耐震強度偽装や拉致問題、或いは、米軍施設のグァム移転負担金等々の陰に隠れて、国会で審議中の案件に「組織犯罪処罰法改正案」なるものがある。
この法律のトリガーは、2000年11月、国連総会で「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」が採択され、日本も条約に署名したことがスタートだが、いまだに成立しないのは、深刻な問題を含んでいるからだ。
本問題に限らず、マスコミの社会的使命とは世論形成だ。事件の後追い分析や解説には長けているが、国民が将来直面するであろう問題について、事前に警鐘を鳴らす役割りを失念していないのかと不満が募る。
ほかにも、沖縄の米軍海兵隊がグァムへ移転する費用負担問題について、積算根拠や金額の多寡を論評するだけではなく、日本の国防のあり方や極東アジアにおけるわが国の役割と日米同盟等々、国民自身が考えるべき次元まで掘り下げて問いかける視点が欲しい。教育基本法についても、古すぎるとか愛国心の表現を盛り込むか否かではなく、現在の法律の逐条解説などは聞いたことがない。
以前、東京新聞が憲法全条文をシリーズで解説したことがあったが、価値ある企画だった。最もインパクトの強いテレビ媒体で同様の企画を検討して欲しい。視聴率競争に凌ぎを削るだけではなく、マスコミの良識と社会的責任の大きさを自覚すべきだ。軽薄なバラエティ番組が浮薄な若者を産んでいることを猛省してもらいたい。