月の岩戸

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ルナ・8

2013-05-14 02:47:29 | 詩集・瑠璃の籠

大勢の馬鹿は みんなでひとつの
人格を生きている
自分以外の人間と言う
ひとりの人間を みんなで生きている

だから 何に対しても責任は持たない
人に意地悪をしても 平気でいられる
影で悪いことをしても 平気でいられる
嘘だって 平気でつける
相手を馬鹿にしながら 微笑むなんてことも
立派にできる

みんな 自分じゃないから
できるのだ
自分じゃないから
痛くなんかないのだ
どんなに恥ずかしいことをしても
自分が恥ずかしいと思わない
みんな 自分じゃないからだ
自分じゃなくて みんななのだ
みんながやってるから 自分もやる
でも
みんながやったのだから 自分がやったのではない

自分の意見だと言って
たいそう自慢そうに言うけれど
みんなでほとんど同じことを言っている
言葉は微妙に違うけど 言ってることは皆同じ
みんな馬鹿だ おれはいやだ
すべてがいやだ

大勢の馬鹿は ほんとの自分がいやなのだ
だってそいつは とても悪いことをしたから
恥ずかしいことを 何回もしたから
絶対に自分がいやなのだ
だから 自分以外の人間という
一つの人格に みんなで逃げる
みんなという ひとりの巨人に
みんなで逃げる

大勢の馬鹿は みんなでひとつの
人格を生きている
自分以外の人間という
ひとりの人間を生きている

自分なのに自分以外の人間という
絶対にいない人間を生きている
いないはずの人間を
生きている



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1 コメント

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絵の解説 (てんこ)
2013-05-14 02:55:18
フィリップ・ド・シャンパーニュ、「受胎告知」部分、17世紀フランドル・フランス、バロック。
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