千匹の鼠が
人間に化けて
人間の国に生まれ
最高のチーズを
食べようとしたのです
恐ろしく上手に
人間の真似をして
すっかり人間になり
さあいよいよ
最高のチーズを食べようとしたら
もうそれは腐っていたのです
いいえ
てんでつまらないものに
なっていたのです
もう最高のチーズなど
だれも食べないのです
青い牛の乳をかきまぜて
たくさんの手間をかけて作った
舌もとろけるようなチーズなど
だれも欲しくないのです
それは
自分がつらい人を慰めるための
ものだから
人間はもう
そんなことのために
誰かを苦しめたくなどないのです
みんなが
そんなことを考えているのに
最高のチーズが欲しいだなどと
言えるはずがない
鼠なら
食べられるかもしれないが
人間に化けた鼠は
もう何も言えずに
ほかの人間の真似をして
そっけない牛乳を飲むしかないのです
みんな
それがいちばんおいしいと
言うのです