遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

備前焼献上手鶴首花生

2023年01月30日 | 花道具

備前焼の花生けです。

胴径(最大) 9.8㎝、口径 1.1㎝、底径 5.6㎝、高 17.3㎝。江戸時代中期。

一般に、献上手花生け、献上手徳利と言われている備前焼です。細長い首が特徴です。

上手の品で、よく水簸された土を使っています。底は露胎で、絹土高台とよばれるほど滑らかです。

底には、釜印があり、江戸中期の作と知れます。

底を除いて、全体に田土が上釉のように掛けられています。それが一部流れて景色になっています(下写真)

この品の口は削られ、擦り整えられているようです。

首の先が破損したのですね。

献上花生け(徳利)は、備前藩による幕府などへの贈答品として作られました。実際に酒を入れたり出したりするのは大変、花を活けるにもあまりに首が細長い。元々、実用を旨をとしていないのですね。それが破損して短くなり(4㎝ほど?)、花生けにはもってこいの形になったわけです(酒に関しては、下戸の私は不案内)(^^;)

祖父の花道具類はほとんどが大きい(というより巨大)のですが、こういうのもたまに混じっています。

胴には、糸目状の轆轤目と上品に散った胡麻。

鈍い光を放つ器からは、なんとも上品な感触が伝わってきます。

備前焼といえば椿。これはもう入れるよりほかありませんね(^.^)

【追記】備前焼の献上手鶴首徳利は人気があり、今も多くの作家が手掛けています。また、骨董市では必ず目にする品です。しかし、江戸時代に焼かれた本来の献上品は非常に少ないのが現実です。以前、骨董市によく出かけていた頃、名古屋の大きな会場で、顔見知りのハタ師(店をもたず、業者相手に品物を売買する人)にバッタリと出会いました。「暇だから冷やかしに来た」とのこと。実際、彼らは夜明け前、各業者が荷を搬入している時間帯が勝負なのです(古本市も同じ)。会場が開けばもう終わり。ですが、遊び半分にしろ、彼らがどのような品に目をつけるか、そこに興味があって、一緒にまわることにしました。あるブースで私は立ち止まりました。ウチの献上備前焼とそっくりの品があるではありませんか。胡麻あり、釜印あり、しかも首が欠けていない完器。思わず手に取ってながめていると、「それはヤメトケ。昔、ワシが多治見の〇〇に焼かせたモンや」とのこと。巷に、献上備前焼があふれているはずですね(^^;

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白磁大水盤に花の精を浮かべる

2023年01月28日 | 花道具

花道具類の一番奥にあった白磁の水盤です。

54.8㎝x32.2㎝、高 6.7㎝。重 5.45㎏。明治ー大正。

大きくて重い水盤です。

クリーム色がかった落ちついた色合いの白磁です。

水盤は他にもいくつかあるのですが、これが一番気品があるように思います。

裏側には、焼成時の針支え跡が14個。

かなり使われていたらしく、内側に虫食いのほつれがあります。

こんな巨大な花器をどう使いこなしてよいのか、私には見当がつきません。

ためしに、椿の花を浮かべてみました。

なんとなく惹かれます。

調子に乗ってもう少し。

おお、これはいけそう、とドンドン行ってしまいました(^^;

あふれる椿、あきれる読者(^^;

花の精たちが、

うったえる何か。

10日後、

花の命の尽き方は?

 

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蛸壷花器

2023年01月26日 | 花道具

蛸壷を花器に転用した品が出てきました。

口径 13.3㎝、胴径(最大) 18.0㎝、底径 16.2㎝。江戸後期ー明治。

フジツボがびっしりと付いた蛸壷です。

土味からすると、常滑焼ですね。

壷の内外が輪状になっています。紐造りのように見えますが、とてもそんなに時代が遡る品とは思えません。手取りは、紐造り壷ほどずっしりとしていません。また、首の辺りはすっと轆轤で轢かれたようになっています。胴にある輪が積み重なったような部分は、装飾を兼ねた轆轤目でしょう。江戸後期には、備前にも、胴に強い轆轤目のある壷がよく見られます。

内側の底は、黒いタール状の物で水漏れを止めています。明らかに、花入れとして使っていたことがわかります。

この壷の最大の見どころは、ビッシリと付いたフジツボです。蛸壷花器は時々みかけますが、これだけフジツボ満開の品は珍しい。

手で持つと、痛い。

底面は、

まるで月面。

胴の部分は、

さしずめ太平洋。

これだけのフジツボさんに免じて、花活けの方はパスさせていただきます(^.^)

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宣徳銅?三足香炉花器

2023年01月24日 | 花道具

先回の銅花活けと非常によく似た品が出てきました。

径 12.2㎝、高 6.0㎝、重 1.1㎏。中国清朝?

三足の銅器です。先回の品より一回り小振りです。やはり、非常に重いです。

底に、「大明宣徳年製」の銘があります。このような銘は、陶磁器でおなじみの「大明成化年製」と同じように、一種のブランド銘として使われてきました。オリジナルは中国明の宣徳年間(1426-1435)鋳造の銅器、それを後世になって模したのです。

先回と今回の品、二種の銅器を較べてみます。

先回の品(右)が、少し赤みがかった艶のある茶褐色(宣徳色)であるのに対して、今回の品(左)は、少し黒みがかった茶褐色です。右の品のように、ピカピカした艶はありません。

現在、宣徳銅といえば、右のような品を指します。しかし、私たちが目にする宣徳銅のほとんどは、明治以降に日本で製作された物です。ひと昔前までは、どこの家にも、宣徳銅の火鉢がごろごろ転がっていました。これらの品は、真鍮に表面処理を行ったもので、今でも、宣徳色に美しく輝いています。しかし、中国製の宣徳銅が、600年の時を経て、どのような色調になっているか、私は本歌を見たことがないのでわかりません。すくなくとも、現在我々が目にする宣徳色でないことは、深い青色が当たり前だと思っている青銅器でさえ、当初は黄金色に輝いていたことからもうかがえるでしょう。

先回の品と較べると、今回の品では、年月を経た様子がうかがえます。明の時代の品は望めないかもしれませんが、中国では、清朝期にも「大明宣徳年製」銘の銅器が作られているので、その時代の品ではないかと思っています。

また、内側は荒れていて、花活け以外の物であった可能性が高いです。

先回の品は、周りに鍔状の縁が付いています。これは薄端花器ですね。縁に落ちた水が内側の溝に溜り、穴を通じて本体の花活け部分に戻るようになっています(下写真)。

一方、今回の品には、外向きの鍔はありません。

どうやら、これは香炉ですね。

品物が入っていた古箱には、「古銅火入型花器」とありますが、もともと香炉であった物を花器に転用したのだと思います。

花留めは、一方向にしか外せません。

古い香炉を花器に見立てた先人に敬意を表して、またまた松をいけました(ワンパターンもいいとこ(^^;)

時代をへた香炉のおかげで、様になりました。

 

松ばかりでは、あまりに芸がないので、

中国、宣徳帝もよろこんでくれるよう、

ニンニクスプラウト(ジャンボ)を入れてみました(^.^)

 

コメント (6)
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古銅波紋三足薄端

2023年01月22日 | 花道具

先日、古銅荒波花器を紹介しました。さらにもう一つ、少し控えめに波をあしらった銅の花器が出てきました。

径 17.3㎝、高 6.5㎝。重 1.27㎏。幕末ー明治。

非常に重い花器です。

色は、一般に、宣徳銅と言われている銅器に近いです。

胴に、波模様があしらわれています。

脚は3足の猫足。

「晴眠鋳」の銘があります。

江戸後期の鋳金家、村田整眠系統の金物師と思われます。

内側に、木製の花留めが入っています。円周にきっちりと合わせて作ってあり、簡単にははずせません。この写真の方向の場合にのみ抜くことができます。意図的かどうかわかりませんが、ほんのわずか(数mm)円が膨らんでいます。それを利用して花留めが作ってあるのですね。

このままでは終われないので、先日の松を拝借してそのまま入れました(木製の花留めは使いこなせないので、剱山ごと(^^;)

銅器に松は相性がいいみたいですね。

なんとかなりました(^.^)

 

ps。 inaka4848さんのブログで、以前に紹介した竹花生けに非常によく似た花器を使った生花が紹介されていました。

コメント (2)
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