備前焼の花生けです。
胴径(最大) 9.8㎝、口径 1.1㎝、底径 5.6㎝、高 17.3㎝。江戸時代中期。
一般に、献上手花生け、献上手徳利と言われている備前焼です。細長い首が特徴です。
上手の品で、よく水簸された土を使っています。底は露胎で、絹土高台とよばれるほど滑らかです。
底には、釜印があり、江戸中期の作と知れます。
底を除いて、全体に田土が上釉のように掛けられています。それが一部流れて景色になっています(下写真)
この品の口は削られ、擦り整えられているようです。
首の先が破損したのですね。
献上花生け(徳利)は、備前藩による幕府などへの贈答品として作られました。実際に酒を入れたり出したりするのは大変、花を活けるにもあまりに首が細長い。元々、実用を旨をとしていないのですね。それが破損して短くなり(4㎝ほど?)、花生けにはもってこいの形になったわけです(酒に関しては、下戸の私は不案内)(^^;)
祖父の花道具類はほとんどが大きい(というより巨大)のですが、こういうのもたまに混じっています。
胴には、糸目状の轆轤目と上品に散った胡麻。
鈍い光を放つ器からは、なんとも上品な感触が伝わってきます。
備前焼といえば椿。これはもう入れるよりほかありませんね(^.^)
【追記】備前焼の献上手鶴首徳利は人気があり、今も多くの作家が手掛けています。また、骨董市では必ず目にする品です。しかし、江戸時代に焼かれた本来の献上品は非常に少ないのが現実です。以前、骨董市によく出かけていた頃、名古屋の大きな会場で、顔見知りのハタ師(店をもたず、業者相手に品物を売買する人)にバッタリと出会いました。「暇だから冷やかしに来た」とのこと。実際、彼らは夜明け前、各業者が荷を搬入している時間帯が勝負なのです(古本市も同じ)。会場が開けばもう終わり。ですが、遊び半分にしろ、彼らがどのような品に目をつけるか、そこに興味があって、一緒にまわることにしました。あるブースで私は立ち止まりました。ウチの献上備前焼とそっくりの品があるではありませんか。胡麻あり、釜印あり、しかも首が欠けていない完器。思わず手に取ってながめていると、「それはヤメトケ。昔、ワシが多治見の〇〇に焼かせたモンや」とのこと。巷に、献上備前焼があふれているはずですね(^^;