![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/74/40689f4ae8ab0d9019a21b01bfb1354c.jpg)
以前小学校に勤務していた頃、子どもたちの交通安全教室と併せて滋賀県警察音楽隊の演奏を聴かせていただいたことがある。その時、警察の中に音楽隊があるということを初めて知った。そういえばどこの国でも軍隊には音楽隊があって、いろいろな行事で式典演奏を行い、士気を高めるという大切な役割があるし、警察も同じかもと思いながら聞いていたのだが、その演奏レベルの高さにびっくり‼ 滋賀県の場合、兼務隊といって普段は交番やパトカー乗車、事務など他の業務も行いながらの演奏活動だそうで、よほど好きでないとできないだろうなと、いたく感心した記憶がある。
日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた「ミッドナイトスワン」で注目を浴びた内田英治監督が、今回の作品を思いついたきっかけはYouTubeで観た警察音楽隊を紹介する内容のフラッシュモブ映像だそうで、警察音楽隊について詳しく調べると共に、そこに組織の中で自分の立場が失われていく刑事の物語を重ね合わせれば、おもしろい作品になるのでは・・・、と原案ができあがっていったそうだ。
主人公の成瀬司は犯罪捜査一筋の鬼刑事。しかし、違法すれすれの捜査や個人プレイが過ぎ、周りからは浮いた存在に。「コンプライアンスの遵守」を重視する上司が命じた異動先は警察音楽隊であった。そこで出会った隊員達も一癖ありそうな‘はぐれ者’ばかり。しかし、今まで関わっていたアポ電強盗事件の新たな発生を知り、捜査本部に乗り込んだ成瀬には「もうここの人間じゃない」という事実を突きつけられ、失意のどん底に。さらに市民フェスティバルでの演奏にも失敗し、こともあろうに警察手帳を忘れるという考えられないミスまで起こしてしまうが、成瀬の今まで見せなかった側面を知り、「音楽と一緒ですよ。ミスしても周りがカバーすればいいんです。」と声をかけたのは、音楽隊の春子だった。
成瀬を演じるのはアクションからコメディまで幅広く活躍中の阿部寛。どんな役でもこの人に任せれば大丈夫という安心感があるのが強みだが、今回のドラマー役は初体験だそうで、監督から演奏シーンは吹き替えはなしで、という要請を受け、ゼロからの練習に励んだそうだ。この件は他の隊員達も同じで、清野菜名のトランペットも、高杉真宙のサックスもすべて自身が奏でる音が使われているというから大したもの。それを応援するかのように使われている楽器はすべてヤマハ製。更に豊橋市のフィルムコミッションの協力を得て、豊橋市駅前や公会堂などオールロケで撮影された生々しい映像を久しぶりに堪能することができた。
壮行会でもらった花束をゴミ箱に投げ捨てていた荒くれ刑事が、隊員達やファンに支えられ、みんなと音を合わせ、束ねていく役にまで変わっていったことを、最後のステージの「IN THE MOOD」で確認できた。今まで大事にしていた価値観が崩れたときでも、人間はいつでも再生できることをこの作品は伝えてくれる。
それにしても、音楽って、いいなあ。
(HIRO)
監督:内田英治
脚本:内田英治
撮影:伊藤麻樹
出演:阿部寛、清野菜名、磯村勇斗、高杉真宙、倍賞美津子、光石研、楢崎誠(Official髭男Dism)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます