五感で観る

「生き甲斐の心理学」教育普及活動中。五感を通して観えてくるものを書き綴っています。

西行花伝という小説

2012年08月23日 | 第2章 五感と体感
辻邦生著の「西行花伝」を読み始め一週間が経ちました。
一字一句、辻邦生氏の紡ぐ言葉を吟味しながら、何度も何度も読み返し、読み進めています。

北面の武士であった西行こと佐藤義清の生い立ちと人間関係を、従者である秋実を案内役に、西行と所縁のあった人々を訪ね語らせる、という設定で描かれています。時には西行の言葉も交え、章ごとに一人称である「私」がそれぞれなのがこの本の特徴です。

「私」が、章によって違うので、一章一章一人称を意識して読んでいかないと混乱していきます。そういった意味では、とてもハイレベルな読み方を読者に求めているといっても良いかもしれません。

新平家物語を読み終え、大河ドラマの清盛を見続け、習っている能楽の仕舞いと謡いは、できることなら平家物語の登場人物を。。。と師匠に願い出て、生き甲斐の心理学の勉強会テーマも「平家物語から見る日本人のアイデンティティ」を中心に据えています。その過程である時期に、「西行花伝」を読むことによって、自分の身体に沁み込むような言霊の響きに、頭が整理され、心と身体が浄化されているような感覚を覚えている最中です。
辻邦生氏の表現に惹き込まれることによって、私自身がもっと複数の視点で平家物語を読むきっかけを掴んでいるようにも感じています。勿論、現在も西行花伝によって複数の視点を堪能しているわけですが。

仁和寺の闇に紛れ、一夜を過ごそうとする西行の目の前に、不安と猜疑の絶頂にある崇徳帝を登場させる下りは、鵺退治を想わせ身の毛のよだつものであり崇徳帝の憂いと嘆きを読者に体感するに相応しい描き方であると感心し、陸奥の旅の道程での逸話も当時の臭いまで臭ってくる表現ですし、兎にも角にも、まるで紀ノ川に佇んでいるのは西行では無く読んでいる私であると錯覚するくらいの五感を、言葉に紡んでいるのです。

全21の帖で成り立つ小説は、12の帖まで読み進みました。

真夏の夜の夢は、私にどのような影響を与えてゆくか。一冊の本が与える魔術とは、こういうものなのだ、、、と、魔術に惹き込まれ、昨晩は寝苦しい夜でした^^;

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