遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書 『好色指南抄』

2022年11月29日 | 面白古文書

先回のブログで、江戸のキワモノ、りんの玉を紹介しました。

平和が長く続いた江戸時代も後期になると、この方面の事柄に広く興味がもたれるようになり、各種書物が出されるようになりました。

今回の品は、房中術を説いた本で、庶民向け性の指南書というべき物です。

雑多な和書の間に挟まっていて、焚書坑儒を免れました(^^;

かいつまんで、全体の三分の一ほどを載せます。

goo倫に抵触するといけないので、現代語訳は各自でお願いします。

15.0㎝x25.6㎝、17丁。江戸後期 

『好色指南抄 全』とありますが、前編、後編のうちの後編です。

張形について:

張形の作り方:

湯陰酒茎の説:

美人三十二相説:

女悦の薬を即座に製法:

こういう類の本は、今では、ありそうでありません。

かつてベストセラーになった謝国権『性生活の知恵』(古い(^^;)くらいでしょうか。

実効性はともかく、この小冊子には、いろんなテクニックが満載されています。特に、薬の処方は、非常に沢山あって驚きます。赤ひげ薬局さんも真っ青でしょう。

また、「間合の張形を製傳」で、「張形といふものはした銭にて買るゝものにあらねば。下女婢の手にハ入がたし。」と書かれていて、当時、このような品物はかなり値の張った物であったことがわかります。さらに、それを手作りする方法を指南しているなど、今回の品は、一般庶民向けに書かれたものと言えるでしょう。

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面白古文書『金玉尽・鳥尽番外編2』〜君はりんの玉を見たか〜

2022年11月27日 | 面白グッズ

面白古文書『金玉尽・鳥尽』の1回目、見出し項目の中に、「四ツ目屋のりんの玉」というのがありました。江戸時代、アダルトグッヅの店、四ツ目屋で売られていた品です。

りんの玉? 何それ!!?

ジャーン、これが実物です(^.^)

内部はどうなっているのかわかりません。振ったり転がしたりすると、かすかに、りぃぃ〜〜んという音が響きます。

りんの玉:径 1.7㎝、重 7g。江戸中ー後期。

何でお前がこんな物を持っているのか、といぶかる向きも多いことでしょう。

そこはそれ、蛇の道はヘビ。前提をつけずガラクタ蒐集というコンセプトの網に引っ掛かった品なのです。


で、使い方は?
残念ながら、goo倫に引っ掛かりそうなので、興味のある方は、各自でお調べください(^^;

なお、2個セットで使うとの事。一方は音無しです。ジャワ産の物が良質であったとか。

実は、りんの玉の使い方などが描かれた江戸時代の小巻物を持ってたのです(資料として(^^;)
今回その一部を紹介しようかなと思い、あちこち必死で探しましたが、ようとして行方が知れません。
ここで、ピンときました。これはもう神隠しにあったのだと。
なぜなら、同じような出来事が、これまで再々あったからです。江戸の春画(男色のレア物)や性心理学者、高橋鐵の地下出版物から、最近では、あの永青文庫の大英博物館SHUNGA展の図録まで、神隠しに遭う物はほぼ毛色が一緒です。ですから、神(犯人)の正体もおのずとあきらか。
これは、現代の焚書坑儒ではありませんか(正確には、捨本抗春?(^^;) 

すぐにでも抗議をしたいところですが、グッとこらえて、「江戸時代の巻物がどっかへ行ってしまった。貴重な資料だったんだけど・・・・」と困惑顔の演技。
敵も素知らぬ顔で無言の意思表示。


しかし、ここで一戦交えては元も子もありません。
今後のガラクタ蒐集に支障をきたす事態は何としても避けねばなりませんから(^.^)

男は黙って、春探し(^^;


神隠しに遭ったのは紙物だけではありません。当然、目につきやすい怪しげなグッヅの数々も。
神隠しに遭った品々は、焼却場の灰や煙と化し、今はもうこの世に無いでしょう。

では、どうして今回の品、りんの玉は難を逃れたのか?

それは、小さな木製シェルターのおかげでした。  
 
この中で身を潜めていたのです。 
 
さて、このりんの玉、他に何処で出会えるのでしょうか。
かつて、三重県伊勢神宮の近くに、元祖国際秘宝館という巨大な性の殿堂がありました。実業家M氏が建てた一大桃色パークです。
高度成長期にかけて、日本各地で同じような施設がどんどん出来ました。その中で、元祖国際秘宝館は、広さと展示物の豊富さで群を抜いていました。残念ながら、2007年に惜しまれつつ(?)閉館。

盛期には、ひんぱんにTVコマーシャルが流れ(東海地方のみ?)、その調子のよさに、秘宝館のコマーシャルソングを小学生が口ずさむほどでした。

 


閉館まぎわの元祖国際会館の内部。

 
最近、退職した教員の方から面白い話を聞きました。かつて、この地方の教員の研修(実態は慰安?)旅行の定番コースに、元祖国際秘宝館が入っていたというのです。私には、近親者、縁者、知人に学校教員が誰もいないのでこれは初耳でした。中にいなければわからないことがあるのはどの業界も同じですね。教師が男女そろって秘宝館見学・・・微笑ましい昭和の光景ではありませんか。しかも、この人は、日教組のバリバリの活動家だったらしい。

日教組と言えば、国会で、ツバを飛ばしながら「ニッキョソーー」と意味不明のヤジを投げていた総理大臣がいましたね。単細胞のアタマに、日本会議(生長の家残党と戦前回帰を企む金満神社本庁)あたりから右巻妄想を吹きこまれたかと思いきや、あの統一凶会、世界焼香連合がバックにいたのです。本来の右翼や真性保守とは無縁、票や金や権力のために、カルトの使い走りをして国を売る。こういう輩には右畜の呼称がふさわしいでしょう。
甲高い声でキャーキャーと「ニッキョーソーー」。
利権に敏い右畜安屁”「ヲマエガイウカ!?」

見苦しい売国右畜よりも、猥雑な秘宝館で研修を行うニッキョーソの方がよほど健全と言えましょう。

話しは横道へそれましたが、この元祖国際秘宝館、目玉の馬の実演ショーは別格として、古今東西の珍品が所狭しと展示されていました。なぜか、蛇の交尾標本がやけに多かったのも不思議でした。

ところで、問題のりんの玉。
実は、展示品の中にこれはなかったのです。
広大な館内を目をのようにして探しても、りんの玉はありませんでした。

規模では足元ににも及ばない極小故玩館ではありますが、りんの玉では元祖国際秘宝館に勝った!!(^.^)  

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『面白古文書 金玉尽・鳥尽 番外篇1』観世元章「点取俳句帖」(能楽資料39)

2022年11月25日 | 能楽ー資料

『面白古文書 金玉尽・鳥尽 』を6回にわたって紹介してきました。

そのうちの6回目に、「前頭 俳諧の点とり」がありました。いわゆる点取り俳句です。点取り俳句は、何人かが寄って俳句を読み、評者が点数をつけて、総得点を競うものです。芭蕉の弟子、室井其角が広めたと言われています。

例によって、そういえばどこかに、江戸時代の点取り俳句帖があったはず、と探し回り、やっと見つけました。

17x12cm、28頁。江戸中期。

この手の物にしては非常に立派な品です。題簽は消えていますが、分厚い表紙と裏表紙がついています。本紙も厚い良質の紙を使っています。

発句のみではなく、五七五ときたら七七とつける連句形式で俳句が続きます。

赤線や印(青)は、評者がつけた点と思われます。

所々に評者によると思わるコメントがあります。

下欄は詠んだ人の俳号。千季、良角、吟鼡、魚明など全部で14名、参加しています。

最後に評点の合計と順位が示されています。

良角 四十ニ点、村市 三十七点、千季 三十五点、下略

宝暦十三未年初冬

宝暦13年の冬に行われた句会であることがわかります。

良角が一等です。

彼の句の中に、面白いものを見つけました。

拡大すると・・・

囃しには 観世太夫も 下掛り     良角
    下掛をその変化物としるし
熱(?)仕舞して 奢る追善

囃子の出来次第で、観世太夫もまるで下掛りのよう。
高ぶった仕舞となり、追善能が派手やかになってしまった。

【囃子】能の音楽。通常、笛、小鼓、大鼓の3種楽器が、キリなどでは太鼓が入り4種の楽器が担う。江戸時代には、囃子方は座付であり、メンバーはほぼ固定していたが、現在は、能の公演に応じてその都度、編成される。
【観世太夫】能楽シテ方観世流の家元。現在は26世。
【下掛かり】能のシテ方五流の内、観世流、宝生流を上掛かり、金春流、金剛流、喜多流を下掛りという。
【追善(追善能)】故人(多くの場合、著名な能楽師)を追善するために行われる能。
【仕舞】囃子を伴わず、地謡のみによって行われ、装束や面はつけずに、紋付袴などで能の一部を舞う。この句では、囃子を伴う舞囃子、あるいは能の中でのシテの舞事を指していると思われる。

左上に朱印(不鮮明)。左中に青印、楽器を持った西洋人に見えます。

この句会で一等をとった、良角=観世太夫とは誰なのでしょうか。

その謎を解くカギは、奥付の日、「宝暦十三癸未年」にあります。この時に観世太夫であった人物、それは十五世観世元章(享保七年(1722)ー安永三年(1774))です。彼は、26代の観世宗家の中でも傑出した太夫で、観世中興の祖と言われています。特に、謡本の大改訂を行い、明和改正謡本を刊行しました。この本自体は、彼の死後、元の版本に戻されましたが、能に関してその他多くの改革を行い、現在に到る能楽の新しい流れを作りだしました。


このようなビッグな能楽師が、どんな俳句をつくったのか?
予想に反し、下掛かりの流派を見下したり、能演舞の失敗などを詠んでいます。しかも、その失敗を囃子方の所為にしています。もちろん、囃子の出来栄えはその都度変わりますが、本来、囃子方は座付き、呼吸はわかっているはずです。しかも、シテの権威は絶対ですから、囃子方はすべてシテの考えや所作を読み取り、従わねばなりません。ですから、「下掛り」と揶揄するほど囃子が調子を外すとは考えられません。

自分のミスを他になすりつける!?

名人とはいえ、失敗はつきもの。素直といえば素直、人間味あふれる太夫ですね(^^;


点取り句会は、江戸能楽界の頂点に立ち、大観世を率いる彼にとって、重圧から解放される唯一の場であったのかも知れません。ひょうきんな印章も遊び心満載です(^.^)


江戸から明治にかけて非常に盛んであった点取り俳句には、現在、堕落した俳諧としての評価しかありません。しかし、考えてみれば、私たちが目にする特選、入選の句は、現代の点取り俳句で選ばれたものとも言えるのではないでしょうか。

選者(評者)は数人、参加する俳人の数は膨大。点数制でないと、期限内に公正な評価をするは無理でしょう(^.^)

 

 

 

 

 

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柚子満架

2022年11月23日 | ものぐさ有機農業

小さな木ですが、今年は、柚子が鈴なり。

ドーンとあった梅ジャムも終わりが近いので、柚子ジャムにしてバトンタッチ。毎日のヨーグルトに欠かせません。来年の梅の時期まで半年、がんばってもらいます。

棘と格闘しながら、まずは収穫(^^;

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面白古文書『金玉尽・鳥尽6』

2022年11月21日 | 面白古文書

面白古文書『金玉尽・鳥尽』も最終コーナーに入りました。

今回は、左側(とり尽くし)の下段です。

 

前頭 阿ほうハうつとり
  (阿呆はうっとり)
前頭 太った娘はぼつとり
  (太った娘はぼつとり)  
前頭 荷舟ハせどり
  (荷舟は瀬取り)
前頭 因バのとつとり
   (因幡の鳥取)
前頭 七りんの火とり
  (七輪の火取り)
前頭 大和に高とり
  (大和に高取) 
前頭 工合かよいこつとり
  (工合が良いこつとり)
前頭 餅つきのうすどり
  (餅つきの臼取り)
前頭 早イが手とり
  (早いが手取り)
前頭 うらめしいがなわとり
  (恨めしいが縄取り)
前頭 左官に戈とり
  (左官に戈鳥)
前頭 一夜のやどり
  (一夜の宿り)
前頭 俳諧の点とり
    (俳諧の点取り)
前頭 天下茶やの五文どり
  (天下茶屋の五文採)
前頭 戦国のきりどり
   (戦国の切取)  
前頭 かむろにミどり
  (禿にみどり)  
前頭 やもめハひとり
  (寡は一人) 
前頭 山伏は兜きん
   (山伏は兜巾)
前頭 外科ハすひ玉 
  (外科は吸玉) 
前頭 一字千きん
  (一字千金) 
前頭 ふむのハこんにゃく玉
  (踏むのはコンニャク玉) 
前頭 よさうの〇きん
前頭 久しぶりハた両(ま?)玉
前頭 牡丹のみきん
  (牡丹の砌)    
前頭 墓所ハひたま
   (墓所は火玉)


【うつとり】ぼんやり者。まぬけ。
【ぼつとり】顔やからだつきがふっくらとして色気のあるさま。
【瀬取り(せどり)】洋上において船から船へ船荷を積み替えることを言う。また特に、陸揚げのために、親船の積み荷を小船に移すことや、その小船のこと(瀬取り舟)。
【火取り(ひどり)】おこした炭火などを運ぶのに使う道具。
【大和(やまと)】【高取(たかとり)】大和国の高取藩。
【工合(ぐあい)】【こっとり】ともに、具合が良いさまを表す語。
【臼取り(うすとり)】 餠をつくとき、餠が杵や臼につかないよう、水に手を浸し、餠に水をうったり、餠を返したりすること。また、それをする人。
【手取り早い】手っ取り早い。
【縄取り(なわとり)】罪人を縛った縄の端を持って、逃げないように警護すること。または、それをする人(縄持ち)。奉行所配下の身分の低い者が任にあたった。
「盗みする子は憎からで縄掛くる人が恨めしい」(盗みをした我が子を憎まず、その子を捕まえて縄を掛けた相手を恨む)との諺は、親の身びいきのたとえ。
【戈鳥(ほことり)】戈鳥 = 鳶(とび)。転じて、とび職。江戸時代、左官とともに人気のあった職業。
【点取り】点取り俳句のこと。江戸時代、評者(点者)が俳句に批点をつけ、その点の多少で優劣を競う遊戯的な俳諧。点取り主義が横行して俳諧が堕落し、後に賭事的なものとなった。
【五文採(ごもんどり)】安倍川餅の別名。五個五文であったが後に一個五文になった。
【切取(きりとり)】武力で領地などを奪い取ること。
【禿(かむろ)】遊廓に住む童女。
【みどり】遊女見習
【兜巾(ときん)】修験道の山伏がかぶる黒の布でつくった頭巾。ひもで下あごに結びとめる。
【吸玉(すいだま)】江戸時代まで盛んに行われた吸玉療法。
【一字千金】大変に優れた文字や文章のこと。
【踏むのはコンニャク玉】江戸時代、コンニャクを、足踏み臼という機械で、踏みながら作った。
【砌(みきん、みぎん)】舞楽が始まる時という意味。能『石橋』で牡丹が咲く下、連獅子が踊る。地謡が、「獅子団乱旋(ししとらでん)の舞楽の砌(みぎん)」と謡い、キリとなる。
【火玉(ひだま)】空中を飛ぶ球状の怪火。火の玉。

 

ようやく最後までたどりつきました。

「うらめしいがなわとり」や「左官に戈とり」などの難問をクリアーして、有終の美を赤無しで飾れると思いきや、なぜか「鳥」の段の最後に「金・玉」が入ってきて、これで見事にギブアップ(^^;

3カ月かけても、すっきりと行かないのが、面白古文書の常(^.^)

 

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