遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

輪島塗謡本紋小引き出し

2022年02月28日 | 能楽ー工芸品

輪島塗の小引き出し(手元箪笥)です。

幅 27.6㎝、奥行き 20.0㎝、高 25.6㎝。現代。

私の持っているガラクタ類の中では、数少ない新品です(^^;

小鼓、能管、謡いなどをする時、手短な小物入れとして使っています。

この品を入手したのは、謡本が前面に描かれているためです。

前回の文庫も謡本模様ですが、今回はかなり本格的な絵付けの品です。

引き出しの中には、小物類が雑然と入っています。

主な物は・・・

 

小謡本と小鼓調子紙:

調子紙は、細長い和紙です。小鼓調整の最終段階で、裏皮(観客からは見えない方)の中心に小片を唾で貼り付けます。これによって、音量と音質が劇的に良くなり、あのポ~ンという音が出ます。

小鼓包み用風呂敷:

調整済の小鼓を包んでおくための風呂敷です。囃子の会などで多くの人が出場する場合、出番まで調子が変わらないように、また、自分の小鼓がすぐに分かるようにするため、風呂敷で包んでおきます。派手な風呂敷を使っているのは私だけです(^^;

不明の布:

小鼓模様の細長い布(34x112㎝)です。用途は不明です(^^;

香道火道具:

使うあてのない香道具です。いつかは香道、と思っているうちに、気がつけばもう後がない(^.^)

扇子?:

一見、扇子に見えますが・・・・

骨の部分がスルスルと伸び・・・

箸が出てきました。

生菓子を盛った菓子器の横に扇をさりげなく置いて、これでどうぞ、と言ってみるのも一興かと(^.^)

こんな具合で、最後の2点は、能とは何の関係もない品でした。引き出しの中には、まだ、訳の分からない小物が残っていますが、今回はこれまで(^.^)

 

 

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謡曲紋文庫

2022年02月26日 | 能楽ー工芸品

先回に引き続いて、能に関係した漆器です。

縦 33.2㎝、横 24.2㎝、高 8.2㎝。大正―昭和。

先回の鎌倉彫り文庫より一回り小さく、文庫としては標準的な大きさです。

内側には、料紙が貼ってあります。

造りは華奢です。あまり重い物を入れるのには不向きです。

一瞬、分厚い紙を成型したものか、と思いました。が、塗りの剥がれた所には木地が露出していますから、木製です(^.^)

これといって特徴のない一般的な文庫ですが、模様が能がらみなので入手しました(^^;

朱塗の上に、漆絵で、謡曲本(高砂、羽衣)、小鼓、扇が描かれています。

ササッと描かれた漆絵です。大したものではありません(^^;

こちらの文庫には、小鼓の手付け(楽譜)を入れています。

小鼓の手付けはこの何倍もあるので、別の大箱に保管し、さしあたって必要な分を、この品に入れています。

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鎌倉彫小鼓紋大文庫

2022年02月24日 | 能楽ー工芸品

鎌倉彫りの大きな文庫です。

 

 

縦 33.2㎝、横 26.8㎝、高 12.8㎝。大正―昭和。

蓋には、特有の鑿跡を生かして、小鼓がダイナミックに彫られています。

木胎に彫りを施した上に朱漆を塗ってあるので、日本流の堆朱の一種とみなすことができます。凹部が少し黒みがかっていて、立体感を強調しているのも特徴です。

底と内側は黒漆塗りです。

高さのある大型の文庫ですから、書類などをいっぱい入れると相当の重さになります。

こういった品は一般に華奢な造りが多いのですが、鎌倉彫りは彫りのダイナミックさとともに、堅牢さが特徴です。今回の文庫も、使用にたえる実用品です。また、箱は当然木を組み合わせて作られているのでしょうが、蓋などは、あたかも刳り抜きで造られたかのように見えます。

鎌倉彫りのウリは何といっても彫りです。

小鼓に桜散る図は日本人好みですね。

3-4mmほどの厚さの彫りですが、それ以上深い彫りに見えるのが鎌倉彫りの妙です。

この小鼓紋をよく見ると、掛け紐をゆるめて胴をはずしかかったところであることがわかります。小鼓は、使用したら、胴から皮をはずした状態にしておきます。皮を守るためです。舞台や絵画で見る小鼓(胴に皮がセットされた状態)は一時の姿なのです。ただ、この状態の小鼓は絵になりますから、このほうが一般にはポピュラーです。なので、皮のはずし際を捉えた模様は大変少ないです。私も初めてです。なかなかニクイ意匠です(^.^)

となると、この文庫は小鼓に使っているかというと・・・

笛(能管)の唱歌(楽譜)を入れています。

能管をデザインした工芸品は大変少ないのでやむを得ず(^^;

次回以降も、能関係の漆器などの木製品を紹介します。

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朱塗猫脚花台に陶胎七宝大花瓶

2022年02月22日 | 漆器・木製品

堆朱ではありませんが、朱塗の漆器ですので、ここで紹介します。

29.9㎝ x 22.7㎝x 4.7㎝。昭和。

蓋(右)と左の朱箱に分かれます。

さらに、左の箱は蝶番で二つに合わさっています。

中には、脚が四本。

クサビ型の合せ部を差し込みます。

ピッタリとはまります。

他の脚をつければ、

猫脚のテーブルのできあがり。

先ほどの蓋をのせれば、完成。

幅45.8cm、奥行き28.2cm、高さ25.6cmの大きさです。

これは花台ですね。

「花台なんていくらでもあるのに!」と文句を言われました。ごもっとも。活花好きのご先祖様がわんさと花器を残していて、今さら花台でもないのですが、昔の物は唐木の物がほとんど。もう少しモダンで使い勝手の良い品がないものかと探していたところ、いきつけの骨董屋で見つけました。

平たい弁当箱のような箱が、花台に変身するのも面白い。

 

実は、陶胎七宝大花瓶を飾りたかったのです(^.^)

目の良い方はお気づきかも知れません。透明テグスを花瓶に掛け、四本の脚に固定しています。せめてもの地震対策です。

故玩館に数多ある脆いモノのうちで、まがりなりにも対策をしてあるのは、この品だけです。あとは、運を天にまかせて(^^;

でも、この品も、花台ごと転がったらオシマイでしょう。

「テグスで固定」も「手薄で怖い」(^^;

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堆朱禅語松竹梅香箱

2022年02月20日 | 漆器・木製品

今回は、江戸時代の日本の堆朱です。

かなり年季のはいった、小さな桐箱に入っています。

ボロボロの薄絹布に包まれていたのは・・・

小さいながらも凛としたたずまいの品です。

10.0㎝ x 11.7㎝、高 8.4㎝。江戸中期。

2段の箱の高さは、上段3.2㎝、下段4.0㎝で、下段が少し高くなっています。

木箱の蓋、側面を削り模様をつけて、その上に朱漆が塗ってあります。

内側、底は黒漆塗りです。

かすかに木目が見られます。

箱の裏には、明和7年(1770)に、伊勢国、栢禪和尚から賜った、と記されています。

四方の彫りを、左回りに見ていきます。

少し斜めから見ると、彫りの様子がよくわかります。

 

 

 

彫りの深さは、上面が1-2㎜、側面、2-3㎜です。

この品は、中国製、それとも日本製?

中国製ならば、分厚く塗った漆層を削って模様を出すでしょう。木胎に彫刻模様を施し、朱漆を塗る方法は、やはり日本のものだと思います。この品は香箱なので、さらに日本の品の可能性が高いです。また、下段を少し大きくして安定感を出した段重は、上手品にしばしばみられます。

このような事から、今回の品は、中国の堆朱に憧れてつくられた日本流の堆朱だろうと推定されます。

明治以降、◯◯堆朱のような特産品が量産されるようになったので、木胎彫刻朱塗の日本流堆朱は多く残っています。しかし、江戸時代の物、特に年代がわかる品となると極端に少なく、今回の品は資料的に貴重だと思います。

表面に大きく彫られた文字「中有風露香」。

これは、中国北宋時代、蘇軾(蘇東坡)の詩「黄葵」にある言葉です。

「弱質困夏永,奇姿蘇曉涼。低昂黃金杯,照耀初日光。檀心自成暈,翠葉森有芒。古來寫生人,妙絶誰似昌。晨妝與午醉,真態含陰陽。君看此花枝,中有風露香。」

君看此花枝,中有風露香。」(君看よ此の花枝、中に風露の香あり)
(花枝をみてごらんなさい。そこに香りを感じることができます。)

「中有風露香」は、禅語のひとつです。

花枝と同じで、人間も姿形をこえた中に、心や人間性を感じることができる。つまり、 物事は目に見えるものの奥に真実がある。

大変、含蓄のある言葉ですね。その言葉が、江戸中期に、日本の堆朱の香箱に彫られていることに感慨をおぼえます(^.^)

 

 

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