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「ヒトラーに屈しなかった国王」(2016年ノルウェー)

2018年07月18日 | 映画の感想・批評
 普段あまり馴染みのないノルウェーの歴史をひもといてみると、古くはヴァイキングの時代に遡り、14世紀にはノルウェー王家が断絶してデンマークやスウェーデンの支配を受けることになる。
 1905年、形式的にはスウェーデンと連合国を構成していたノルウェーが分離独立する。さて、政体をどうするか国民投票が行われ、共和制でなく立憲君主制を選択することに決し、新生ノルウェー王国の君主はデンマーク国王の実弟に白羽の矢が立った。かれは夫人と幼い息子を連れ立ってこの地に渡り、ホーコン7世として即位する。
 スウェーデンともどもこの国は独立以来中立に徹し、第二次世界大戦が始まってもその姿勢を堅持した。ところが、ヒトラー率いるナチスドイツは北海の軍事拠点が欲しいためノルウェーに同盟を強要する。これを無視するノルウェーに対してドイツ軍は電撃的に侵攻するのである。
 国王はファシズム勢力に加担などできるか、と抵抗する。何しろ自らの出自が他国であるという負い目からか、なおさらこの国のために軽々しく民主主義の政体を捨てるわけにいかないという決意があったのだろう。
 いっぽう、オスロ駐在のドイツ外交官が現地の軍部と本国から強行策を指示するリッベントロップ外相をなだめながら、外交努力によって国王を説き伏せようと努力する。その駆け引きの妙がポリティカル・サスペンスのおもしろさを引き出しているところが第一の見どころだ。
 若き皇太子は国王とともにレジスタンスを主張するが、政府部内には「この際ナチスと手を組むほうが得策だ」などと洞ヶ峠を決め込む輩もいて、国王の立場はいよいよ窮地に追い込まれるのである。
 結局、国王とドイツ外交官の交渉は決裂し、ノルウェーはデンマークやオランダのように占領を許してしまう。国王と皇太子は英国に亡命し、大戦が終わるまでロンドンでレジスタンスを指揮した。
 因みに現国王はホーコン7世の孫(当時の皇太子の長男)にあたり、大戦中は母と共に母の母国であるスウェーデンに一時逃れたあと、米国で亡命生活を送ったという。(健)

原題:Kongens nei
監督:エリック・ポッペ
脚本:エリック・ポッペ、ハラール・ローセンローヴ・エーグ、ヤン・トリグヴェ・レイネランド
撮影:ヨン・クリスティアン・ローセンルン
出演:イェスパー・クリステンセン、アンドレス・バースモ・クリスティアンセン、カール・マルコヴィクス、ツヴァ・ノヴォトニー


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