コメント(私見):
新聞記事を読むと、『正常分娩のみに対象を絞ったバースセンターを地域内に設立すれば、産科医の負担はその分だけ軽減する筈なので、産科医不足の立派な対策となるのではないのか?行政はすぐにでもバースセンター設立を実行に移してほしい。』などと主張して熱心に署名活動に励んでいらっしゃる住民運動のリーダーの方々や、それらの運動を支持する新聞記者なども、世の中には大勢いらっしゃるようです。
『正常分娩』とは、分娩が終了して、経過を振り返ってみて、初めて今回の分娩は正常分娩だったと言えるわけで、途中まで正常の経過だと思っていた妊婦さんであっても、妊娠経過中や分娩経過中に、予想に反して異常事態が発生するようなことはいくらでもあり得ます。その時には、発症後30分以内に迅速に対応しなければならないような状況はいくらでも起こり得ます。
確かに、今後の産科医療にとって、経験豊かな助産師達のパワーを、従来以上に最大限に地域で活用していくことは非常に重要だと思います。
しかし、バースセンターの助産師達をバックアップする地域の産科医療体制が未整備のまま、バースセンター設立だけを強力に推進すれば、分娩経過が急に異常化した時には、その地域内では決して適切に対応することができず、必ずお手上げ状態になってしまいます。万が一、地域の産科事情がそんな状況になってしまったら、最後まで残って頑張っていた産科医たちも、全員その地域から逃げ出してしまうかもしれません。
参考記事:
****** 中日新聞、長野、2007年12月3日
県内産科医療 崩壊の危機
住民側の意識改革必要
飯伊に続き松本地域でも 診療分担に理解を
来年3月以降、県内の産婦人科医約20人が離職し、各地で分べん制限や集約化が進む見通しで、県内の産科医療は危機的状況に陥っている。高い訴訟リスクや日々の激務で、現場の医師も「限界だ」と悲鳴を上げるが、医師数が増えない限り、抜本的解決は望めそうにない。今、医療を崩壊させないために、医療の受け手である私たちができることは何か。(中津芳子)
「非常に切迫した状況。行政の皆さんにもこの状況をわかっていただきたい」。先月初旬、松本市で開かれた「松本地域の産科小児科検討会」の第2回会合。信州大、県立こども病院などの医師らと、松本地方事務所管内の9市町村長約20人が集まる中、信州大のNICU担当の馬場淳医師らが現場の医師たちの窮状を訴えた。
県衛生部によると、県内でお産を扱う施設数は49施設(9月現在)。昨年に比べて4件減少した。出産数を制限したり、HPで出産できるか否かを公表するなど、自分たちの医療を守るための対応策をとる病院が増加している。残った勤務医は日々の業務に加え、ギリギリの状態で踏みとどまる若手医師を支える役割を担うなど、負担は増える一方。信大の金井誠医師は「今一番必要なのは、ぎりぎりの状態で頑張っている医師をやめさせない努力」と力を込める。
医師を追い詰めている要因の一つに、患者側の問題もある。緊急性は認められないのに、仕事や家庭の都合で夜間や休日に受診に訪れる人、定期的に健診を受けない妊婦など、信大にも県内各地から相談が寄せられている。それでいて「待ち時間が長い」などと不平不満をぶつける。「病院がまるでサービス業やコンビニエンスストアのようになっている。医師がやめていく一つの要因」(金井医師)と指摘する。
さらに、現場の医師が懸念するのが、医療崩壊の危機感が医師や病院関係者の間だけにとどまっていること。検討会の会合で、松本医師会の須沢博一会長は「医療者側からの訴えや説明だけではなく、行政も広報紙などを使って現状を説明してほしい」と求めたが、行政側からの具体的な回答は得られなかった。金井医師は「なぜお産ができなくなったのか、自分たちの地域だけでなく、もっと大きなエリアで考えようという意識を持ってほしい」と訴え、行政の支援を強く求めている。
岐阜県では、常勤の産科医が1人しかいない3病院を、年内にも近隣の3病院の産科に集約。宮崎県では、地域分散型のシステムを構築するなど、県外でもこれ以上医療を崩壊させないための取り組みが進む。飯田下伊那地域に続き、松本地域でも診療分担を視野に入れた体制作りが進んでいるが、これらは行政の支援と住民の理解が不可欠。男性も女性も医療崩壊寸前の現状を知り、自分に何ができるかを考えることが、今、医療を崩壊させないための方法ではないだろうか。
・・・・・・取材ノートから
知恵出し合おう
正直に言うと、取材後には、子どもを産むことに不安を感じてしまった。それだけ現場の医師たちの叫びは切実だった。
医師不足は全国的な問題。県内各地の病院に医師を派遣する信大病院でさえ、医師が不足している。しかし、出産で離職し、復帰を果たしていない女性医師、助産師、看護師、出産を扱わない開業医など、隠れた力はたくさんあるはずだ。
子どもは私たちの光であり、未来であり、希望である。地域に住む一人一人が少しずつ力と知恵を出し合い地域医療を支える体制づくりが求められている。
(中日新聞、2007年12月3日)
****** 読売新聞、2007年12月3日
市立半田病院 搬送妊婦 受け入れ休止
「産科医2人減で対応困難」
半田市立半田病院の産婦人科で、医師不足のため他の医療機関からの妊婦搬送の受け入れを11月から休止していることがわかった。同病院で診療を受けている妊婦については従来通り24時間態勢で対応している。
同病院は病床数が500あり、県の地域周産期センターとして東海、常滑市など知多半島医療圏の10市町を担当し、これまで各市町で対応できなくなった妊婦らを年間30~50人受け入れている。
産婦人科の石田時一統括部長(52)によると、同科には医師が5人いたが、今年7月に産休に入った女性医師が退職し、来年1月から産休に入る予定だった女性医師が体調を崩したため10月から病欠、そのまま産休となったため、2人減となった。
このため同病院にかかっている妊婦を24時間態勢で診療するのに手いっぱいとなり、石田部長は「他の機関からの搬送を休止せざるを得なかった」という。
同病院に医師を派遣している名古屋大医学部に新たな医師の派遣を求めているが、メドは立っていない。
(読売新聞、2007年12月3日)
****** 毎日新聞、愛知、2007年12月3日
市立半田病院:妊婦の緊急受け入れ、11月から停止
愛知県半田市の市立半田病院(肥田野等院長、500床)が11月から、他の医療機関からの妊婦の緊急受け入れを取りやめたことが2日分かった。同病院は、地域の診療所や開業医での出産、治療が難しい妊婦を受け入れる県の「地域周産期母子医療センター」にも認定されているが、診察に必要な産婦人科医を確保できなくなった。
半田病院は05年2月、中部国際空港開港に合わせて「救命救急センター」を開設した知多半島地域の中核病院。産婦人科にはこれまで5人の医師がいたが、30代の女性医師が7月から産休に入り、20代の女性医師が育児などのため11月に退職、3人になった。名古屋大医学部への医師派遣要請も断られ「現態勢での妊婦の緊急受け入れは困難」と判断。半島内の公立病院や産婦人科医院などに、緊急時は名古屋市内の病院などに搬送するよう連絡した。名古屋市への搬送には約1時間かかるが、知多中部広域消防本部によると、受け入れ停止に伴う問題は現時点では起きていないという。
肥田野院長は「産休医師の復帰や、産婦人科希望の研修医に来てもらうことでの再開に期待している。異常分べんは、多くは事前に分かるので、普段からかかりつけの病院を決め、定期的に診察を受けてほしい」と話している。【林幹洋】
(毎日新聞、愛知、2007年12月3日)
****** 毎日新聞、滋賀、2007年12月4日
彦根市立病院:非常勤医師確保、「院内助産所」開設へ--来年2月から
彦根市立病院(赤松信院長)は3日、医師が1人になり、3月から出産ができなかった産婦人科に来年2月1日から院内助産所を開設すると発表した。非常勤の産婦人科医師1人が確保できたのが大きな要因。2人目以上のお産で、通常分娩(ぶんべん)が可能な出産リスクの低いケースに限定し、年間100件の分娩に対応する。院内助産所は県内初。
産婦人科は、医師3人だったが、3月20日以降は1人に。外来は従来通り行い、分娩や手術、がん治療などは軽い場合を除き、他の病院を紹介してきた。出産を控えた母親を中心に不安が高まり、市は湖東地域医療対策協を設けて対応を協議。市立病院も院内助産所開設に備え、先進地の神戸などで助産師の研修を重ね、施設も整備した。
この日は、赤松院長や江頭輝枝・看護部長らが記者会見。医師ではなく、助産師15人が中心になって院内助産所を開設し、常勤医師と新しい非常勤医師が万一に備える支援態勢を発表した。前回が帝王切開だった妊婦や双子や逆子などリスクの伴うケースは対象外。
同病院は、医師3人の時は年間550件の分娩があったが、助産所では100人前後になる見通し。赤松院長は「週1回だが、非常勤医師の確保と、助産師の研修が終わるので、リスクが低いケースに限るが、分娩ができる院内助産所が開設できる。今後は医師確保に努力する」と話している。【松井圀夫】
(毎日新聞、滋賀、2007年12月4日)
****** 京都新聞、滋賀、2007年12月3日
「院内助産所」を来年2月開設
彦根市立病院、助産師支援の医師確保
産婦人科の医師不足に伴い、今年3月から分娩(ぶんべん)などの診療を休止していた彦根市立病院(彦根市八坂町)は3日、助産師が中心となり出産を介助する「院内助産所」を2008年2月1日に開設する、と発表した。助産師を支援する非常勤医師を確保できたのが大きな要因で、院内助産所の開設は県内で初めて。
院内助産所の体制は、助産師15人、産婦人科の常勤と非常勤の医師2人。2人目以上のお産で通常分娩が可能とみられる妊産婦が対象で、双子以上の多胎分娩や逆子など、リスクの高い出産は対象外となる。助産師が中心となってお産を手伝い、利用する妊産婦は妊娠から育児期まで継続したケアを受けられるとともに、家族立ち会いなど希望通りの出産もできるという。
同病院の分娩件数は年間約550件(05年度)だったが、06年4月に常勤4人体制だった産婦人科の医師のうち3人が今年3月末までに退職した。このため、同病院は診療体制を縮小、分娩を休止していた。
赤松信院長は「リスクの低いものに制限されるが、非常勤医師を確保できたため、分娩を再開できることになった。体制を拡大できるよう努力したい」と話している。
(京都新聞、滋賀、2007年12月3日)
****** 朝日新聞、宮城、2007年12月3日
助産師外来へ県が研修会/産科医不足に対応
助産師が医師に代わって健診や保健指導にあたる「助産師外来」の開設を支援しようと、県は助産師の資格を持つ看護師の研修を今月から始める。産科医不足で分娩(ぶん・べん)を扱わない病院が増えている県北地域の病院に勤務する看護師が対象だ。最新の技術や知識を学んでもらい、産科医の負担を少しでも和らげる狙いがある。
県北では、昨年310件の赤ん坊を取り上げた登米市立佐沼病院が今年9月からお産を取りやめた。栗原市立栗原中央病院では04年8月からお産を休止している。両病院とも産科の常勤医はおらず、非常勤医が週2日ほど外来診療のみを行っている。
このため、産科の常勤医がいる大崎市民病院や石巻赤十字病院だけではなく、岩手県一関市の病院まで1時間以上かけて通院する妊婦もいるという。
助産師の資格を持つ看護師の多くは、病院に勤めていながら、お産の現場から離れているため、技術や経験の不足が懸念されるという。研修はこのような不安を取り除くことが目的だ。
研修は講義8日間と実習32日間。東北大病院など仙台市内の4病院で行う予定。講義では主に妊婦の精神的なケアなどを学び、実習では超音波検査や触診など最新技術を習得してもらう。
受講生は、栗原中央病院や佐沼病院など産科の常勤医がいない県北地域の病院に勤める助産師10人前後になりそう。
県では、研修を受けた助産師らを中心に、両病院に助産師外来を設置したい考えだ。当面は、経過が順調な妊婦の健診や保健指導をするだけで、お産は扱わない。健診などを地元の病院で行い、出産は常勤医のいる病院に集約化する方針だ。
県医療整備課は「出産前後の体調管理や育児など妊産婦が抱えるさまざまな悩みにも対応できる。産科医の負担も減らせる」と期待を寄せる。
県内では、仙台医療センター(仙台市)が助産師外来を設けている。公立刈田綜合病院(白石市)では、助産師が正常なお産を担当する院内助産所を設置している。
(朝日新聞、宮城、2007年12月3日)
****** 読売新聞、長野、2007年12月2日
院内助産院設置進まず 産科医不足解消の選択肢
上田市の市民グループが、上田市産院に「院内助産院」を設立するよう、同市議会に請願書を提出したが、市は早期設立には及び腰だ。産科医不足の現状を打開しようと、県内の10病院は院内助産院の開設を検討しているという。にもかかわらず、設置が進まないのはなぜか。
■知事「困難」
院内助産院では、病院内の助産院で正常な出産だけを扱い、検診から出産までのすべてを助産師が手掛ける。妊婦や胎児に異変があれば、院内の産科医の指示を仰ぎ、医療設備の整った病院に搬送するなどの対応を取る。県内では、諏訪マタニティークリニック(下諏訪町)にあるだけだが、出産の扱いを中止する病院が相次ぐ中、産科に代わる選択肢として注目を集めている。
だが、県も上田市も、自ら運営する病院への院内助産院の設置に否定的だ。
「緊急時に対応する医師が不足しており、設置は困難」。来年度から出産の受け入れを停止する県立須坂病院(須坂市)への「院内助産院」設置について、村井知事は10月、県議会の一般質問で、こう説明した。
県は院内助産院をサポートする医師の不足を、上田市は産院の医師や設備で対処できない非常時の搬送先候補である国立病院機構長野病院(上田市)の医師不足や訴訟リスク、助産師の技術・経験不足を理由に挙げる。実際、須坂病院で出産をサポートできる常勤産科医は1人だけだという。こうした姿勢に対し、県内のある医師は「助産師だけのお産は危険という先入観がある。自治体は医療過誤訴訟を恐れている」と指摘する。
■集約化
一方、県内の医師の派遣先決定にかかわる信州大医学部と県は、地域の中核となる病院に産科医を集め、出産の扱いを集中させる「集約化」を目指している。飯田市立病院では2005年、常勤医を1人補充して4人態勢とする代わりに、周辺地域の出産を一手に引き受けることにした。小規模な病院が出産を取り扱わなくなったことで、「集約病院」の医師の負担がかえって増える事態も起きている。
「院内助産院は正常な出産だけを扱うため、常勤医1人でも十分対応できる」との専門家の意見もある。産科医の絶対数増がすぐには望めない以上、院内助産院への期待は高まっている。
■医師頼み
県内に約570人いる助産師は、正常な出産については取り扱う資格を持つが、病院勤務の助産師の場合、医師に頼らず出産を扱える技術がないケースも少なくない。産科医の下で、補助的な立場でしか出産にかかわっていないからだ。
日本助産師会長野県支部の保谷ハルエ支部会長は「院内助産院には大賛成だが、我々も技術の向上に努める必要がある」と話す。助産師が出産前までの検診などを扱う「助産師外来」は、すでに13の病院が設置しているが、県内の別の医師は「院内助産院ならば、高度な経験まで積ませることができる」と指摘している。
(読売新聞、2007年12月2日)
****** 信濃毎日新聞、2007年12月1日
母親ら、院内助産院開設求め上田市会に請願書
上田市の母親らでつくる「安心してお産と子育てができる地域をつくる住民の集い」(佐納美和子代表)は30日、逆子などの心配がない正常出産を助産師主導で取り扱う院内助産院(バースセンター)の開設を求める請願書を、賛同者4万6千人余の署名を添えて市議会に提出した。県に院内助産院の拡充を求める請願書も近く県会に提出する。
この日の請願書は、産科医が不足する中、助産師を積極的に活用するよう提言。上田市産院を念頭に、正常出産は助産師が扱い、出産前後を一貫してケアする院内助産院を将来的に開設するよう求めている。
また、危険を伴う出産などに対応できるよう、国立病院機構長野病院(上田市)の常勤麻酔科医確保や、救急搬送システムの整備も訴えた。
佐納代表が土屋陽一議長に請願書を渡した後、「集い」の直井恵世話人(29)が「産科の先生が減っていき、『出産難民』が発生するのではないかと不安だ。早急に新しい出産の仕組みを地域に作っていただきたい」と声明を読み上げた。
上田市産院をめぐっては、甲藤一男院長の辞意を受け、母袋創一市長が助産師外来開設の方針を示しているが、助産師外来は妊婦の健康診断などが主で、通常、出産までは取り扱わない。
(信濃毎日新聞、2007年12月1日)
****** 毎日新聞、長野、2007年12月1日
バースセンター:設立へ4万7000人分の署名提出 助産師主導の出産求め
◇上田市議会へ
上田市で助産師が主導して出産を取り扱う「バースセンター」などの設立運動を行っている住民グループ「安心してお産と子育てができる地域をつくる住民の集い」は30日、設立を要望する請願書と設立に賛同する約4万7000人分の署名を同市議会の土屋陽一議長に提出した。土屋議長は「いい方向に持っていけるように努力したい」と応えた。
請願書では▽助産師外来の設置▽病院内に助産師が出産を主導する「院内助産院」の将来的な設置▽連携する病院の医療体制の充実――を求めた。請願を受け、開会中の同市議会は厚生委員会で審議する予定。住民グループ事務局の片桐直希さん(62)は「感触はよかった。ただ医師不足もあるので、助産院については設立してもらいたい」と話した。【川口健史】
◇ しらかば帳: 「それは素人の意見だ」…
「それは素人の意見だ」。助産師を中心に医師が出産を支援する「バースセンター」の設立運動が地域で盛り上がりを見せる上田市。先日、ある席で母袋創一市長にこの話をしてみたら、一蹴(いっしゅう)されてしまった。県選出のある国会議員は全国の設置例を引き、「全国的に広がる産科医不足の解消につながるのでは」と前向きだ。折りしも年約700件の分娩(ぶんべん)を扱う上田市産院は、院長の辞職により常勤医1人となり、分娩数を大幅に削減しなければならない。どうすればよいのか。医師確保の展望も見えない現状では、バースセンター設立を考えても、「素人の意見」とは誰もいわないと思うのだが。【健】
(毎日新聞、2007年12月1日)
****** 中国新聞、2007年11月30日
小児・産科医師を基幹病院に集約 山口県、計画策定へ本腰
山口県は、勤務医不足の深刻な小児科、産科の医療体制を確保するため、医師を基幹病院に集める「集約化・重点化」計画づくりが本格化してきた。山口大医学部や病院の医師らでつくる医療対策協議会で議論を重ね、本年度内の策定を目指す。
集約化・重点化は公的病院が対象。圏域で基幹となる「連携強化病院」と、その病院に医師を含めて一定の機能を移す「連携病院」を決める。圏域は、県内八ブロックの二次保健医療圏を一つか複数組み合わせて設定する。
国の指針によると、連携強化病院は小児科が入院を必要とする救急に二十四時間対応できる病院、産科はリスクの高い出産に対応する「地域周産期母子医療センター」クラスの病院から選ぶとしている。これに相当するのは県内で小児科、産科とも六病院。この指針をベースに、県が独自の基準を設けて選ぶ。
県庁で二十九日に医療対策協議会が非公開であった。会長の前川剛志山口大医学部長ら委員に県が骨子案を示した。委員から「連携強化病院、連携病院が外来や入院などの機能をどう分担するのか」「集約化の意義や適切な受診の仕方などの啓発も必要」などの意見が出たという。県は骨子案を修正し、年度末までに計画案を提示する。
県内の小児科は、医師数は増えているが開業医志向が強い。勤務医は一病院当たり一・六四人で、全国平均より〇・九三人少ない。救急の時間外受診の増加も加わり、勤務医の繁忙さが課題になっている。
産科医は二〇〇六年が百二十一人で、一九九八年の百四十一人に比べて二十人減少。訴訟リスクの高さなどから出産を取り扱う施設が減り、患者が集中して業務が過剰になっている。【高橋清子】
(中国新聞、2007年11月30日)