(じょういたいばんそうきはくり)
広報いいだ平成25年2月1日号に掲載:
常位胎盤早期剥離とは、妊娠中まだ胎児が子宮の中にいる間に、正常な位置にある胎盤が子宮の壁から剥がれることをいいます。胎児は胎盤を介して母体から酸素や栄養を受けているため、胎盤が先に剥がれてしまうと酸素が不足し、脳性麻痺などの障害が残ることや死亡することがあります。また、母体が重篤な状態になることもあります。そのため、常位胎盤早期剥離の発症後は大至急の対応が必要です。
常位胎盤早期剥離の代表的な症状は、急な腹痛、持続的なお腹の張り、多めの性器出血などです。判断に困るときは、我慢せずに分娩機関に相談しましょう。妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離の既往、切迫早産、交通事故などの腹部の外傷、喫煙などの危険因子に該当する場合、常位胎盤早期剥離を発症しやすくなります。これらの危険因子に該当しない場合でも常位胎盤早期剥離を突然発症することもありますので注意してください。
臨床症状から常位胎盤早期剥離を疑った場合、腹部超音波検査、胎児心拍モニター、血液検査などを行います。これらの検査で常位胎盤早期剥離と診断された場合は、できるだけ早急に分娩を終了させる必要があり、胎児の生存が確認された場合、経腟分娩の直前でなければ緊急帝王切開を行います。胎児が死亡した場合でも、時間の経過により母体のDIC(血が止まらなくなる状態)が進行するので、すみやかな経腟分娩(それが期待できなければ帝王切開)を行います。それと同時にDICに対する予防あるいは治療を行います。
妊婦健診をきっかけに妊娠高血圧症候群などの常位胎盤早期剥離の危険因子がみつかることもあります。特に気にかかることがなくても、適切な時期や間隔で妊婦健診を受けましょう。