崩壊は 静かな音をたてて
やってくる
順調にいくと思っていた
すべてのことが
かたかたと揺れはじめ
蜻蛉の大群のようにばらばらになり
不思議な虚無の闇の中に
つぎつぎと落ちてゆく
どんなことをやっても
幸せになりたかったと
おまえの思ったとおりの人生が
だんだんと崩れてゆく
まるで春先の雪のように
はかなく風に溶けてゆく
小さな銀色の夜蛾を
片手で握りつぶすような
かすかな音を立てて
崩壊はやってくる
おまえの悲鳴はまるで死んだ蝉の声のようだ
全てを失う現実は
花嫁のように静かに
楚々としておまえに添いにくる
そのように 人生の崩壊を
味わうものは
誰を責めることもなく
こう思うがよい
自分は 自分だけが幸せになりたくて
たくさんの人から 愛の宝を盗んで
無理やり自分の幸せを合成して
別人の人生を生きていたのだと
それが真実なのだ