。
暗闇の中に飛ぶ蛍は自分のまわりだけを照らし
水に宿る鳥は互いに呼び合っている。
しかし、静かで平和な自然の営みがある一方で、
世の中には戦いが渦巻いている。
私は空しく悲しむ。清らかな夜がふけていくのを。

 

この品を入手した時は、螺鈿の具合から、中国か李朝の品物か判断が付きませんでした。しかし、書かれた詩句を読んでみると、中国の品、それも文人にふさわしい物であることがわかりました。

これはもう、この茶棚に道具類を置き、煎茶をすするより外はありませんね(^.^)

 

 

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黒漆木皿にメダカを描いてみた

2023年03月19日 | 漆器・木製品

先回のメダカ紋古染付煎茶碗は、メダカの絵付けがポイントでした。複数のメダカを器に描いて味のあるデザインとするのは、想像以上に難しいのです。一匹一匹のメダカはなんともないのですが、多数のメダカが全体として絵にならなければ意味がない。それぞれのメダカは全体のパーツです。それがあつまって、全体としておだやかなまとまりをもってくる。一種の抽象画ですね。

メダカ一匹を描くのは私にもできそうなので、ちょっとやってみることにしました。陶芸は無理としても、木皿に描く事ならできるだろう・・・骨董市で、黒漆の木皿を入手してきました。こういった類の品は、今では、ダダの次くらいの値段です。店主に頼めば、何かを買ったおまけにつけてくれます(^.^)

その結果がこれ。

径 17.0㎝、高 2.1㎝。明治ー戦前。

轆轤挽き、本漆塗り、金で縁取りがしてあります。今でも十分実用になります。

入手した木皿に、金粉をいれた漆金泥で筆書きっしました。最初は、無謀にも、先回の煎茶碗のメダカをめざして、メダカをバラバラに描きました。しかし、結果は散々、自分で見るのも嫌になるほどの出来です(^^;  バラバラにならず、どうしても偏りができてしまうのです。それがいかにも中途半端で稚拙。おそらく、幼稚園児の方が、うまく描こうという助平根性がないだけ、ましでしょう。ボツ、燃えるゴミ行。替わりの皿はいくらでもあります(^^;  

そこで方針変換。子供の頃はどこの小川にもいたメダカの学校(今は全く姿無し)を描くことにしました。

うーん、まずまずの出来。稚拙な筆さばきが温かみさえ感じさせる、というのは褒め過ぎか(^^;

そこでまたまた助平根性が。このままでは当たり前すぎて面白くない。さざ波や渦巻を添えたらどうか。それも単純に描くのではなく、沈金の技法でやってみよう。沈金とは、漆面を鑿で線彫りし、凹部に漆をすり込んだ後、金粉などを蒔いて定着させる技法です。輪島塗で多く用いられます。

さっそく、彫刻刀で彫りました。ところが、全く歯がたちません。漆面は非常に硬いのです。プロは専用の小刃を用いるようですが、そんな物はどこにもありません。やむなく、畳針でガリガリと削り、漆液を塗り、拭った後に金を蒔きました。

線がガタガタですが、一応できました😓

手づくりのメダカの学校です。いちご大福などをのせて、春をどうぞ(^.^)

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漆器スープカップ作りに挑戦してみました

2023年03月01日 | 漆器・木製品

金継ぎの道具を探していた時に、作業途中の木工品がいくつか出てきました。当時、陶磁器や掛け軸よりも木工品に興味があり、金継ぎと平行して、木の器の色漆塗りを習っていたのです。

口径 10.4㎝、底径 6.0㎝、高 6.0㎝。

生地を作ることは素人には無理なので、素地がむき出しの木製カップを購入しました。これだけの表面積のカップを本漆で塗るのはこれまた素人には無理。さらに、色合わせとなると、ほとんど不可能。ということで、扱いの容易なカシュー(人工漆)を使いました(^.^)

透明漆を塗ったカップ2個。左側が2回、右側は1回です。

1回目の塗りだけでは、凸凹、ザラツキが目立ちます。金継ぎの場合と同じです。

そこで、細かい目のサンドペーパーで磨きます(さすがにトクサでは気が遠くなります(^^;)。写真は、把手の部分に取りかかった状態ですが、器の内外全部を磨きます。そして、2回目の漆を塗ります。それが、上の写真の左カップ。このようなプロセスを5回ほどくりかえさねばなりません。

色漆を塗ったカップ。

ダークグリーン:

5回塗り、コンパウンドで仕上げました。なんとかいけそう。

イエローカップ:

2回塗りをおえた器です。写真では見ずらいですが、まだまだアラが目立ちます。あと3回がんばらねば。

わざわざこんなに苦労してまで作業をするのはなぜ?

それは、私の持っている漆器の中で一番のお気に入り、色替り木製珈琲カップに何とか迫る品が手づくりできないだろうか、との野望(^^;)からでした。

おそらく特注品。よほどの趣味人が持っていた物でしょう。このような品が手づくりできれば、ガラクタ人生にも少しは光明が・・・・?

圧縮度の高い写真のおかげでアラが目立たず、それらしく見えますね(^.^)

 

 

 

 

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小茶棚

2023年02月19日 | 漆器・木製品

今回も先回と似たような品物です。

34.7㎝x24.4㎝、高 28.7㎝。幕末ー明治。

この品も、青空骨董市で、野口センセー一人で入手しました(先回と同じ値段、店は別)。正式な名称はわかりません。形状から小茶棚としました。

相当に使い込まれていて、あちこちが傷んでいました。特に、天板に穴が多くあり、このままでは使い物にならないので、木工パテで埋め、塗料を塗って仕上げました。平滑になるまで、塗りー乾燥ーペーパー磨きを繰り返したので、2か月ほどかかりました。ここまで手をかけたので、野口センセーもご満足でしょう(^.^)

四方を、ぐるっと竹細工で覆っています。

正面:

横面:

背面:

もちろん、上面も竹、デザインが美しい。

 

おまけに、先回の品と同じく、引き出しになっていて、小物がごっそり入ります。

瀬戸急須(幕末ー明治)、古染付笛吹人茶碗(中国明末)、鼈甲水牛角茶たく(明治)、京焼鶴香合(江戸後期-明治)

こんな具合におもてなしをしたら如何。

煎茶にも流儀があって、それぞれ作法が決まっているようです。しかし、もともと煎茶は形式とは無縁、自由に生きようとした文人が隠遁生活で嗜んだものです。

ですから、ハチャメチャ蒐集家の無手勝流手前でもOKでしょう(^.^)

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器局兼用煎茶盆

2023年02月17日 | 漆器・木製品

ガラクタ集めの最初の頃、煎茶に凝っていました。毎日のように何かゲットしないと落ち着かない病的状態(^^;

今となっては誰も振り向かない物ばかりですが、エンディング記録代わりにブログアップします。

48.7㎝x32.8㎝、高 12.4㎝。明治ー戦前。

木の細工で作られた煎茶盆です。

青空骨董市で、野口英世さん一人と交換しました(^^;

塗りの剥げがあちこちにあり、本当は補修せねばならないのですが、さぼって今日に至りました。値段に関係なく品物を慈しむ精神を忘れていますね(^^; 

この品の面白いのは、下部が引き出しになっているところです。

後ろへ押せば、反対方向にも出ます。でもまあ、手前の縁が切れ込んでいるので、手前に引いて使うのでしょう。

引き出しには、

小物がたっぷりと入ります。器局の役目も果たせるのですね。

上には、急須たちをのせて、

煎茶ディスプレイの出来上がり(^.^)

コメント (8)
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