勿忘草 ( わすれなぐさ )

「一生感動一生青春」相田みつをさんのことばを生きる証として・・・

悲しみの香り

2008-10-09 23:30:56 | Weblog
 公園を通り抜ける時、路地を曲がった時、頬をそっと撫でて行く秋の風が、どこからか懐かしい香りを運んでくる。辺りを見回すと、目立たない黄色味を帯びたオレンジ色の花が、その香りで存在感を主張している。

 その季節季節の特徴的な花の香りは多い。梅の香りは、すぐそこに春が来たことを教えてくれる。くちなしの香りに、別れた人の痩せてやつれたうわさを聞いて、心を締め付けられる人もいるだろう。しかし、この黄橙色の花の香りには、どれも敵うまい。

◇ 時を待つ ◇
-キンモクセイ-

花が咲くのは 年に一度
あとは静かに 時を待っている
あくせくするのは 止(や)めよう
一度でいい ひとつでいい

-星野富弘さん-

 その昔、9月も終る頃、残暑の中での永遠の別れがあった。その年も記録的な暑い夏だった。移ろう季節にも気付かず、悲しみに暮れていた10月のある日、開け放した窓から甘く狂おしい香りが漂ってきた。ベランダから外を覗いて、植え込みの金木犀に気付く。そこに植えられていることを何年も知らずにいた。

 その日から僕にとって、金木犀の香りは悲しい香りになった。いま、金木犀が自己主張の真っ最中。年に一度、悲しみの蘇る秋でもある。