遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

番外『歌舞伎・浄瑠璃カルタ』

2021年02月11日 | 納札・紙物

先回のブログで、『納札 東西名物名所合せ、能楽合せ』の紹介は終わりました。が、折帖の裏側には、納札とは別のカードがいっぱい貼ってありました。小さなカード(4x6㎝)です。すべて、人物と名が書かれています。

どうやら、これは納札ではなく、カルタのようです。時代はやはり大正末でしょうか。

少し調べてみると、ほとんどが歌舞伎や浄瑠璃の登場人物であることがわかりました。

全部で48組あります。

【てんじく徳兵へ】(天竺徳兵衛)
歌舞伎狂言。四世鶴屋南北作。天竺徳兵衛は日本国転覆をねらう謀反人として描かれています。妖術を使った神出鬼没ぶりが見所。

【あさひな義秀】(朝比奈義秀)
朝比奈義秀は、鎌倉前期、和田義盛と巴御前の間に生まれたとされる剛勇無双の武士。歌舞伎「寿曽我対面」に登場します

【さくらひめ】(桜姫)
 桜姫は、歌舞伎狂言、人形浄瑠の『桜姫東文章』(さくらひめあずまぶんしょう)の主役。鶴屋南北作。

【きじんおまつ】(鬼神お松)
鬼神のお松は女盗賊で、石川五右衛門、自来也とともに日本三大盗賊とされます。歌舞伎や錦絵などでおなじみですが、架空の人物です。

 

 

【やっこ妻平】(奴妻平)
 歌舞伎、浄瑠璃、「新薄雪物語」。薄雪姫に横恋慕する秋月大膳の手下と大立ち回りを見せる。

【まつおうまる)(松王丸)
 人形浄瑠璃、歌舞伎の演目「菅原伝授手習鑑」の登場人物。

【をほぼし由良助)(大星由良之助)
「仮名手本忠臣蔵」など忠臣蔵ものの歌舞伎、浄瑠璃に登場する人物。赤穂義士の大石内蔵助良雄。同志を率いて主君の仇を討つ。

 【くずの葉】
浄瑠璃、歌舞伎劇、「蘆屋道満大内鑑」(あしやどうまんおおうちかがみ)。信太妻(しのだづま)伝説中の白狐が、女(葛の葉)に姿を変えて安倍保名の妻となり、安倍晴明を産むが、正体が現れて信太の森に姿を隠す。

 

【けぞり九右衛門】(毛剃九右衛門)
 浄瑠璃、歌舞伎の登場人物。浄瑠璃「博多小女郎波枕」の密貿易船の首領。近松門左衛門作。歌舞伎でも「和訓水滸伝などに登場。

【ふハ伴左衛門】(不破伴左衛門) 
 歌舞伎十八番の一つ『大福帳参会名古屋』の主役。現在はほとんど上演されていません。

【この下藤吉】

不明(^^;  木の下藤吉郎のことか?

【えん藤むしや盛遠】(遠藤武者盛遠)
  歌舞伎・浄瑠璃の外題。 遠藤武者盛遠は、平安時代末期の真言宗僧侶文覚正人の俗名。

 

 

まだまだ、たくさんの人物が登場しますが、歌舞伎、浄瑠璃には全くもって不案内でして、大変疲れました。

残りは皆さんでどうぞ(^.^)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『納札 東西名物名所合せ』(10)

2021年02月09日 | 納札・紙物

『納札 名所名物合せ』の最終回です。

『東西名物名所合せ』の納札交換会は、先回のブログの江戸の天愚會と今回のブログで主に紹介する浪花の曙會が主になって行ったようです。

 

右:浪花 曙會
    浪花名物 新町廓
左:贈催主 天愚會 西田亀 大中雲峰 後藤花雪 森田正
    江戸名物 吉原

浪花 曙會、江戸 天愚會の一号札(4.6x14.3㎝)2枚です。単色の地味な刷りながら、縦長納札のデザインは洒落ています。

 

一丁札の倍(9.5x13.9㎝)、折帖1頁分の大きさの納札です。納札睦會の幹部名が書かれています。
睦會は、全国各地にあったようです。この納札に書かれた幹部の人たちは、全体の世話人ということでしょうか。名前が書かれたうちの何人かは、現在も続く東都納札睦会のホームページの上部に写真がのっています。いずれも、粋ないで立ちです。

   

東西名物名所合せ
   明治初年の高麗橋
  このほとりに住む
  森田正

 上の納札と同じ大きさの札です。但し、この納札は、先回のブログの西田亀、大中、後藤の納札と同様、左右がセットで一枚の横長納札となります。しかも、個人的な好みが非常に強く前面に出ています。今回の納札は、大阪高麗橋の明治初めの光景を描いたもので、森田正本人がそのほとりに住んでいがるのです(^^;

 

『納札 東西名物名所合せ』の最後に貼られている納札です。

    【寛政時代道頓堀之図】

これまでで最大(14.2x19.2㎝)の納札で、見開き両頁にまたがっています。右下に書かれているのは、


浪花澪標會 井田捨、やま一、にし岡、彫寿、西村庄翁                   大正十年十月二三日


浪花の澪標會が、大正10年10月23日に出した物であることがわかります。

この折帖の納札を多数出している天愚會は江戸の交換会ですが、左上に、「浪花 天愚會 御連中さん江」とあるように、この浮世絵のあて先は、浪花の天愚會です。睦會と同じく、天愚會が各地にあったことがわかります。

 寛政時代道頓堀之図は、江戸時代の大阪を描いた浪花情緒あふれる浮世絵です。上方歌舞伎が全盛期の頃の、良き大阪の風情を描いています。

 顔見せや 衣に指し 橋の霜   大江丸                    大友大江丸(1722 - 1805):江戸時代中、後期の大阪の俳人。


納札(千社札)は、元々、神社仏閣に納め、貼り付るために作成されたものです。
屋号や名前を黒の単色刷にした札がほとんどでした。その後、錦絵のような美しい色摺の納札が多くなり、納札を交換する催しが盛んになりました。色絵納札は美的にもすぐれ、復刻されることがない品です。特に今回のような品は、明治、大正と変わる世に、人々が浪速の街にもっていた郷愁が感じられる逸品です。

 

納札や千社札には、何の関心も知識もなかったのですが、10年ほど前、能楽の資料として、古い納札帖入手しました。それをを少しずつ読み解いていきました。思ったより手間と時間のかかる作業でしたが、100年前の庶民の習俗を知り、粋でいなせな町民文化の一端を知ることができました。納札で取り上げられていた名物や名所は、当時の人々に身近なものばかりです。けれども、今では消えているものも多くあります。納札は、ともすれば記録に残り難い生活文化の貴重でもあることをあらためて思いました(終)。

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『納札 東西名物名所合せ』(9)

2021年02月07日 | 納札・紙物

『納札 名物名所合せ』の続きです。

これまで紹介してきた納札は、ほとんどが、縦長の一丁札でした。納札帖の後半になるにつれ、大きな札が多くなります。

 

これまでと同じく、縦長の一丁札が2枚です。ただ、単純な長方形ではなく、四隅がカットされたモダンデザインの札です。

右:浪花 佐藤保   大正十年十月二三日
  浪花名物 天満天神

大正10年10月23日と記されていて、東西名物名所合せの交換会が行われた時期がわかります。

 

左:贈催主 天愚會 西田亀 大中雲峰 後藤花雪 森田正    江戸名物 浅草雷門

天愚會は、東京の会で、4人の催主名が記されています。

天愚會の名は、千社札の元祖、天愚孔平(1733~1817年)によると思われます。天愚は、松江藩江戸詰の武士でしたが、奇妙な衣装と行動で、奇人、変人として広く知られていました。千社札(納札)は彼の考案といわれ、継竿の先につけた刷毛で天井などに貼り付ける風習も彼が始めたと言われています。

 

(天愚會) 後藤 東錦繪売

右左ともに、一丁札2枚を繋げた大きい納札です。そしてさらに、この大判札が左右2枚でセットになっています。天狗のイラストは、天愚會を表しています。 

左の絵から、江戸の風俗がわかります。浮世絵は、店頭で売られていただけでなく、街頭にも錦絵売りがいたのですね。

 

勇祭りに初鰹 大

大中は、最初の納札にある、天愚會催主の一人、大中空峰です。

この納札も、上と同じく、左右大判2枚でセットです。

【勇祭りに初鰹】

東京、初夏の催しだと思いますが、詳細不明(^^;

 

西田亀
 江戸亀戸土産 

この納札も、上と同じく、左右大判2枚でセットです。

西田亀も、最初の納札にある天愚會の4人催主の一人です。

江戸亀戸の土産、張子の亀が吊られています。上に木杯。どうやらこの亀、そうとうに酔っているようです(^.^)

 

この納札も、左右大判2枚でセットです。

天愚會 大中空峰 西田亀 後藤 森田正・・凝った字体で書かれています。

左側の大版納札には、浅草名物、江戸玩具の飛んだりが2個描かれています。傘に吊られた人形は不明(^^;

なお、右頁左の納札に伊世万、扇令とある二人は、大阪、睦會の人ですが、協賛ということでしょうか。

 

 

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『納札 東西名物名所合せ』(8)

2021年02月05日 | 納札・紙物

『納札 東西名物名所合せ』の続きです。

すべて、縦長の一丁札が、折帳に2枚ずつ貼られています。

 

【年の市】
年末に神社やお寺の境内で立つ市で、正月飾りから日用品まで、様々な物が売り出されます。江戸時代、各地で開かれましたが、もっとも有名で人を集めたのは12月20、21日の神田明神境内の浅草観音市です。一方、日本橋の年の市は25-30日に行われ、納めの歳の市と呼ばれました。
【諫鼓鶏】  
 江戸時代、江戸の二大祭(神田祭、山王祭)の時に大伝馬町(東京都中央区日本橋)から出た山車が諫鼓鶏(かんこどり)です。諌鼓に鶏が止まっているのは善政が行われて世の中がうまく治まっていることを表しています。江戸時代、山車行列は、1番が大伝馬町の諫鼓鶏、2番が南伝馬町の御幣をかついだ猿と決まっていました。なお、納札に書かれている「閑鼓」は当て字でしょう(閑古鳥?(^^;)

 


【明神柴崎納豆】
江戸時時代、納豆が、庶民の間に急速に普及しました。なかでも、神田明神名物 「芝崎納豆」は、多くの人々に愛好されました。今も、神田明神鳥居横の神田天野屋で求めることが出来ます。川柳にも、納豆売りがよく登場します。納札には、納豆売りが描かれ、川柳が添えられています。「朝製の 柴咲なつとう めしませ  納豆のよくねて おきるたおやかに はたらくことを 人めわするな」

【よし原の獅子】
吉原には、8月1日から晴天30日間、芸者、幇間が、仮装をして凝った踊りの新曲を披露した年中行事がありました(吉原俄)。吉原俄(よしわらにわか)と獅子舞を組み合わせて舞踊化したものが長唄「俄獅子」です。

 


【住吉竹馬とごろごろせんべい】
 住吉大社(大阪市住吉区)の北側付近は住吉新家といわれ、紀州街道に面して、料亭や茶店、売店が軒を連ね、旅人や参拝客相手に商売をしていました。名物として、竹馬、ごろごろせんべい、蛤、麦藁細工などが売られていました。

この納札も、一丁札の上部が少しだけおりまげられています。

それを伸ばすと・・・

 

馬のたてがみが出てきます。出る部分は小さいながらも、一応、飛び出す納札です。よく見ると、竹の下部には車が付いていて、納札の枠の上にまたがって描かれています。竹馬をもう少し小さく描けば、たてがみも車も枠内におさまるのですが・・・・・どうしても遊んでみたかったのですね(^.^)

【住吉千疋猿】
 大阪の住吉大社で授与されていた猿の人形が千疋猿です。住吉で製作された土製の人形(住吉人形)の一つで、お守りとして作られました。現在では手びねりの伝統技が途絶え、復刻品が授与されています。しかし、昔の品には遠く及びません。

 

『伝統の郷土玩具』より

13匹の猿を底辺にしたピラミッドの頂上で、三番叟猿が手をかざしています。縁起物らしい楽しげな雰囲気が特徴的で、家内和合のお守りです。このような物を手びねりで作る技には驚嘆します。現存する品は数少なく、貴重な資料です。

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『納札 東西名物名所合せ』(7)

2021年02月03日 | 納札・紙物

『納札 東西名物名所合せ』の続きです。すべて、縦長の一丁札です。

 

【隅田川】 
徳利、都鳥、貝の郷土飾り、姉さんかぶりのお面が描かれています。これらは、当時、隅田川畔の土産物屋や茶店で売られていたのでしょう。
【目黒の餅花】
目黒不動尊(瀧泉寺、東京都目黒区)門前では、縁日の28日、名物として、餅花が売られていました。餅花とは、米の粉を練って小さく丸めた餅を木の枝につけたもので、花が咲いているように見えることからこう呼ばれています。 

 

【富士棐】
 不明(^^;
【王子の鎗祭】
王子神社(東京都北区)では、8月上旬、例大祭(槍祭)が行われ、田楽舞が奉納されます。「槍祭」の由来は、神楽殿の回りに槍を奉納し、交換する習俗によります。この時、御槍という槍のお守りが授与されます。
また、関東の稲荷神社の総元締めである王子稲荷神社(東京都北区)では、大規模な狐の行列が行われます。その時、火防凧や暫狐などとともに、願掛け狐(有名な張り子の狐)が授与されます。

 


【夏祭梵天】(ぼんでん)
 梵天とは、竹の先端に房を付けたものです。これをかかげる祭りは多くあり、この絵が、関東地方のどこの祭りを表しているのかは不明です(^^;
ただ、納札では、梵天の竹の竿先に付けたビラビラが見当たりません。白い球になっているだけです。これはひょっとして・・・・・白い球を捲ってみたところ・・・

 ⇛ 

やっぱり、ビラビラがありました。

張り込んだ納札帳は、本来☟だったのですね(^^;

【酉の市】

酉の市は、各地にありますが、一番規模が大きく有名なのは、浅草、鳳神社の市です。おかめの面をつけた熊手は福を掻き込む縁起物として、酉の市の一番の品です。

 

 

 

 

 

 

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