ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

助産師不足? 適正配置に課題

2006年08月04日 | 飯田下伊那地域の産科問題

最近は病院の産科部門閉鎖が相次ぎ、全国的に問題となっていますが、病院の産科部門閉鎖に伴い産科医が去ったあと病院にとり残された助産師達が、一般看護師として働くケースが増えているのは非常に問題だと思います。

助産師資格を生かせなくなった有資格者がどんどん増えている一方で、産科業務を継続している病院には地域の妊産婦が集中して分娩件数が増えているにもかかわらず、なかなか助産師を集められず、助産師不足で窮地に陥っている病院が増えているという非常に矛盾した現状があります。

経験豊富なベテラン助産師は地域の宝です。その貴重な地域の宝を他業務に就かせて死蔵させておくのは非常にもったいない話です。

助産師を地域内で適正に配置することが非常に大切だと思います。

例えば、当科の場合は、まず妊婦検診の最初の窓口が助産師外来となっていて、諸計測、問診、NST、内診、バースプランなど、一人30分くらいかけて丁寧に対応し、最後に医師が腹部エコー検査して終わりという検診の流れになっています。正常経過の場合は、医師の診察はほんの付け足しという感じですが、一応、助産師と医師とでダブルチェックを行っています。

また、通常の分娩管理は、特に異常がない限り、入院受け入れから分娩修了まで、担当助産師がつききりで管理し、医師は全く手出し口出ししてません。しかし、特に何の異常がなくても、児娩出の直前に呼ばれて、全例で医師が分娩に立ち会っています。

分娩の途中からでも、何か異常が発生した瞬間から、産科医主導の分娩管理に移行します。異常はいつ起こるか全く予測できませんので、分娩当番の医師は交代制で、24時間いつでも異常に即応できるようにスタンバイしてます。必要があれば、新生児科医がいつでも分娩室にかけつけて来てくれますし、母体の急変時には麻酔科医や循環器科医などがいつでも迅速に対応してくれます。

このように、助産師、産科医、新生児科医、麻酔科医などが周産期医療チームを構成し、チームで一体となって取り組んでいますが、実際には、ほとんどの妊婦は正常分娩ですから、外来でも分娩室でも、助産師の果たす役割は非常に大きいです。

地域全体の周産期医療が存亡の危機にある今、1市、1町、1病院の利害にこだわっている場合ではありません。地域の分娩が集中して分娩数がどんどん増えている病院に、産科医を集約するだけではなく、地域の助産師も同時に集約する必要があります。